2019年09月20日
2019 天皇杯ベスト16 サガン鳥栖 VS セレッソ大阪
2019シーズン 天皇杯ベスト16 セレッソ大阪戦の所感です。
記憶を頼りに所感をつらつらと。
前半に風上に立ったサガン鳥栖が、その風の勢いをそのままに攻勢にでました。面白かったのは、ビルドアップの局面で、いつもは相手のツートップの脇のエリアに立ってセンターバックからのビルドアップの出口として立ち回る原川が、相手のセンターバックとサイドバックの間という高い位置に立っていたことでしょうか。左サイドハーフのポジションだったので、時折、長いボールを競るようなシーンもあり、配置の違いで役割が異なるというのがよくわかるシーンでした。競り合いにはそんなに勝ってはいませんでしたが(笑)
長いボールも豊田一辺倒ではなく、意外とハイボールに強い小野、そして上記のように原川と満遍なくボールを散らしていたこともセレッソとしては絞りにくかったかもしれません。豊田も中央に張って待ち受けるというよりは、サイドに張って片山とのマッチアップを選択するなど、長いボールの有効活用策をいろいろと張り巡らせていました。
今回は、ジョンスがボランチだったのですが、最近の鳥栖にはいないタイプのスタイルで勝利に貢献していました。一番の肝は、常に守備を意識したポジショニングを取って「安定・確実」なプレイを選択していたこと。彼から中央を切り裂くようなスルーパスはでませんが、ビルドアップするセンターバックが出しどころに困っていたときは、ディフェンスの間にポジションを移し、しっかりと顔を出してボールを引き出す動きをみせていました。この動きをしっかりと取ることで、フリーで受けさせたくないセレッソの守備を引き出せるので、そこで彼にボールが出てこなかったとしても、セレッソの守備をずらしてからの次の展開につなげることができます。無理をして前にチャレンジするのではなく、まずは安定的にボールを保持するために「水を運ぶ」役割を着実にこなしていました。長いボールを配球するのは秀人。攻撃を加速させる役割は原川、松岡。1対1を作って勝負を仕掛けるのはヨンウ。ジョンスは彼らが少しでも優位な状況でボールをさばけるような舞台づくりをこなし、まさにこれが役割分担ですよね。
守備面での貢献も非常に大きくて、中央の与えてはいけないスペースをしっかりと掌握しており、プレッシングにでるところとリトリートしてスペースを守る所の判断がよかったかなと思います。ソウザからのラストプレイ(ミドルシュート、ラストパス)の機会を与えなかったのも、ジョンスと松岡の二人が中央をしっかりと閉めていたところが大きいかったです。大型ボランチであるので、中盤に蹴りこまれたボールや、跳ね返したセカンドボールの空中戦になった時に競り勝てる可能性が高かったのも大きかったですね。この辺りは、松岡、福田、義希が中央にいるのとは異なる存在感を見せていました。
前半だったでしょうか。鳥栖がセンターサークル付近でボールを奪われ、相手がドリブルで突進してきた時に、無理につっかけてプレッシングに行かず、最終ラインとの距離を保ち、パスコースを制限しながら相手の攻撃を急がせない対応を取ったプレイは非常に秀逸でした。無理にボールを奪いに行くと、そこからパスが出て、しかも中央のスペースを空けるという最悪の展開が待ち構えているのですが、しっかりとスペースを消す対応を取れました。2列目と3列目の間にパスを通されても、しっかりとプレスバックしてゴール前でつなごうとするセレッソの自由を奪う対応をこなしていました。
セレッソの攻撃がなかなか機能しなかったのは、ビルドアップのために、ボランチを下げて後ろで数的優位を作っても、鳥栖がツートップでプレッシングを行うと簡単にボールを蹴ってしまうプレイになってしまっていたこと。全体を下げてつなごうというシフトの中でボールを蹴っても前線に人はおらず、セレッソの得意となる攻撃ではないことも相まって、機能性が損なわれていました。特に、蹴った先のターゲットがブルーノメンデスならばまだしも、鈴木となるケースが多く、鳥栖のセンターバック相手に簡単に競り負けてボールロストしていました。ボランチが藤田ではなく、ソウザであったことも、セカンドボールへの意識という点(長いボールに対するポジショニングの取り直しを素早くできるかという点)で、鳥栖の方がセカンドボール争いで優位となった要因のひとつであるでしょう。
セレッソは右サイドの守備も苦労していました。片山と水沼のポジショニングの問題なのかもしれませんが、ハーフスペースに入ってくる原川の対処に苦労していました。原川のボールキープからの、小野と三丸という2つの選択肢を消すことができず、サイドからのクロスや前進をなかなか止められないでいました。片山と三丸がマッチアップして、五分五分の戦いだったことも(時折かわされてクロスを上げられていたのも)両センターバックは苦しかったでしょう。しかし、守備がうまくいってなかったセレッソの右サイドですが、その右サイドバックの片山のロングスローが、セレッソの2得点に大きく影響を与えたというのも面白いですよね。あの直線的でスピードもあり、かつ飛距離も出るロングスローはかなり脅威でした。
プレッシングというのは、ただボールを奪うだけで終わりではなく、奪った後にどうやって早い攻撃につなげるのか、そのあたりのイメージの共有が必要ですよね。この試合では、前線がチェイスして、セレッソが無理にボランチや前線につないだ時に、セントラルハーフのところで奪うことができるシーンが作れると、小野と豊田はポジトラでの動き出しが早いので、セレッソの守備が固まる前の攻撃につなげることができていました。
鳥栖の2点目が典型的な例で、豊田と小野がプレッシングをしてヨンウに奪う機会を与えたことによって、ヨンウがボールを持つと同時に、小野と豊田がディフェンスラインの裏に走りこむ動きを見せたことによって、セレッソディフェンスを押し下げることができました。左サイドからは原川も走りこんでいましたね。この動きによって、少し下がったセレッソのディフェンスラインとヨンウとの間にスペースと時間ができ、冷静にゴールに流し込むことができました。豊田や小野が奪ってすぐにディフェンスと1対1を迎えるよりは、彼らが生かされる状況下でボールを奪う仕組みを作る方が、シュートチャンスは生まれますよね。
交代で入った金崎と福田も良い仕事をしてくれました。福田はヨンウのように攻撃時の1対1という局面で競り勝てる選手ではありませんが、前へのプレッシングで見せる鋭い出足と、そこでインパクトを与えてから素早く撤退するリトリートへの切り替え。まさに、ボクシングムーブメントを実現してくれる選手で、守備面から引き締めてくれた動きは見事でした。攻撃時にも労を惜しまずに縦に入る動きを見せ、3点目につながる逆サイドからファーサイドにはいってからのヘディングでの折り返しは見事でした。G大阪戦で枠を捉えられなかった金崎もしっかりと決めてくれましたね。枠の上のぎりぎりだったのはご愛敬でしたが、ゴールに近いところからだったので打ち上げ花火にならずに決めてくれてホッとしました(笑)
気になるのは、クエンカの存在でしょうか。クエンカのようにためて時間を作って、ボールキープできるプレイヤーは紛れもなく必要な存在ですし、大きな力となってくれる稀有な存在です。しかしながら、戦局の中で常に輝いていられるかというと必ずしもそうではない。戦術、味方との関係、相手との関係によっては、彼のスタイルが輝かない事もありえますし、守備面でのウィークポイントとなってしまう事もあり得ます。クエンカがいると彼中心のゲームメイクになり、この試合は彼がいないところでシンプルな形で得点がとれたことをどう評価するかですね。
豊田という武器をどう利用するかという事にも繋がりますよね。例えば、足元でつないでワンツーで抜け出してという攻撃を主体とするのであれば、金森、金崎、クエンカが絡む攻撃は非常に脅威です。ただ、豊田を最大限利用するならば、ゴール前に密集して足元勝負で挑むよりは、サイドからのクロスでも、裏へのスルーパスでも、例えアバウトなボールになったとしても、敵が密集する前に早めにボールを供給したほうが相手との勝負に勝てる見込みは高く、1点目はまさにニアサイドに上がったボールに豊田が反応した素晴らしいゴールでしたね。
クエンカと豊田は共存できるとは思います。ただし、彼らの強烈なストロングポイントを相殺しないような組み合わせ、戦術、そのあたりが監督の腕の見せ所なのでしょうね。
セレッソ主体で考えると、前線でも中盤でもバランスを取れて、ブルーノメンデスをうまくフォローできる奥埜、中盤でのボールのつなぎとセカンドボールを考えたポジショニングが取れる藤田、上下の動きとマッチアップでの無頼の強さを誇る松田陸、サイドから中央に入ってくる動き、そして味方を存分に生かすスルーパスを出せる清武、そのあたりの選手がいなかったところがそのまま、セレッソがうまくいかなかったポイントになったのかなと思います。
去年に引き続き、天皇杯は2年連続のベスト8進出となったサガン鳥栖。
去年もベスト8に進出していましたが、残留争いで忙しかったので忘れていた人もいるかもしれません(笑)
トーナメント戦での強さを発揮し、是非とも元日での新しい国立競技場のこけら落としのステージに立ちたいですね。
■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)
・ トランジション
攻守の切り替え
・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。
・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。
・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置
・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ
・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側
・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央
・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側
・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き
・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス
・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事
・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事
記憶を頼りに所感をつらつらと。
前半に風上に立ったサガン鳥栖が、その風の勢いをそのままに攻勢にでました。面白かったのは、ビルドアップの局面で、いつもは相手のツートップの脇のエリアに立ってセンターバックからのビルドアップの出口として立ち回る原川が、相手のセンターバックとサイドバックの間という高い位置に立っていたことでしょうか。左サイドハーフのポジションだったので、時折、長いボールを競るようなシーンもあり、配置の違いで役割が異なるというのがよくわかるシーンでした。競り合いにはそんなに勝ってはいませんでしたが(笑)
長いボールも豊田一辺倒ではなく、意外とハイボールに強い小野、そして上記のように原川と満遍なくボールを散らしていたこともセレッソとしては絞りにくかったかもしれません。豊田も中央に張って待ち受けるというよりは、サイドに張って片山とのマッチアップを選択するなど、長いボールの有効活用策をいろいろと張り巡らせていました。
今回は、ジョンスがボランチだったのですが、最近の鳥栖にはいないタイプのスタイルで勝利に貢献していました。一番の肝は、常に守備を意識したポジショニングを取って「安定・確実」なプレイを選択していたこと。彼から中央を切り裂くようなスルーパスはでませんが、ビルドアップするセンターバックが出しどころに困っていたときは、ディフェンスの間にポジションを移し、しっかりと顔を出してボールを引き出す動きをみせていました。この動きをしっかりと取ることで、フリーで受けさせたくないセレッソの守備を引き出せるので、そこで彼にボールが出てこなかったとしても、セレッソの守備をずらしてからの次の展開につなげることができます。無理をして前にチャレンジするのではなく、まずは安定的にボールを保持するために「水を運ぶ」役割を着実にこなしていました。長いボールを配球するのは秀人。攻撃を加速させる役割は原川、松岡。1対1を作って勝負を仕掛けるのはヨンウ。ジョンスは彼らが少しでも優位な状況でボールをさばけるような舞台づくりをこなし、まさにこれが役割分担ですよね。
守備面での貢献も非常に大きくて、中央の与えてはいけないスペースをしっかりと掌握しており、プレッシングにでるところとリトリートしてスペースを守る所の判断がよかったかなと思います。ソウザからのラストプレイ(ミドルシュート、ラストパス)の機会を与えなかったのも、ジョンスと松岡の二人が中央をしっかりと閉めていたところが大きいかったです。大型ボランチであるので、中盤に蹴りこまれたボールや、跳ね返したセカンドボールの空中戦になった時に競り勝てる可能性が高かったのも大きかったですね。この辺りは、松岡、福田、義希が中央にいるのとは異なる存在感を見せていました。
前半だったでしょうか。鳥栖がセンターサークル付近でボールを奪われ、相手がドリブルで突進してきた時に、無理につっかけてプレッシングに行かず、最終ラインとの距離を保ち、パスコースを制限しながら相手の攻撃を急がせない対応を取ったプレイは非常に秀逸でした。無理にボールを奪いに行くと、そこからパスが出て、しかも中央のスペースを空けるという最悪の展開が待ち構えているのですが、しっかりとスペースを消す対応を取れました。2列目と3列目の間にパスを通されても、しっかりとプレスバックしてゴール前でつなごうとするセレッソの自由を奪う対応をこなしていました。
セレッソの攻撃がなかなか機能しなかったのは、ビルドアップのために、ボランチを下げて後ろで数的優位を作っても、鳥栖がツートップでプレッシングを行うと簡単にボールを蹴ってしまうプレイになってしまっていたこと。全体を下げてつなごうというシフトの中でボールを蹴っても前線に人はおらず、セレッソの得意となる攻撃ではないことも相まって、機能性が損なわれていました。特に、蹴った先のターゲットがブルーノメンデスならばまだしも、鈴木となるケースが多く、鳥栖のセンターバック相手に簡単に競り負けてボールロストしていました。ボランチが藤田ではなく、ソウザであったことも、セカンドボールへの意識という点(長いボールに対するポジショニングの取り直しを素早くできるかという点)で、鳥栖の方がセカンドボール争いで優位となった要因のひとつであるでしょう。
セレッソは右サイドの守備も苦労していました。片山と水沼のポジショニングの問題なのかもしれませんが、ハーフスペースに入ってくる原川の対処に苦労していました。原川のボールキープからの、小野と三丸という2つの選択肢を消すことができず、サイドからのクロスや前進をなかなか止められないでいました。片山と三丸がマッチアップして、五分五分の戦いだったことも(時折かわされてクロスを上げられていたのも)両センターバックは苦しかったでしょう。しかし、守備がうまくいってなかったセレッソの右サイドですが、その右サイドバックの片山のロングスローが、セレッソの2得点に大きく影響を与えたというのも面白いですよね。あの直線的でスピードもあり、かつ飛距離も出るロングスローはかなり脅威でした。
プレッシングというのは、ただボールを奪うだけで終わりではなく、奪った後にどうやって早い攻撃につなげるのか、そのあたりのイメージの共有が必要ですよね。この試合では、前線がチェイスして、セレッソが無理にボランチや前線につないだ時に、セントラルハーフのところで奪うことができるシーンが作れると、小野と豊田はポジトラでの動き出しが早いので、セレッソの守備が固まる前の攻撃につなげることができていました。
鳥栖の2点目が典型的な例で、豊田と小野がプレッシングをしてヨンウに奪う機会を与えたことによって、ヨンウがボールを持つと同時に、小野と豊田がディフェンスラインの裏に走りこむ動きを見せたことによって、セレッソディフェンスを押し下げることができました。左サイドからは原川も走りこんでいましたね。この動きによって、少し下がったセレッソのディフェンスラインとヨンウとの間にスペースと時間ができ、冷静にゴールに流し込むことができました。豊田や小野が奪ってすぐにディフェンスと1対1を迎えるよりは、彼らが生かされる状況下でボールを奪う仕組みを作る方が、シュートチャンスは生まれますよね。
交代で入った金崎と福田も良い仕事をしてくれました。福田はヨンウのように攻撃時の1対1という局面で競り勝てる選手ではありませんが、前へのプレッシングで見せる鋭い出足と、そこでインパクトを与えてから素早く撤退するリトリートへの切り替え。まさに、ボクシングムーブメントを実現してくれる選手で、守備面から引き締めてくれた動きは見事でした。攻撃時にも労を惜しまずに縦に入る動きを見せ、3点目につながる逆サイドからファーサイドにはいってからのヘディングでの折り返しは見事でした。G大阪戦で枠を捉えられなかった金崎もしっかりと決めてくれましたね。枠の上のぎりぎりだったのはご愛敬でしたが、ゴールに近いところからだったので打ち上げ花火にならずに決めてくれてホッとしました(笑)
気になるのは、クエンカの存在でしょうか。クエンカのようにためて時間を作って、ボールキープできるプレイヤーは紛れもなく必要な存在ですし、大きな力となってくれる稀有な存在です。しかしながら、戦局の中で常に輝いていられるかというと必ずしもそうではない。戦術、味方との関係、相手との関係によっては、彼のスタイルが輝かない事もありえますし、守備面でのウィークポイントとなってしまう事もあり得ます。クエンカがいると彼中心のゲームメイクになり、この試合は彼がいないところでシンプルな形で得点がとれたことをどう評価するかですね。
豊田という武器をどう利用するかという事にも繋がりますよね。例えば、足元でつないでワンツーで抜け出してという攻撃を主体とするのであれば、金森、金崎、クエンカが絡む攻撃は非常に脅威です。ただ、豊田を最大限利用するならば、ゴール前に密集して足元勝負で挑むよりは、サイドからのクロスでも、裏へのスルーパスでも、例えアバウトなボールになったとしても、敵が密集する前に早めにボールを供給したほうが相手との勝負に勝てる見込みは高く、1点目はまさにニアサイドに上がったボールに豊田が反応した素晴らしいゴールでしたね。
クエンカと豊田は共存できるとは思います。ただし、彼らの強烈なストロングポイントを相殺しないような組み合わせ、戦術、そのあたりが監督の腕の見せ所なのでしょうね。
セレッソ主体で考えると、前線でも中盤でもバランスを取れて、ブルーノメンデスをうまくフォローできる奥埜、中盤でのボールのつなぎとセカンドボールを考えたポジショニングが取れる藤田、上下の動きとマッチアップでの無頼の強さを誇る松田陸、サイドから中央に入ってくる動き、そして味方を存分に生かすスルーパスを出せる清武、そのあたりの選手がいなかったところがそのまま、セレッソがうまくいかなかったポイントになったのかなと思います。
去年に引き続き、天皇杯は2年連続のベスト8進出となったサガン鳥栖。
去年もベスト8に進出していましたが、残留争いで忙しかったので忘れていた人もいるかもしれません(笑)
トーナメント戦での強さを発揮し、是非とも元日での新しい国立競技場のこけら落としのステージに立ちたいですね。
■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)
・ トランジション
攻守の切り替え
・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。
・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。
・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置
・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ
・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側
・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央
・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側
・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き
・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス
・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事
・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事
Posted by オオタニ at
12:47
│Match Impression (2019)
2019年09月05日
2019 第25節 : サガン鳥栖 VS ベガルタ仙台
2019シーズン第25節、ベガルタ仙台戦のレビューです。
■ システム

トーレス引退後の初戦。大敗した神戸戦から大きくスタメンを変えてきました。
フォワードの位置には金崎とクエンカが入りました。中盤は、左サイドハーフに金森が入り、怪我から帰ってきた原川が義希に代わってボランチの位置へ。最終ラインはビルドアップミスなどもあって積極性を失っていたジョンスに代わって祐治がスタメンに復帰。前節、前半で退いた小林の位置に金井が移動し、左サイドバックには三丸が復帰しました。
--------------
■ 試合
ゴールキックの場面でも繋ぎに拘らずに長いボールを入れていたことからも分かるように、両チームとも何が何でもボール保持からのビルドアップという攻撃には固執していませんでした。
長いボールを蹴るときは、鳥栖のターゲットは金崎、そのこぼれ球に対してクエンカ、金森、ヨンウがセカンドボールを拾おうという形です。
ビルドアップからは、左サイドからの崩しを中心に、詰まった時にはクエンカのキープから右サイドに開いて、ヨンウが1対1を制してからのクロスというのはいつもどおり。
左サイドに三丸が入ったので、金井のように中盤と連係してポジションチェンジを繰り返しながらというよりは、左サイドに張らせるポジションを取らせます。ヨンウ、三丸がスタメンの時は、両ウイングを作るような形になりますよね。
前半は、ツートップをおいていたので、中盤は原則的には仙台と同数となり、数的に余る形を作るよりは、個の質で勝負するという状況となり、ヨンウは永戸、三丸は蜂須賀(もしくは道渕)と相対時することとなりました。
ヨンウはカットインしてからの利き足のみならず、縦に入ってからの右足のクロスも選択肢であるので、永戸とのマッチアップを制してゴール前へラストパスを送るのを、大体の場面で対応出来ていました。
三丸は、ボールを受けた場面で蜂須賀が既に迫ってきており、スピードで劣るために、なかなかマッチアップを制することが出来ず。
三丸はドリブルでかわしていくタイプではないので、配置上で優位に立たないと、攻撃がノッキングする事になっていました。
試合開始早々から、鳥栖が押し込んだときに、二次攻撃に繋がるシーンは度々ありまして、貢献していたのは松岡と金井のポジショニング。道渕、ジャーメインがカウンター攻撃に移る場面で(鳥栖のネガトラ時)、中盤からいち早く潰しにかかりました。奪えなくとも、ファールになったとしても、カウンターを遅らせるには十分の働きを見せていました。

序盤は決して悪くない立ち上がりだったのですが、先制点を奪われてから、金井が更に高いポジションを模索するようになり、このカウンター対策は徐々に影を潜めることになります。
■ 1失点目
失点シーンをピックアップします。
クロスを石原と秀人が競って、こぼれ球が道渕のところに上がってしまってダイレクトのボレーシュートを決められてしまいます。
このシーンですが、仙台が左サイドから右サイド(鳥栖の左サイド)に展開する際、鳥栖は等間隔でブロックをしっかりと組んでいますが、ジャーメインと松下のところに、金井と松岡がプレッシャーをかけてもボール奪取出来ず、右サイドに展開されたところが問題のシーンとなります。

対応しなければならないのは2つのポイント。
(1)右サイドでボール保持した蜂須賀にどう対処するのか
(2)中央で待ち構える道渕、石原、長沢の3人をどう見るのか
鳥栖が取った対応ですが、三丸がボールサイドにプレッシャーをかけ、中央の3人を秀人、祐治、金井で見る対応を取りました。ここで一つ、選択が発生していたのが、三丸が動いたスペースをどうするべきかという問題です。
このスペースにカバーがいないということは、蜂須賀が三丸をドリブルで抜いたときに、すぐにボールサイドにプレッシャーに行ける選手がいないことになります。
そして、何よりも、シュートが打てるゾーンのスペースを仙台のフォワード、2列目に与えてしまいます。(実際に、このスペースを使われます。)
ただ、ここを埋めるためには、中盤、もしくは最終ラインから一人ポジションを動かす必要があります。ピッチ内のすべてのスペースを守るわけには行きませんので、どこかのスペースを捨てなければならないのですが、今回は、このスペースを捨てるという選択を取りました。結果的に悪手だったという事になりましたが。

次の問題がクロスに対する中央の3人の動き。ポジションのとり方としては、マンマークなのかゾーンなのか明確ではありませんでした。
最終ラインが、三丸の動きに呼応してボールサイドに連動してスペースを埋める守備はしていないので、マンマークに対する意識は強かったと思います。
マンマークならば、クロスへの対応で仙台の中央の3人を、鳥栖の3人がそれぞれマッチアップで見なければなりません。しかしながら、クロスと同時に道渕が三丸の作ったスペースにスライドしたのですが、その動きに鳥栖は守備がついていけません。秀人が石原のマッチアップとなってしまい、祐治と金井は長沢に完全に引っ張られてしまっています。
これにより、道渕に対して、彼が使うスペースを埋める守備者も、マンマークで付く守備者もいない状況となり、得てしてそういう時にこぼれ球は悪い方に向かうもので、道渕に決められることとなってしまいました。

スペースを埋める守備、マンマークで捕まえておく守備、方法はどちらでも構わないと思います。それぞれ一長一短あるので、組織で意識が統一できていれば被シュートの機会を減らすことは出来ます。ただ、最近のサガン鳥栖は、そのどちらともが中途半端な対応となってしまっていることが多く、なかなか失点が減らない事に繋がっています。
理想形を2つ上げておきますが、ボールが動き、そして味方(三丸)が動いた時にどのような連動が出来るか。それが今後の失点を防ぐ肝ですよね。
マッシモさんのときのように、押し込められて割り切って後ろを5枚とすれば失点は減りますが、得点の可能性も減ります。バランスをどう取るのかというのも、監督の手腕に関わります。
一つの参考例として、ゾーン守備における理想系を書いておきます。これは、三丸が空けたスペースを捨てないパターンですね。


■ 鳥栖の守備の連動性

もう一つ、失点が減らない要因となっているシーンをピックアップします。前半33分のシーンです。
仙台が、右サイド(鳥栖の左サイド)から左サイドに最終ライン経由でサイドチェンジを行い、平岡がボールを保持したところで、列を上げてヨンウがプレッシングに行きます。
一度永戸にパスを出しますが、ここにも金井がプレッシャーに来たため、平岡にボールが戻ります。
図は、この状況を示していますが、鳥栖の戦術として、失点を取り返すべく前線からプレッシングに行き、高い位置でボールを奪いに行くポジションを取っています。ストッパーに対してヨンウがプレッシングに行っている所からそれが見て取れます。
ところが、サイドチェンジでボールが鳥栖の右サイドに渡っているにも関わらず、鳥栖の左サイドの選手が連動してスライド出来ていません。このシーンであれば、原川がスライドして松下につくことが出来ていれば、この位置でボールを奪えていた可能性がある上に、クエンカもヨンウも前線にいるので、奪ってすぐに即攻撃に転換できるシーンです。ショートカウンターとしては最高の展開でしょう。
ところが、原川、金森がボールサイドに圧縮できなかったために、前線のプレッシングの甲斐もなく、しかも仙台に中央を割られてしまう結果となってしまいました。クエンカが「なぜいないんだ」というジェスチャーを見せましたが、気持ちはわかります。
この後、松下が左サイドの永戸に展開し、カットインから道渕に好パスが送られますが、道渕がトラップミスをしてくれたおかげで事なきを得ました。失点してもおかしくないシーンで有り、明らかにサガン鳥栖の中盤から前の守備対応のミスから生じたピンチでした。
チームで分析はされるでしょうが、原川、金森が体力的な問題で動けなかったのか、それとも戦術的な浸透が出来ておらずに組織としての動きが連動していなかったのか、はたまた彼らの判断で行く場面ではないと考えていたのか、これによって課題対応は変わるでしょう。
原川、小野、金森はひとり程度ならばドリブルで楽にはがせる実力があるので、ビルドアップでは多大な貢献を見せてくれます。彼らはチームが攻撃にシフトしているとき(相手が守備の意識が高く引いてきたとき)には持ち味を十分に発揮できる選手です。それだけに、守備面での課題をどう見るかですよね。
ボランチに福田と義希を入れると、この課題はいとも簡単に改善できます。では、攻撃はどうする?となりますよね。何度も言いますが、攻守のバランスの取り方は、監督の手腕です。
■ 鳥栖の攻勢


29分、32分と、競り合いのこぼれ球をうまく拾った仙台が、ジャーメインにうまくつながりいずれもキーパーと1対1を迎えますが追加点ならず。
試合は生き物とでも言いますか、ここで高丘を中心とした頑張りによって失点せずに済んだため、後半のシステム変更も相まって、鳥栖に流れを生むことになりました。
後半の修正は、立ち位置を変えて、中盤でのボール回しを円滑にこなせるようにし、まずは押し上げる仕組みを作ることでした。
一つのポイントは、金崎のワントップにしたこと。前線の金崎の役割をロングボールの競り合いから、相手を背負ってからのポストをより機会を増やしました。また、仙台は4バックを継続したため、センターバック2人を動かすことが出来ず、前線の金崎1人に対して、仙台は2人を消費することになります。これも1つのポイントです。
ワントップにして中盤を厚くしたことによって単純に鳥栖の中盤の人数が増え、ボールの循環が円滑になりました。更に小野を投入したことによって、ボールを運ぶことができたのも、仙台ディフェンスを寄せ付けて、他のエリアにフリーの選手を生み出す効果がありました。
左サイドのポジションのとり方は絶妙でして、仙台が構成するブロックの中間地点に立ち、そこから引いたり裏に抜けたりするので、仙台のサイドバックとサイドハーフが常にクエンカ、小野を捕まえなければならない状態を生みました。
これにより、大外の三丸にまで手を回すことが困難になり、フリーの状態で秀人からパスが回るシチュエーションを作ることができました。前半、三丸がボールを受けると同時に蜂須賀が迫ってきてノッキングしてた現象を、ポジショニングで改善した形です。相手との距離が出来ると、クロス、パス、カットインという選択を取ることが出来ますよね。
■ おわりに
後半の鳥栖のポジション修正は当然効果を見せたのですが、私は前半の戦い自体も、そこまで悪いとは思っていませんでした。
ヨンウにうまくボールが回ってクロスは上がってましたし、金崎も背負ってからのキープは問題なくこなせてました。仙台の最終ライン(特にシマオ・マテ)が集中してミスが発生しなかっただけで、シーン自体は作れていたと思います。後はミス待ちの我慢の展開に持っていければと。
前半のうちからオープンな展開になっていたので、失点さえしなければ、後半に体力が落ちてきたときに、ビッグチャンスは生まれると思ってましたが、それに輪をかけてミョンヒ監督が完璧な修正で完全にイニシアチブを取ることが出来ました。
仙台は能動的にボールを奪う(ビルドアップのパスルートを阻害する)守備が出来てなかったので、最終ラインはかなり苦しかったと思います。前線の二人が鳥栖の最終ラインの三人に対してフィルターにならず、更に中盤はクエンカと小野に人数を割かなければならないので、うまく守備の基準を作り直すことが出来ませんでした。
後半20分位からはカウンターを仕掛ける場面ですら全体が押し上がらず、これで(アディショナルタイムを含めて)残り30分近く守り切るのは難しいだろうなと思っていました。
後は、クエンカのイエローカードからの雰囲気の盛り上がりですよね。
久しぶりに、駅スタが水色の要塞と化したのを感じました。
やはり、拍手と声援、これらはサガン鳥栖の選手たちの気持ちを鼓舞しますし、相手チームの選手たちの気持ちに圧迫感を感じさせることが出来ます。
スタジアム全体が、サガン鳥栖の前に行こうというプレイを後押しし、仙台のディフェンスラインを押し下げるのに一役買ったのは間違いないでしょう。
久しぶりに痛快な試合でしたね。この勢いを継続して、アウェーのガンバ戦でも勝点3を奪いたいですね!
■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)
・ トランジション
攻守の切り替え
・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。
・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。
・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置
・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ
・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側
・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央
・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側
・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き
・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス
・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事
・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事
■ システム

トーレス引退後の初戦。大敗した神戸戦から大きくスタメンを変えてきました。
フォワードの位置には金崎とクエンカが入りました。中盤は、左サイドハーフに金森が入り、怪我から帰ってきた原川が義希に代わってボランチの位置へ。最終ラインはビルドアップミスなどもあって積極性を失っていたジョンスに代わって祐治がスタメンに復帰。前節、前半で退いた小林の位置に金井が移動し、左サイドバックには三丸が復帰しました。
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■ 試合
ゴールキックの場面でも繋ぎに拘らずに長いボールを入れていたことからも分かるように、両チームとも何が何でもボール保持からのビルドアップという攻撃には固執していませんでした。
長いボールを蹴るときは、鳥栖のターゲットは金崎、そのこぼれ球に対してクエンカ、金森、ヨンウがセカンドボールを拾おうという形です。
ビルドアップからは、左サイドからの崩しを中心に、詰まった時にはクエンカのキープから右サイドに開いて、ヨンウが1対1を制してからのクロスというのはいつもどおり。
左サイドに三丸が入ったので、金井のように中盤と連係してポジションチェンジを繰り返しながらというよりは、左サイドに張らせるポジションを取らせます。ヨンウ、三丸がスタメンの時は、両ウイングを作るような形になりますよね。
前半は、ツートップをおいていたので、中盤は原則的には仙台と同数となり、数的に余る形を作るよりは、個の質で勝負するという状況となり、ヨンウは永戸、三丸は蜂須賀(もしくは道渕)と相対時することとなりました。
ヨンウはカットインしてからの利き足のみならず、縦に入ってからの右足のクロスも選択肢であるので、永戸とのマッチアップを制してゴール前へラストパスを送るのを、大体の場面で対応出来ていました。
三丸は、ボールを受けた場面で蜂須賀が既に迫ってきており、スピードで劣るために、なかなかマッチアップを制することが出来ず。
三丸はドリブルでかわしていくタイプではないので、配置上で優位に立たないと、攻撃がノッキングする事になっていました。
試合開始早々から、鳥栖が押し込んだときに、二次攻撃に繋がるシーンは度々ありまして、貢献していたのは松岡と金井のポジショニング。道渕、ジャーメインがカウンター攻撃に移る場面で(鳥栖のネガトラ時)、中盤からいち早く潰しにかかりました。奪えなくとも、ファールになったとしても、カウンターを遅らせるには十分の働きを見せていました。

序盤は決して悪くない立ち上がりだったのですが、先制点を奪われてから、金井が更に高いポジションを模索するようになり、このカウンター対策は徐々に影を潜めることになります。
■ 1失点目
失点シーンをピックアップします。
クロスを石原と秀人が競って、こぼれ球が道渕のところに上がってしまってダイレクトのボレーシュートを決められてしまいます。
このシーンですが、仙台が左サイドから右サイド(鳥栖の左サイド)に展開する際、鳥栖は等間隔でブロックをしっかりと組んでいますが、ジャーメインと松下のところに、金井と松岡がプレッシャーをかけてもボール奪取出来ず、右サイドに展開されたところが問題のシーンとなります。

対応しなければならないのは2つのポイント。
(1)右サイドでボール保持した蜂須賀にどう対処するのか
(2)中央で待ち構える道渕、石原、長沢の3人をどう見るのか
鳥栖が取った対応ですが、三丸がボールサイドにプレッシャーをかけ、中央の3人を秀人、祐治、金井で見る対応を取りました。ここで一つ、選択が発生していたのが、三丸が動いたスペースをどうするべきかという問題です。
このスペースにカバーがいないということは、蜂須賀が三丸をドリブルで抜いたときに、すぐにボールサイドにプレッシャーに行ける選手がいないことになります。
そして、何よりも、シュートが打てるゾーンのスペースを仙台のフォワード、2列目に与えてしまいます。(実際に、このスペースを使われます。)
ただ、ここを埋めるためには、中盤、もしくは最終ラインから一人ポジションを動かす必要があります。ピッチ内のすべてのスペースを守るわけには行きませんので、どこかのスペースを捨てなければならないのですが、今回は、このスペースを捨てるという選択を取りました。結果的に悪手だったという事になりましたが。

次の問題がクロスに対する中央の3人の動き。ポジションのとり方としては、マンマークなのかゾーンなのか明確ではありませんでした。
最終ラインが、三丸の動きに呼応してボールサイドに連動してスペースを埋める守備はしていないので、マンマークに対する意識は強かったと思います。
マンマークならば、クロスへの対応で仙台の中央の3人を、鳥栖の3人がそれぞれマッチアップで見なければなりません。しかしながら、クロスと同時に道渕が三丸の作ったスペースにスライドしたのですが、その動きに鳥栖は守備がついていけません。秀人が石原のマッチアップとなってしまい、祐治と金井は長沢に完全に引っ張られてしまっています。
これにより、道渕に対して、彼が使うスペースを埋める守備者も、マンマークで付く守備者もいない状況となり、得てしてそういう時にこぼれ球は悪い方に向かうもので、道渕に決められることとなってしまいました。

スペースを埋める守備、マンマークで捕まえておく守備、方法はどちらでも構わないと思います。それぞれ一長一短あるので、組織で意識が統一できていれば被シュートの機会を減らすことは出来ます。ただ、最近のサガン鳥栖は、そのどちらともが中途半端な対応となってしまっていることが多く、なかなか失点が減らない事に繋がっています。
理想形を2つ上げておきますが、ボールが動き、そして味方(三丸)が動いた時にどのような連動が出来るか。それが今後の失点を防ぐ肝ですよね。
マッシモさんのときのように、押し込められて割り切って後ろを5枚とすれば失点は減りますが、得点の可能性も減ります。バランスをどう取るのかというのも、監督の手腕に関わります。
一つの参考例として、ゾーン守備における理想系を書いておきます。これは、三丸が空けたスペースを捨てないパターンですね。


■ 鳥栖の守備の連動性

もう一つ、失点が減らない要因となっているシーンをピックアップします。前半33分のシーンです。
仙台が、右サイド(鳥栖の左サイド)から左サイドに最終ライン経由でサイドチェンジを行い、平岡がボールを保持したところで、列を上げてヨンウがプレッシングに行きます。
一度永戸にパスを出しますが、ここにも金井がプレッシャーに来たため、平岡にボールが戻ります。
図は、この状況を示していますが、鳥栖の戦術として、失点を取り返すべく前線からプレッシングに行き、高い位置でボールを奪いに行くポジションを取っています。ストッパーに対してヨンウがプレッシングに行っている所からそれが見て取れます。
ところが、サイドチェンジでボールが鳥栖の右サイドに渡っているにも関わらず、鳥栖の左サイドの選手が連動してスライド出来ていません。このシーンであれば、原川がスライドして松下につくことが出来ていれば、この位置でボールを奪えていた可能性がある上に、クエンカもヨンウも前線にいるので、奪ってすぐに即攻撃に転換できるシーンです。ショートカウンターとしては最高の展開でしょう。
ところが、原川、金森がボールサイドに圧縮できなかったために、前線のプレッシングの甲斐もなく、しかも仙台に中央を割られてしまう結果となってしまいました。クエンカが「なぜいないんだ」というジェスチャーを見せましたが、気持ちはわかります。
この後、松下が左サイドの永戸に展開し、カットインから道渕に好パスが送られますが、道渕がトラップミスをしてくれたおかげで事なきを得ました。失点してもおかしくないシーンで有り、明らかにサガン鳥栖の中盤から前の守備対応のミスから生じたピンチでした。
チームで分析はされるでしょうが、原川、金森が体力的な問題で動けなかったのか、それとも戦術的な浸透が出来ておらずに組織としての動きが連動していなかったのか、はたまた彼らの判断で行く場面ではないと考えていたのか、これによって課題対応は変わるでしょう。
原川、小野、金森はひとり程度ならばドリブルで楽にはがせる実力があるので、ビルドアップでは多大な貢献を見せてくれます。彼らはチームが攻撃にシフトしているとき(相手が守備の意識が高く引いてきたとき)には持ち味を十分に発揮できる選手です。それだけに、守備面での課題をどう見るかですよね。
ボランチに福田と義希を入れると、この課題はいとも簡単に改善できます。では、攻撃はどうする?となりますよね。何度も言いますが、攻守のバランスの取り方は、監督の手腕です。
■ 鳥栖の攻勢


29分、32分と、競り合いのこぼれ球をうまく拾った仙台が、ジャーメインにうまくつながりいずれもキーパーと1対1を迎えますが追加点ならず。
試合は生き物とでも言いますか、ここで高丘を中心とした頑張りによって失点せずに済んだため、後半のシステム変更も相まって、鳥栖に流れを生むことになりました。
後半の修正は、立ち位置を変えて、中盤でのボール回しを円滑にこなせるようにし、まずは押し上げる仕組みを作ることでした。
一つのポイントは、金崎のワントップにしたこと。前線の金崎の役割をロングボールの競り合いから、相手を背負ってからのポストをより機会を増やしました。また、仙台は4バックを継続したため、センターバック2人を動かすことが出来ず、前線の金崎1人に対して、仙台は2人を消費することになります。これも1つのポイントです。
ワントップにして中盤を厚くしたことによって単純に鳥栖の中盤の人数が増え、ボールの循環が円滑になりました。更に小野を投入したことによって、ボールを運ぶことができたのも、仙台ディフェンスを寄せ付けて、他のエリアにフリーの選手を生み出す効果がありました。
左サイドのポジションのとり方は絶妙でして、仙台が構成するブロックの中間地点に立ち、そこから引いたり裏に抜けたりするので、仙台のサイドバックとサイドハーフが常にクエンカ、小野を捕まえなければならない状態を生みました。
これにより、大外の三丸にまで手を回すことが困難になり、フリーの状態で秀人からパスが回るシチュエーションを作ることができました。前半、三丸がボールを受けると同時に蜂須賀が迫ってきてノッキングしてた現象を、ポジショニングで改善した形です。相手との距離が出来ると、クロス、パス、カットインという選択を取ることが出来ますよね。
■ おわりに
後半の鳥栖のポジション修正は当然効果を見せたのですが、私は前半の戦い自体も、そこまで悪いとは思っていませんでした。
ヨンウにうまくボールが回ってクロスは上がってましたし、金崎も背負ってからのキープは問題なくこなせてました。仙台の最終ライン(特にシマオ・マテ)が集中してミスが発生しなかっただけで、シーン自体は作れていたと思います。後はミス待ちの我慢の展開に持っていければと。
前半のうちからオープンな展開になっていたので、失点さえしなければ、後半に体力が落ちてきたときに、ビッグチャンスは生まれると思ってましたが、それに輪をかけてミョンヒ監督が完璧な修正で完全にイニシアチブを取ることが出来ました。
仙台は能動的にボールを奪う(ビルドアップのパスルートを阻害する)守備が出来てなかったので、最終ラインはかなり苦しかったと思います。前線の二人が鳥栖の最終ラインの三人に対してフィルターにならず、更に中盤はクエンカと小野に人数を割かなければならないので、うまく守備の基準を作り直すことが出来ませんでした。
後半20分位からはカウンターを仕掛ける場面ですら全体が押し上がらず、これで(アディショナルタイムを含めて)残り30分近く守り切るのは難しいだろうなと思っていました。
後は、クエンカのイエローカードからの雰囲気の盛り上がりですよね。
久しぶりに、駅スタが水色の要塞と化したのを感じました。
やはり、拍手と声援、これらはサガン鳥栖の選手たちの気持ちを鼓舞しますし、相手チームの選手たちの気持ちに圧迫感を感じさせることが出来ます。
スタジアム全体が、サガン鳥栖の前に行こうというプレイを後押しし、仙台のディフェンスラインを押し下げるのに一役買ったのは間違いないでしょう。
久しぶりに痛快な試合でしたね。この勢いを継続して、アウェーのガンバ戦でも勝点3を奪いたいですね!
■ Appendix < ざっくり用語解説 >
・ ビルドアップ
ゴール前にボールを運ぶための仕組みづくり(パス交換の仕組みづくり)
・ トランジション
攻守の切り替え
・ ポジトラ
ポジティブトランジションの略。守から攻への切り替え。
・ ネガトラ
ネガティブトランジションの略。攻から守への切り替え。
・ ハーフスペース
4バックだとセンターバックとサイドバックの間。3バック(5バック)だと両ストッパーの位置
・ デュエル
相手との1対1のマッチアップ
・ ディフェンシブサード
フィールドを3分割したときの自陣ゴール側
・ ミドルサード
フィールドを3分割したときの中央
・ アタッキングサード
フィールドを3分割したときの相手ゴール側
・ リトリート
自陣に引いている状態、もしくは自陣に下がる動き
・ レイオフ
ポストプレイからの受け手が前を向けられる落としのパス
・ オーガナイズ
組織化されていること。チームとして秩序が保たれている事
・ 偽サイドバック
サイドバックがポジションを変えてセントラルハーフのような役割を演じる事
Posted by オオタニ at
18:32
│Match Impression (2019)