2017年10月26日
2017 第30節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
ヴィッセル神戸戦で、サガン鳥栖は今シーズンアウェー2勝目を挙げることができました。アウェーをメインに活動しているサポーターの方も久しぶりに勝利の美酒に酔いしれたのではないでしょうか。さて、その試合内容ですが、前半から得点を取り合う展開になりました。後半はブロックを作る形でなんとか守り切ってそのまま2-1で試合をクロージングすることができたのですが、そのあたりの試合展開の変化を中心に振り返ります。
試合開始当初は、サガン鳥栖は4-3-2-1というセットアップで試合に入りました。これはあくまでセットアップであり、当然試合展開に応じて選手の判断でポジション変更するのですが、守備におけるセカンドトップの2名の動き方に関しては、それぞれ違ったタスクが与えられておりました。まず、田川に関しては、攻撃の際には前方に飛び出しボールを引き出す動きを見せると共に、神戸に押し込まれた際には、中盤に1列下がることによって守備のバランスをとるような動きが多く見えました。一方、アンヨンウに関しては、チーム全体が守備一辺倒にならないように、神戸がボールを保持している時でもカウンターの起点となるように少し高い位置にポジショニングを取っておりました。チームがプレッシャーを受けてボールを繋げない時は、彼をめがけてロングボールを蹴るケースが多く、サイドバックとの競り合いに勝つことによって右サイドの起点となることを任せられておりました。
神戸の先制点はまさにそのアンヨンウのポジショニングが高いことによるスペースをうまく利用されてしまいました。神戸は、右サイドに寄せたところに生まれたスペースをサイドチェンジと共に左サイドバックを活用していたのですが、試合後のインタビューを聞くに神戸の選手たちには事前にその指示が出ていたのでしょう。
(アンヨンウのポジショニングがマッシモさんの意図しているものだとして)鳥栖のハーフがスライドしきれないスペースを利用されるのはやむを得ないのですが、頂けなかったのは、カバーリングに戻ってきたアンヨンウが簡単に飛び込んで交わされてしまったので、小林が前に出てプレッシャーをかけなければならなくなってしまった事です。これにより、ゴール前に致命的なスペースを空けてしまうことになりました。さすが、ワールドクラスの選手はそのスペースを見逃さないなと思ったのですが、ポドルスキは神戸がゴール前でボールを保持している最中にそのスペースを見つけるやいなや即座に進出してきており、渡邊千真からの胸トラップパスをフリーでゴールに流し込むことに成功しました。アンヨンウが空けたスペースはやむを得ないとして、小林が空けたスペースをどのように対応するべきであったかというのは今後の課題ですね。





さて、そうやって先制点を奪われてしまったのですが、同点ゴールはそのアンヨンウのポジショニングが功を奏します。神戸のセンターバックからの縦パスを鳥栖の中盤がカットして、場面は攻撃へのトランジションへと移りますが、その時には既にイバルボが神戸の最終ラインの所にポジションを取っておりました。ここから繊細な動きがあるのですが、右サイドの高い位置にアンヨンウがポジションを取っており、鳥栖の中盤が前を伺ったところで右サイドを駆け上がります。その瞬間、渡部がアンヨンウの上りをケアするためにマーキングに入ろうとサイドへ動きます。これによって、ビルドアップで最終ラインに下がっていた高橋と渡部との間にスペースが生まれました。まさに、ゴール前への門が開いた瞬間です。そのタイミングでの義希のパスは絶妙であり、イバルボがPKを獲得することとなりました。PKの際のカードが出なかった件に関してはこちらでちょっと書いております。
余談ですが、右サイドのアンヨンウが上がっている事に対して、吉田監督がベンチから指差してフリーの選手が生まれてることに対するケアの指示が出た気がするのですよね。映像を見ると、アンヨンウの方を指さしている気がします。もし、吉田監督がアンヨンウをケアするように示したのとするならば、まさにミスリード。それによって、ゴール前にイバルボが突進する隙を与えてしまったことになります。


さて、そうやってアンヨンウのポジショニングによってゲインもロストも発生してしまったのですが、何とか試合を振り出しに戻したサガン鳥栖は、ここでアンヨンウのポジションを変更します。システムを4-4-2にして、中盤の逆サイドに相手のサイドバックが利用できる大きなスペースを作ることをケアする形になりました。得点の奪い合いになることは鳥栖のやり方ではないと判断したのでしょう。これによって、中盤にふたをする形になり、互いに窮屈な中をこじ開ける展開にシフトしていきました。
ここで力を発揮するのがセットプレイでありまして、吉田のオーバーラップで奪ったコーナーキックから、キムミンヒョクが鮮やかなゴールを決めて鳥栖が勝ち越し。この形は、ヴィッセルのブロックの外から決める形を練習していたということで、攻撃の仕込みがうまくいくのは、選手たちも気持ちいいだろうなと。


後半に入ると、54分に青木を投入して、5-3-2のシステムに変更します。神戸はサイドバックのオーバーラップからの攻撃を多用するので、小林、吉田が釣り出された後にセンターバックが釣り出されて中央が薄くなるのをケアしたものだと思われます。
この状態でも、まだ鳥栖は攻撃と守備の比重は3対7くらいだったかなと考えられるのは、フォワードを2人の残してカウンターでのチャンスを狙っていました。イバルボと田川の突進であわよくばというシーンは作れましたが、長い距離を走ったあとのプレイ精度を欠いて、なかなか追加点を奪えず。
そうすると、神戸も鳥栖のシステムによって作り出されるスペースを利用するようになりまして、5-3-2で発生するセントラルハーフの脇のスペースを上手に使いだすようになります。神戸は、ビルドアップで高橋を下げて鳥栖の2トップに対して3人でボール回しをするという人数で回避を行っていたので、そこから中盤のスペースへの繋ぎで徐々に鳥栖陣地での攻撃の時間を増やしてきていました。

追加点を取るというミッションが達成できなかったため、マッシモがここで切り替えてはっきりと守備を意識したシステムに変更します。67分に水野を入れて、水野は右サイドのアウトサイドに配置しました。これによって、5-4-1となり、神戸のビルドアップに対して、中央だけに入れさせない形でイバルボが対峙。あとは9人でブロックを組んで、スペースを空けないよう、ボール保持者を自由にしないよう、統率された動きで神戸からの攻撃を耐える形へとシフトしました。改めて言う事もないのでしょうが、イバルボの1トップは、ボールキープで時間を稼いでくれる貴重な存在です。最後、神戸がハーフナーマイクを投入して猛攻を見せますが、権田のファインセーブもあり、そのままゲームセット。貴重な勝ち点3を奪いました。

最後に一言だけ。今節も田川は攻守に大車輪の活躍を見せてくれました。ボールを持った時にアグレッシブに勝負を挑む姿勢(勝負を挑めるスキルを保有している)も非常に素晴らしいものがあります。しかしながら、若さゆえ、神戸の老獪な選手たちが誘導しているにも関わらず、勝負を挑んで相手の術中にはまったプレイも見えました。これから様々なシーンを経験し、自らで勝負を挑む選択と、味方を生かして自分を生かすプレイの選択の適切な判断力が身に付くと、更にひとつ上のステップに上がれるプレイヤーだと思います。当然、積極的に勝負を挑むメンタルとスキルは大事な要素なので、決して消極的にはならず、様々な事を経験して成長して欲しいと思います。
<画像引用元:DAZN>
試合開始当初は、サガン鳥栖は4-3-2-1というセットアップで試合に入りました。これはあくまでセットアップであり、当然試合展開に応じて選手の判断でポジション変更するのですが、守備におけるセカンドトップの2名の動き方に関しては、それぞれ違ったタスクが与えられておりました。まず、田川に関しては、攻撃の際には前方に飛び出しボールを引き出す動きを見せると共に、神戸に押し込まれた際には、中盤に1列下がることによって守備のバランスをとるような動きが多く見えました。一方、アンヨンウに関しては、チーム全体が守備一辺倒にならないように、神戸がボールを保持している時でもカウンターの起点となるように少し高い位置にポジショニングを取っておりました。チームがプレッシャーを受けてボールを繋げない時は、彼をめがけてロングボールを蹴るケースが多く、サイドバックとの競り合いに勝つことによって右サイドの起点となることを任せられておりました。
神戸の先制点はまさにそのアンヨンウのポジショニングが高いことによるスペースをうまく利用されてしまいました。神戸は、右サイドに寄せたところに生まれたスペースをサイドチェンジと共に左サイドバックを活用していたのですが、試合後のインタビューを聞くに神戸の選手たちには事前にその指示が出ていたのでしょう。
(アンヨンウのポジショニングがマッシモさんの意図しているものだとして)鳥栖のハーフがスライドしきれないスペースを利用されるのはやむを得ないのですが、頂けなかったのは、カバーリングに戻ってきたアンヨンウが簡単に飛び込んで交わされてしまったので、小林が前に出てプレッシャーをかけなければならなくなってしまった事です。これにより、ゴール前に致命的なスペースを空けてしまうことになりました。さすが、ワールドクラスの選手はそのスペースを見逃さないなと思ったのですが、ポドルスキは神戸がゴール前でボールを保持している最中にそのスペースを見つけるやいなや即座に進出してきており、渡邊千真からの胸トラップパスをフリーでゴールに流し込むことに成功しました。アンヨンウが空けたスペースはやむを得ないとして、小林が空けたスペースをどのように対応するべきであったかというのは今後の課題ですね。





さて、そうやって先制点を奪われてしまったのですが、同点ゴールはそのアンヨンウのポジショニングが功を奏します。神戸のセンターバックからの縦パスを鳥栖の中盤がカットして、場面は攻撃へのトランジションへと移りますが、その時には既にイバルボが神戸の最終ラインの所にポジションを取っておりました。ここから繊細な動きがあるのですが、右サイドの高い位置にアンヨンウがポジションを取っており、鳥栖の中盤が前を伺ったところで右サイドを駆け上がります。その瞬間、渡部がアンヨンウの上りをケアするためにマーキングに入ろうとサイドへ動きます。これによって、ビルドアップで最終ラインに下がっていた高橋と渡部との間にスペースが生まれました。まさに、ゴール前への門が開いた瞬間です。そのタイミングでの義希のパスは絶妙であり、イバルボがPKを獲得することとなりました。PKの際のカードが出なかった件に関してはこちらでちょっと書いております。
余談ですが、右サイドのアンヨンウが上がっている事に対して、吉田監督がベンチから指差してフリーの選手が生まれてることに対するケアの指示が出た気がするのですよね。映像を見ると、アンヨンウの方を指さしている気がします。もし、吉田監督がアンヨンウをケアするように示したのとするならば、まさにミスリード。それによって、ゴール前にイバルボが突進する隙を与えてしまったことになります。


さて、そうやってアンヨンウのポジショニングによってゲインもロストも発生してしまったのですが、何とか試合を振り出しに戻したサガン鳥栖は、ここでアンヨンウのポジションを変更します。システムを4-4-2にして、中盤の逆サイドに相手のサイドバックが利用できる大きなスペースを作ることをケアする形になりました。得点の奪い合いになることは鳥栖のやり方ではないと判断したのでしょう。これによって、中盤にふたをする形になり、互いに窮屈な中をこじ開ける展開にシフトしていきました。
ここで力を発揮するのがセットプレイでありまして、吉田のオーバーラップで奪ったコーナーキックから、キムミンヒョクが鮮やかなゴールを決めて鳥栖が勝ち越し。この形は、ヴィッセルのブロックの外から決める形を練習していたということで、攻撃の仕込みがうまくいくのは、選手たちも気持ちいいだろうなと。


後半に入ると、54分に青木を投入して、5-3-2のシステムに変更します。神戸はサイドバックのオーバーラップからの攻撃を多用するので、小林、吉田が釣り出された後にセンターバックが釣り出されて中央が薄くなるのをケアしたものだと思われます。
この状態でも、まだ鳥栖は攻撃と守備の比重は3対7くらいだったかなと考えられるのは、フォワードを2人の残してカウンターでのチャンスを狙っていました。イバルボと田川の突進であわよくばというシーンは作れましたが、長い距離を走ったあとのプレイ精度を欠いて、なかなか追加点を奪えず。
そうすると、神戸も鳥栖のシステムによって作り出されるスペースを利用するようになりまして、5-3-2で発生するセントラルハーフの脇のスペースを上手に使いだすようになります。神戸は、ビルドアップで高橋を下げて鳥栖の2トップに対して3人でボール回しをするという人数で回避を行っていたので、そこから中盤のスペースへの繋ぎで徐々に鳥栖陣地での攻撃の時間を増やしてきていました。

追加点を取るというミッションが達成できなかったため、マッシモがここで切り替えてはっきりと守備を意識したシステムに変更します。67分に水野を入れて、水野は右サイドのアウトサイドに配置しました。これによって、5-4-1となり、神戸のビルドアップに対して、中央だけに入れさせない形でイバルボが対峙。あとは9人でブロックを組んで、スペースを空けないよう、ボール保持者を自由にしないよう、統率された動きで神戸からの攻撃を耐える形へとシフトしました。改めて言う事もないのでしょうが、イバルボの1トップは、ボールキープで時間を稼いでくれる貴重な存在です。最後、神戸がハーフナーマイクを投入して猛攻を見せますが、権田のファインセーブもあり、そのままゲームセット。貴重な勝ち点3を奪いました。

最後に一言だけ。今節も田川は攻守に大車輪の活躍を見せてくれました。ボールを持った時にアグレッシブに勝負を挑む姿勢(勝負を挑めるスキルを保有している)も非常に素晴らしいものがあります。しかしながら、若さゆえ、神戸の老獪な選手たちが誘導しているにも関わらず、勝負を挑んで相手の術中にはまったプレイも見えました。これから様々なシーンを経験し、自らで勝負を挑む選択と、味方を生かして自分を生かすプレイの選択の適切な判断力が身に付くと、更にひとつ上のステップに上がれるプレイヤーだと思います。当然、積極的に勝負を挑むメンタルとスキルは大事な要素なので、決して消極的にはならず、様々な事を経験して成長して欲しいと思います。
<画像引用元:DAZN>
Posted by オオタニ at
18:49
│Match Impression (2017)
2017年10月24日
2017 第30節 番外編 : イバルボを倒したプレイにカードはでないのか?
本編よりも先に番外編が来るという、変な形になってますが、高橋秀人がイバルボを倒してしまったシーン(PKのシーン)で、サガン鳥栖の選手は主審にカードを要求していました。
ここで、改めて、ルール(競技規則)をおさらいすると、以下のようになっています。

押さえる、引っ張る、押すは、これまでと同様にレッドカードになるとなっています。
そして、「次の場合を除き警告される」なので、決定的であれば少なくともイエローカードは出されることになります。
ということで、イバルボが倒されたシーンを振り返ってみますと、
他の選手のカバーリングもなく、決定的なチャンスです。

手を使って引っ張っています。

それでも止まらないので、最後は足をかけてしまっています。

イバルボ要求

みんなで要求

レッドカードな気がしますけどね(笑)
少なくともイエローカードかな。
この件がどうなのかというのはともかくとして、ルールが変わって逆にカードが出ない風潮になってもそれはまた違うので、ルールに則った対応を行って頂きたいですね。
<画像引用元:DAZN>
ここで、改めて、ルール(競技規則)をおさらいすると、以下のようになっています。

押さえる、引っ張る、押すは、これまでと同様にレッドカードになるとなっています。
そして、「次の場合を除き警告される」なので、決定的であれば少なくともイエローカードは出されることになります。
ということで、イバルボが倒されたシーンを振り返ってみますと、
他の選手のカバーリングもなく、決定的なチャンスです。

手を使って引っ張っています。

それでも止まらないので、最後は足をかけてしまっています。

イバルボ要求

みんなで要求

レッドカードな気がしますけどね(笑)
少なくともイエローカードかな。
この件がどうなのかというのはともかくとして、ルールが変わって逆にカードが出ない風潮になってもそれはまた違うので、ルールに則った対応を行って頂きたいですね。
<画像引用元:DAZN>
Posted by オオタニ at
19:25
│SAgAN Diary
2017年10月20日
2017 第29節 : サガン鳥栖 VS セレッソ大阪
過去のしがらみなど関係なくとも、今シーズンのサガン鳥栖としての集大成へ向け、また、次年度を見据えたチーム力の向上として勝利という結果を残したかったセレッソ戦。イバルボのPKによって幸先よく先制したのですが、ミスによる失点が重なり、残念ながら逆転負けを喫してしまいました。前半あれだけ機能していた選手たちが、後半終了間際には完全に機能不全に陥ってしまった理由を解析してみます。
前半の立ち上がりは、セレッソのビルドアップや素早いトランジションに対して、ファーストディフェンスで誰が行くのかという整理、また、鳥栖のポジティブトランジションの場面が来た際にどのように攻める(キープする、運ぶ、前進する)のかという事を整理するタイムラグの間に押し込まれる展開となってしまいました。セレッソは個の力が強いので、対処を誤ると途端にピンチを迎える事となっていましたが、水沼のシュートがサイドネットを揺らした場面もオフサイドということで、なんとか序盤のカオスを無失点で切り抜ける事ができました。
段々と頭の整理がついて、チームの中の秩序を保てるようになると、鳥栖の選手たちが徐々にボールキープできるようになります。トレーニングの中で、セレッソの守備体系に対してこの形でボールをつなげば自分たちがキープできるという準備をしていたと思うのですが、その準備が功を奏したのか随所に再現性のある攻撃を仕掛けていました。
その攻撃パターンの前にシステムをおさらいします。システムは4-3-3と言う登録でしたが、実質はセカンドトップ2名が攻守にわたって中盤をケアする4-5-1のような形です。
中盤を5枚で構成していることにより、ビルドアップの抜け道(ボールのつなぎどころ)を確立できていたためボールを前進する事で四苦八苦することはありませんでした。サイドから崩して最後のクロスと言う所で中央の人数不足が発生するケースがあるのは否めませんが、少なくとも、ボールをキープしてゴール前近くまで前進することに成功しており、リアクションでしか攻撃を仕掛けることができないというストレスは回避できていました。
守備面においても、押し込まれた際にはサイドハーフ(もしくはアンカー)が1枚最終ラインをケアして、そのスペースをセカンドトップが埋める形(時にはセカンドトップが最終ラインをカバーリング)で、小野と田川が巧みにポジションを上下していました。また、セレッソも杉本に高さがあるため、彼の力を生かそうと空中戦を挑むボールも出されていたのですが、中盤の構成(人数・配置)によって鳥栖がセカンドボールを拾いやすい仕組みづくりもできていました。
では、ボールを運ぶ仕組みの所なのですが、セレッソの前線の4人が最終ラインにプレッシャーをかけた際、最終ラインと中盤との間にわずかなギャップが生まれます。また、セレッソのボランチは中央を空けたくないので、サイドのケアに関しては優先度を低くしています。そのギャップを利用して、セカンドトップが素早く(主にセンターバックなどのトップの位置から)相手のサイドバックの前に下がってポジショニングを取り、その動きに連動して鳥栖のサイドハーフがアウトサイドにポジションを取ってフリーの状態を作りだすという一連の流れを作り出していました。サイドバック、サイドハーフ、セカンドトップの3人でサイドにおける数的優位を作りだし、サイドバックの裏を狙って前進する仕組みがチーム全体として共有されていました。
この仕組みづくりの上で重要なのは、時折、最終ラインからサイドバックの裏に向けて、田川、小野を走らせる長いボールが出されていたことです。この長いボールが出ていたことによって、セレッソの最終ラインが単純に前だけケアをしていればよいわけではない状態を生み出し、田川、小野が裏へ抜け出すのか、引いて受けるのかというアクションを見なければならなくなりました。これもまた、サイドバックの前でボールを受けるというスペースを作り出すことができていた一つの要因と考えられます。
この仕組みの確立によって、セカンドトップがサイドバックの前でボールを受けてから、アウトサイドにフリーでポジショニングする選手にフリックで流して早い攻撃を仕掛けることも出来ましたし、セカンドトップに当てると見せかけてアウトサイドの選手がサイドバックの裏を直接つく攻撃も仕掛けられました。(PKを取得する前の吉田へのスルーパスはその典型です)。何よりも、縦パスを入れる事のできる空間を作り上げることが出来ていたのは、攻撃として素晴らしかったと思います。
最終ラインからトップの位置までボールを前進させることができたならば、そこからはイバルボが絡んできます。良い形でイバルボにボールを渡すことによって前線でボールキープしてタメをつくることもできますし、個人で突破してゴール前まで迫ることもできます。セカンドトップの役割であるサイドバックの前でのポイント作りをイバルボが役目を務めることもありましたが、そうすると、今度は田川の飛び出しを演出することができます。
前半は、アンカーを繋ぎの逃げ道として最終ラインでボールを回しながら、サイドバック、サイドハーフ、セカンドトップが適切な距離を保つことにより、また、セカンドトップがセンターバックもサイドバックもマークに付きづらいポジションでボールを受けることにより、小気味よくボールが繋がる攻撃をしかける事ができていました。





しかしながら、「好事魔多し」と言いますが、ボールが繋がることによって攻めへの圧力を強めたことにより、その背後を狙われてセレッソに勝ち越しゴールを奪われてしまいます。(この勝ち越しゴールに関しては後述。)
このセレッソの勝ち越しゴールに端を発し、鳥栖が動きを見せます。ビハインドの場面でゴール前での人数を増やしたいという点、また、(吉田の裏を狙われて逆転ゴールを許したという所も意識にあったのでしょうが)体力が落ちてきてハーフ3人のスライドだけでは逆サイドのスペースケアを行うのがつらくなってきた点により、システムを4-4-2の形に変えました。
しかしながら、このシステム変更が残念ながら悪手となってしまい、鳥栖が機能不全に陥る要因となってしまいました。これまで中盤の(サイドの)数的優位を作って、ビルドアップの抜け道を作りながらボールを繋いでいた攻撃ですが、4-4-2にしてしまったことにより、セレッソの守備とミラー状態になってしまって、セレッソにとっては選手個々がプレッシャーをかけるべきターゲットが明確となり、セレッソの守備の連動が増してしまいました。
また、ツートップのポジショニングで、イバルボと中盤との距離が空いてしまったので、彼へのボールが寸断されてしまう状況が生まれ、攻撃の軸となるタメを作れない状況になってしまいました。中央にポジションを取ることによって、センターバック(ヨニッチ)を相手にしなければならなくなったことも、ボールキープが容易にできないことに繋がりました。
スペースを有効活用するため、4-4-2にしてサイドハーフを幅取り要員として逆サイドに据え置いていたのですが、そこに至るまでの経緯でミラー状態となっている状況を打開できず。鳥栖の攻撃が停滞したときの十分条件なのですが、鳥栖の最終ラインやアンカーがはがすドリブルで打開できないため、サイドハーフがとった幅を上手く活用できず、逆に選手間の距離が空いてボールが繋げないという現象を生んでしまいました。
その後も、更にトップの圧力を高めるために豊田を入れたり、ボールを前進させるためにドリブルで打開のできる河野、アンヨンウを投入したりしたのですが、彼らが良い形で前を向いてボールを受ける事すらできず、目立ったチャンスを作れずに、そうこうするうちにセレッソが(ユンさん定例の)5バックによって最終ラインをしっかりと固め、見せ場なく試合終了のホイッスルが鳴ってしまいました。
豊田を入れた事は問題ないとして、イバルボまでトップの位置に上げてしまったのはボールを運ぶ仕組みとしては非効率になってしまいました。彼が、サイドの中盤でボールを受けて、そこでキープしてアンヨンウや河野が飛び出すという仕組みにした方が、ボールは前進させられたのかなと思いますし、ゴールに近い所で仕事をさせたいのであれば、ビルドアップがうまく行っていない状況だったので、いっそのことガンガンとゴール前に放り込んで、アンヨンウ(もしくは河野のどちらか)がセカンドボールを狙う配置にしてしまえばよかったかなと。選手たちも、試合途中に変わった配置に対するテーラリングを行う事ができず、模索しながら試合が終わってしまった感があるのは、もやもやの残る試合だったのではないでしょうか。




では、この試合が悪い方向へ踏み出してしまう元凶となってしまった2失点目を振り返ります。
背景として、鳥栖はボールも自分たちの意思の下で保持でき、ある程度思うような攻撃に結びついていた時間帯でした。前線からのプレッシャーで容易にボールを奪える(相手に長いボールを蹴らせる)シーンもあり、試合全体として、ネガティブトランジション時の選択としては、「リトリート」よりも「プレッシャー」という選択をマッシモが与えていました。
ネガティブトランジションの組織構築(戦術選択)も非常に大事な要素でして、攻撃時から相手に奪われた際に備えて、どのようなポジショニングでリスクに備え、どのような動き方で対処(「奪いに行く」「遅らせる」)するかという行動パターンを予め整理しておく事は重要なポイントです。攻撃面で、サイドに人を寄せて数的優位を作ってからの崩してあったため、セカンドボールが相手にこぼれてしまった際の逆サイドのケアに関しては、選手間の意識を共有し、適切な動き(適切な判断)を行わなければなりません。
失点のシーンは、田川が相手の最終ラインへドリブルをしかけ、木本にひっかけられたボールが柿谷の足元に入ったところから始まります。このシーンでの鳥栖のチームとしての選択は、前述の通り、トランジションでの素早いプレスでした。原川と義希が柿谷にプレッシャーをかけるのですが、他のメンバーが連動しておらず(追い込み先に鳥栖の選手がいない)簡単に柿谷、水沼、ヨニッチを経由して、吉田の裏のスペースに抜け出す松田へとボールが繋がってしまいます。
失点に関しては、ここが最大のポイントだったのですが、まず大きな要素としては、吉田が裏のスペースを空けてプレスに入ってしまったことです。ボールが奪える(もしくは攻撃を遅らせることができる)という判断の下でプレスに入ったのでしょうが、残念ながら相手に自由に使われるスペースを提供してしまう結果となってしまいました。
また、そのスペースに対するケアの問題ですが、松田が裏へと走り抜けだした時にはイバルボと松田は同じ位置にいます。単なるスペースのカバーリングのみならず、相手プレイヤーがそのスペースを使おうとしている状態だったので、イバルボが松田についていくという選択は十分に考えられました。イバルボは、試合の流れによって中盤のスペースや最終ラインの裏のスペースをカバーリングするべく、猛然とリトリートするシーンがあります。よって、守備の意識やスペースの意識は十分に持ち合わせているはずなのですが、このシーンではカバーリングができませんでした。もしかしたら、前半の体力が残っている時であれば、イバルボもリトリートしていたかもしれません。
そのまま、セレッソが速いスピードでゴール前に迫っていたのですが、セレッソの上りのスピードに対して、福田と原川のリトリートも遅れています。松田と水沼を自由にさせないために、吉田が猛スピードで自陣へと戻るのですが、その戻りに対するフォローを原川が果たすことが出来ていません。単純に縦に入っていくだけでなく、吉田が松田にプレスに行ってそれを交わす時間が発生しているので、原川が猛ダッシュで戻っていたら、松田もしくは水沼へのケアができていたかもしれません。
また、サガン鳥栖がブロックを敷いている際の守備陣形としては、相手がゴール前まで迫って来たときには、福田がディフェンスラインに下がってクロスに対してファーサイドのケアをします。今回は、福田の戻りも遅れているので、結局、最終ラインは3人で見なければならない状況が発生し、(守備的陣形を組んでいる時には)福田がケアしているはずのファーサイドでやられてしまいました。
最終ラインの動きですが、セレッソのゴール前に押し上げてくる3人に対して、ひとまずはバランスを保ちながらリトリートできていました。ただし、吉田が松田に交わされたことによって状況が一変し、チョンスンヒョンがサイドに引っ張り出されることになります。これにより、ディフェンスライン全体として左サイドへのスライドが生じます。
そのスライドが生じたことによって、藤田のポジショニングが難しい状態となりました。瞬間的に、ゴール前にセレッソの選手3人に対して藤田1人が見なければならない状況が生まれます。藤田の動きとしては、スペースケアの優先度は中央の方が高いので、スンヒョン、ミンヒョクの動きに合わせて中央へとスライドを行いました。中央からシュートを受けるよりもファーサイドからシュートを受ける方が、シュートの角度が狭くなり、シュートミスやキーパーセーブの可能性があがるので、ファーサイドの清武を捨てざるを得ない状況が発生しています。義希が最終ラインのカバーリングに入ってきたため、ミンヒョクとの位置関係によって、スライドすることなくラインを維持することも可能だったかもしれませんが、めまぐるしいスピードの中での対処なのでちょっと難しかったです。
そして、水沼は、ゴール前の動きを見て、また、味方の動きを見てファーサイドの清武へとクロスを供給します。そのクロスから清武が権田の頭の上を超えるヘディングでゴールを決めたのですが、とにかくクロスとシュートの精度が良かったですね。当然、そこに至るまでの経緯において、様々なところで鳥栖側に問題が発生しているのですが、最終的にはセレッソのプレーの質が見事だったという所です。






この失点は、今期の鳥栖の失点を象徴するような形でした。当Blogでも何度も書いてきましたが、今期の鳥栖は、ネガティブトランジション時の動き、スペースに対するリスクマネジメント、そして、危機察知能力(戻らないといけないシーンで戻れていない)による失点がなかなか解消できていません。
それは、組織としての戦術的な問題、個人としての戦術把握の問題、終盤での体力の問題、いろいろな要素が含まれています。まずはその問題をクリアするための課題設定が必要です。それは、制度設計の見直しかもしれませんし、個々の更なる戦術把握かもしれませんし、もしかしたら90分走れる体力作りかもしれません。チームとしての修正ポイントを明確にして、今後のトレーニングに臨んで欲しいですね。
選手個々の質としてはセレッソの方が上でしたが、それはほんの少しの差だったと思います。前半に攻勢を見せた時間帯があったように、やり方次第ですぐにでも入れ替わることのできるほんの少しの差です。でも、90分間を通して見るとその差を超えられなかったことが、シーズンが終わろうとしている現在の順位の差に現れているのかもしれません。
<画像引用元:DAZN>
前半の立ち上がりは、セレッソのビルドアップや素早いトランジションに対して、ファーストディフェンスで誰が行くのかという整理、また、鳥栖のポジティブトランジションの場面が来た際にどのように攻める(キープする、運ぶ、前進する)のかという事を整理するタイムラグの間に押し込まれる展開となってしまいました。セレッソは個の力が強いので、対処を誤ると途端にピンチを迎える事となっていましたが、水沼のシュートがサイドネットを揺らした場面もオフサイドということで、なんとか序盤のカオスを無失点で切り抜ける事ができました。
段々と頭の整理がついて、チームの中の秩序を保てるようになると、鳥栖の選手たちが徐々にボールキープできるようになります。トレーニングの中で、セレッソの守備体系に対してこの形でボールをつなげば自分たちがキープできるという準備をしていたと思うのですが、その準備が功を奏したのか随所に再現性のある攻撃を仕掛けていました。
その攻撃パターンの前にシステムをおさらいします。システムは4-3-3と言う登録でしたが、実質はセカンドトップ2名が攻守にわたって中盤をケアする4-5-1のような形です。
中盤を5枚で構成していることにより、ビルドアップの抜け道(ボールのつなぎどころ)を確立できていたためボールを前進する事で四苦八苦することはありませんでした。サイドから崩して最後のクロスと言う所で中央の人数不足が発生するケースがあるのは否めませんが、少なくとも、ボールをキープしてゴール前近くまで前進することに成功しており、リアクションでしか攻撃を仕掛けることができないというストレスは回避できていました。
守備面においても、押し込まれた際にはサイドハーフ(もしくはアンカー)が1枚最終ラインをケアして、そのスペースをセカンドトップが埋める形(時にはセカンドトップが最終ラインをカバーリング)で、小野と田川が巧みにポジションを上下していました。また、セレッソも杉本に高さがあるため、彼の力を生かそうと空中戦を挑むボールも出されていたのですが、中盤の構成(人数・配置)によって鳥栖がセカンドボールを拾いやすい仕組みづくりもできていました。
では、ボールを運ぶ仕組みの所なのですが、セレッソの前線の4人が最終ラインにプレッシャーをかけた際、最終ラインと中盤との間にわずかなギャップが生まれます。また、セレッソのボランチは中央を空けたくないので、サイドのケアに関しては優先度を低くしています。そのギャップを利用して、セカンドトップが素早く(主にセンターバックなどのトップの位置から)相手のサイドバックの前に下がってポジショニングを取り、その動きに連動して鳥栖のサイドハーフがアウトサイドにポジションを取ってフリーの状態を作りだすという一連の流れを作り出していました。サイドバック、サイドハーフ、セカンドトップの3人でサイドにおける数的優位を作りだし、サイドバックの裏を狙って前進する仕組みがチーム全体として共有されていました。
この仕組みづくりの上で重要なのは、時折、最終ラインからサイドバックの裏に向けて、田川、小野を走らせる長いボールが出されていたことです。この長いボールが出ていたことによって、セレッソの最終ラインが単純に前だけケアをしていればよいわけではない状態を生み出し、田川、小野が裏へ抜け出すのか、引いて受けるのかというアクションを見なければならなくなりました。これもまた、サイドバックの前でボールを受けるというスペースを作り出すことができていた一つの要因と考えられます。
この仕組みの確立によって、セカンドトップがサイドバックの前でボールを受けてから、アウトサイドにフリーでポジショニングする選手にフリックで流して早い攻撃を仕掛けることも出来ましたし、セカンドトップに当てると見せかけてアウトサイドの選手がサイドバックの裏を直接つく攻撃も仕掛けられました。(PKを取得する前の吉田へのスルーパスはその典型です)。何よりも、縦パスを入れる事のできる空間を作り上げることが出来ていたのは、攻撃として素晴らしかったと思います。
最終ラインからトップの位置までボールを前進させることができたならば、そこからはイバルボが絡んできます。良い形でイバルボにボールを渡すことによって前線でボールキープしてタメをつくることもできますし、個人で突破してゴール前まで迫ることもできます。セカンドトップの役割であるサイドバックの前でのポイント作りをイバルボが役目を務めることもありましたが、そうすると、今度は田川の飛び出しを演出することができます。
前半は、アンカーを繋ぎの逃げ道として最終ラインでボールを回しながら、サイドバック、サイドハーフ、セカンドトップが適切な距離を保つことにより、また、セカンドトップがセンターバックもサイドバックもマークに付きづらいポジションでボールを受けることにより、小気味よくボールが繋がる攻撃をしかける事ができていました。





しかしながら、「好事魔多し」と言いますが、ボールが繋がることによって攻めへの圧力を強めたことにより、その背後を狙われてセレッソに勝ち越しゴールを奪われてしまいます。(この勝ち越しゴールに関しては後述。)
このセレッソの勝ち越しゴールに端を発し、鳥栖が動きを見せます。ビハインドの場面でゴール前での人数を増やしたいという点、また、(吉田の裏を狙われて逆転ゴールを許したという所も意識にあったのでしょうが)体力が落ちてきてハーフ3人のスライドだけでは逆サイドのスペースケアを行うのがつらくなってきた点により、システムを4-4-2の形に変えました。
しかしながら、このシステム変更が残念ながら悪手となってしまい、鳥栖が機能不全に陥る要因となってしまいました。これまで中盤の(サイドの)数的優位を作って、ビルドアップの抜け道を作りながらボールを繋いでいた攻撃ですが、4-4-2にしてしまったことにより、セレッソの守備とミラー状態になってしまって、セレッソにとっては選手個々がプレッシャーをかけるべきターゲットが明確となり、セレッソの守備の連動が増してしまいました。
また、ツートップのポジショニングで、イバルボと中盤との距離が空いてしまったので、彼へのボールが寸断されてしまう状況が生まれ、攻撃の軸となるタメを作れない状況になってしまいました。中央にポジションを取ることによって、センターバック(ヨニッチ)を相手にしなければならなくなったことも、ボールキープが容易にできないことに繋がりました。
スペースを有効活用するため、4-4-2にしてサイドハーフを幅取り要員として逆サイドに据え置いていたのですが、そこに至るまでの経緯でミラー状態となっている状況を打開できず。鳥栖の攻撃が停滞したときの十分条件なのですが、鳥栖の最終ラインやアンカーがはがすドリブルで打開できないため、サイドハーフがとった幅を上手く活用できず、逆に選手間の距離が空いてボールが繋げないという現象を生んでしまいました。
その後も、更にトップの圧力を高めるために豊田を入れたり、ボールを前進させるためにドリブルで打開のできる河野、アンヨンウを投入したりしたのですが、彼らが良い形で前を向いてボールを受ける事すらできず、目立ったチャンスを作れずに、そうこうするうちにセレッソが(ユンさん定例の)5バックによって最終ラインをしっかりと固め、見せ場なく試合終了のホイッスルが鳴ってしまいました。
豊田を入れた事は問題ないとして、イバルボまでトップの位置に上げてしまったのはボールを運ぶ仕組みとしては非効率になってしまいました。彼が、サイドの中盤でボールを受けて、そこでキープしてアンヨンウや河野が飛び出すという仕組みにした方が、ボールは前進させられたのかなと思いますし、ゴールに近い所で仕事をさせたいのであれば、ビルドアップがうまく行っていない状況だったので、いっそのことガンガンとゴール前に放り込んで、アンヨンウ(もしくは河野のどちらか)がセカンドボールを狙う配置にしてしまえばよかったかなと。選手たちも、試合途中に変わった配置に対するテーラリングを行う事ができず、模索しながら試合が終わってしまった感があるのは、もやもやの残る試合だったのではないでしょうか。




では、この試合が悪い方向へ踏み出してしまう元凶となってしまった2失点目を振り返ります。
背景として、鳥栖はボールも自分たちの意思の下で保持でき、ある程度思うような攻撃に結びついていた時間帯でした。前線からのプレッシャーで容易にボールを奪える(相手に長いボールを蹴らせる)シーンもあり、試合全体として、ネガティブトランジション時の選択としては、「リトリート」よりも「プレッシャー」という選択をマッシモが与えていました。
ネガティブトランジションの組織構築(戦術選択)も非常に大事な要素でして、攻撃時から相手に奪われた際に備えて、どのようなポジショニングでリスクに備え、どのような動き方で対処(「奪いに行く」「遅らせる」)するかという行動パターンを予め整理しておく事は重要なポイントです。攻撃面で、サイドに人を寄せて数的優位を作ってからの崩してあったため、セカンドボールが相手にこぼれてしまった際の逆サイドのケアに関しては、選手間の意識を共有し、適切な動き(適切な判断)を行わなければなりません。
失点のシーンは、田川が相手の最終ラインへドリブルをしかけ、木本にひっかけられたボールが柿谷の足元に入ったところから始まります。このシーンでの鳥栖のチームとしての選択は、前述の通り、トランジションでの素早いプレスでした。原川と義希が柿谷にプレッシャーをかけるのですが、他のメンバーが連動しておらず(追い込み先に鳥栖の選手がいない)簡単に柿谷、水沼、ヨニッチを経由して、吉田の裏のスペースに抜け出す松田へとボールが繋がってしまいます。
失点に関しては、ここが最大のポイントだったのですが、まず大きな要素としては、吉田が裏のスペースを空けてプレスに入ってしまったことです。ボールが奪える(もしくは攻撃を遅らせることができる)という判断の下でプレスに入ったのでしょうが、残念ながら相手に自由に使われるスペースを提供してしまう結果となってしまいました。
また、そのスペースに対するケアの問題ですが、松田が裏へと走り抜けだした時にはイバルボと松田は同じ位置にいます。単なるスペースのカバーリングのみならず、相手プレイヤーがそのスペースを使おうとしている状態だったので、イバルボが松田についていくという選択は十分に考えられました。イバルボは、試合の流れによって中盤のスペースや最終ラインの裏のスペースをカバーリングするべく、猛然とリトリートするシーンがあります。よって、守備の意識やスペースの意識は十分に持ち合わせているはずなのですが、このシーンではカバーリングができませんでした。もしかしたら、前半の体力が残っている時であれば、イバルボもリトリートしていたかもしれません。
そのまま、セレッソが速いスピードでゴール前に迫っていたのですが、セレッソの上りのスピードに対して、福田と原川のリトリートも遅れています。松田と水沼を自由にさせないために、吉田が猛スピードで自陣へと戻るのですが、その戻りに対するフォローを原川が果たすことが出来ていません。単純に縦に入っていくだけでなく、吉田が松田にプレスに行ってそれを交わす時間が発生しているので、原川が猛ダッシュで戻っていたら、松田もしくは水沼へのケアができていたかもしれません。
また、サガン鳥栖がブロックを敷いている際の守備陣形としては、相手がゴール前まで迫って来たときには、福田がディフェンスラインに下がってクロスに対してファーサイドのケアをします。今回は、福田の戻りも遅れているので、結局、最終ラインは3人で見なければならない状況が発生し、(守備的陣形を組んでいる時には)福田がケアしているはずのファーサイドでやられてしまいました。
最終ラインの動きですが、セレッソのゴール前に押し上げてくる3人に対して、ひとまずはバランスを保ちながらリトリートできていました。ただし、吉田が松田に交わされたことによって状況が一変し、チョンスンヒョンがサイドに引っ張り出されることになります。これにより、ディフェンスライン全体として左サイドへのスライドが生じます。
そのスライドが生じたことによって、藤田のポジショニングが難しい状態となりました。瞬間的に、ゴール前にセレッソの選手3人に対して藤田1人が見なければならない状況が生まれます。藤田の動きとしては、スペースケアの優先度は中央の方が高いので、スンヒョン、ミンヒョクの動きに合わせて中央へとスライドを行いました。中央からシュートを受けるよりもファーサイドからシュートを受ける方が、シュートの角度が狭くなり、シュートミスやキーパーセーブの可能性があがるので、ファーサイドの清武を捨てざるを得ない状況が発生しています。義希が最終ラインのカバーリングに入ってきたため、ミンヒョクとの位置関係によって、スライドすることなくラインを維持することも可能だったかもしれませんが、めまぐるしいスピードの中での対処なのでちょっと難しかったです。
そして、水沼は、ゴール前の動きを見て、また、味方の動きを見てファーサイドの清武へとクロスを供給します。そのクロスから清武が権田の頭の上を超えるヘディングでゴールを決めたのですが、とにかくクロスとシュートの精度が良かったですね。当然、そこに至るまでの経緯において、様々なところで鳥栖側に問題が発生しているのですが、最終的にはセレッソのプレーの質が見事だったという所です。






この失点は、今期の鳥栖の失点を象徴するような形でした。当Blogでも何度も書いてきましたが、今期の鳥栖は、ネガティブトランジション時の動き、スペースに対するリスクマネジメント、そして、危機察知能力(戻らないといけないシーンで戻れていない)による失点がなかなか解消できていません。
それは、組織としての戦術的な問題、個人としての戦術把握の問題、終盤での体力の問題、いろいろな要素が含まれています。まずはその問題をクリアするための課題設定が必要です。それは、制度設計の見直しかもしれませんし、個々の更なる戦術把握かもしれませんし、もしかしたら90分走れる体力作りかもしれません。チームとしての修正ポイントを明確にして、今後のトレーニングに臨んで欲しいですね。
選手個々の質としてはセレッソの方が上でしたが、それはほんの少しの差だったと思います。前半に攻勢を見せた時間帯があったように、やり方次第ですぐにでも入れ替わることのできるほんの少しの差です。でも、90分間を通して見るとその差を超えられなかったことが、シーズンが終わろうとしている現在の順位の差に現れているのかもしれません。
<画像引用元:DAZN>
Posted by オオタニ at
14:00
│Match Impression (2017)
2017年10月06日
2017 第28節 : サガン鳥栖 VS 鹿島アントラーズ
鹿島戦は、試合終了間際にあげた福田のゴールによって、久しぶりのウノゼロでの勝利となりました。浦和戦とは異なり、前線からのアグレッシブな守備からのボール奪取による素早い攻撃と、堅固なブロックによる守備からのビルドアップ攻撃をうまく使い分け、監督も満足と語っていましたが非常に質の高い動きを見せてくれた戦いでした。試合のポイントを簡単に振り返ります。
攻撃では、ここ最近のスタイルと同様、左サイドは原川が引いてビルドアップを担い、吉田を前に押し出してスピードと縦への突破を生かす形、右サイドは福田が横幅を取りながら、小林からの縦へのパスを引き出す形でした。
この試合の鳥栖の攻撃で目立ったのは、相手のポジションのライン間や選手の間のスペースでボールを受ける意識が非常に高く、選手間のポジションも非常にバランスがとれた形で、孤立することのないような仕組みになっていました。特に、前線の選手たちのセンターバックとセンターバックとの間やセンターバックとサイドバックの間、このスペースを作り出して有効活用しようとする動きが良かったです。
鳥栖としては、ポジションのライン間に選手がいることによって、鹿島の選手に守備としてどのような対応をするのか、選択を迫ることができます。鹿島がボールの行き先となりそうな選手に食いついてきた場合には、動いて空いたスペースを狙う事が可能となり、鹿島が守備のバランスを維持し、スペースを空けないようにブロックを組んでいた場合には、ライン間の選手にボールを配球することができます。裏を返すと、守備側としては意識の統一(組織としての統率)が必要なわけで、全体が連動せずに誰か一人が食いついたり、誰か一人がブロックを組んだままだとスペースを与えてしまい、また、フリーの選手を作ってしまうわけなのです。
当然、フィールドプレイヤーの10人がすべてのスペースを守る事はできないので、守備側としては相手が攻撃を仕掛けるスペースや選手に対して狙いを絞って(意識を合せて)守備を行う必要があるのですが、この試合は、割と鹿島の守備組織のズレが発生するシーンが多く、そのズレによって生じたスペースを狙って、鳥栖が効果的にボールを運ぶことが出来ていましたし、前半からしっかりとシュートチャンスに結びつけていました。後は、シュートを決めるだけだったのですけど…なかなかそこはですね(笑)
もうひとつ、イバルボに対するケアは鹿島全体として徹底していましたが、イバルボがそのマークをモノともしない高いボールキープ力によってマッチアップした選手(センターバック)を引き連れてスペースを作り、そしてそのスペースに対して小野や原川が飛び込んでいくという連動性の高い攻撃ができていました。
■最終ライン間を狙う攻撃








このように、鳥栖は、試合を通じて全体をバランスよくインサイド、アウトサイドに選手を配置し、鹿島の選手間のスペースを狙う動きを狙っていました。この攻撃が奏功し、福田の決勝点はほぼフリーでシュートを放つことができました。鹿島の守備としての中央への絞り方、選手に対するアプローチを逆手に取った形での得点でした。
鹿島としては、選手交代のカードが攻撃の選手だったので、ベンチからは勝ちにいきなさいというメッセージが送られていたのでしょう。ただ、鳥栖がボールを持っている時のアプローチをどのように取るのかというところは、選手間の意識のずれがあったかもしれません。福田の決勝点のシーンでは、前線の5人はボールを追って前から取ろうとしていましたが、鳥栖のフォワードが押し込んでいたということもあり、中盤から後ろの5人は鳥栖の攻撃に備えているような状態となりました。これにより、鳥栖のビルドアップでフリーになっている選手が生まれ、最終的には5人と5人との大きなギャップに福田がポジションを取ってボールを受けることができました。
ここからの攻めも秀逸でして、イバルボとアンヨンウがこの試合のコンセプトである、センターバック間にポジションを取り、そこから抜けだすアンヨンウと、ファーサイドに引き付けるイバルボと言う形で、分断することに成功しました。福田の判断もよく、アンヨンウへのパスを出した後は、彼もまたセンターバックとサイドバックの間のスペースをめがけてランニングを行います。
もうひとつのポイントとしては、福田がボールを受けて田川のクロスがあがるまで、鹿島の守備陣は備えていた5人だけで迎え撃たなければならなくなった事です。鹿島が前からボールを奪おうとして出ていったことが、前線の5人が最終ラインへ帰陣する遅れを生んでしまいました。福田に対するマークのずれもさることながら、田川がノープレッシャーでクロスをあげることが出来たことは鹿島としての対応のミスでしょう。そのミスをついて、ビルドアップから前進・フィニッシュまで福田がすべてのプレーに絡んだ素晴らしいゴールでした。




鹿島としても、決してチャンスがなかったわけでもなく、レアンドロのドリブルによるチャンスメイクや、金崎が吉田の裏のスペースをついた動きなどで、幾度となく起点を作っていました。特にサイドバックへの裏を狙った攻撃に関しては、速攻によるチャンスメイクもさることながら、ビルドアップによって吉田を引き付けた裏を狙う攻撃もできておりました。左サイドへのカバーリングを行うためチョンスンヒョンが引っ張り出されていたケースが何度かあり、金崎にマッチアップさせてからのクロスと言う形作りは、鹿島として狙い通りだったのでしょう。
鳥栖の守備は、センターバックが引き出されたときのつるべの動きが整理されており、セントラルハーフ(義希や福田)のディフェンスラインへのリトリートによるカバーリング、サイドバック(吉田・小林)の絞りによるセンターバック化というタスクをしっかりとこなしていました。小林のゴール前のクロスに対するクリアは非常によく目立ちますよね。無論、チョンスンヒョンの金崎への対応も良かったです。崩されかけながらも、決定的なピンチを迎えることなく、失点を喫するまでには至りませんでした。


アグレッシブでかつリスクを最小限に抑えた効率的な戦いで連勝中の首位から勝ち星を挙げたのは、チームにとっても好影響を与えるでしょう。特に、報道では、マッシモさんの契約延長が決まったということで、これからの戦いは決して消化試合ではなく、来年も見据えた戦いにもなります。今シーズン残り試合、ひとつでも上の順位を目指し、少しでもチームのレベルを高めて欲しいと思います。
<画像引用元:DAZN>
攻撃では、ここ最近のスタイルと同様、左サイドは原川が引いてビルドアップを担い、吉田を前に押し出してスピードと縦への突破を生かす形、右サイドは福田が横幅を取りながら、小林からの縦へのパスを引き出す形でした。
この試合の鳥栖の攻撃で目立ったのは、相手のポジションのライン間や選手の間のスペースでボールを受ける意識が非常に高く、選手間のポジションも非常にバランスがとれた形で、孤立することのないような仕組みになっていました。特に、前線の選手たちのセンターバックとセンターバックとの間やセンターバックとサイドバックの間、このスペースを作り出して有効活用しようとする動きが良かったです。
鳥栖としては、ポジションのライン間に選手がいることによって、鹿島の選手に守備としてどのような対応をするのか、選択を迫ることができます。鹿島がボールの行き先となりそうな選手に食いついてきた場合には、動いて空いたスペースを狙う事が可能となり、鹿島が守備のバランスを維持し、スペースを空けないようにブロックを組んでいた場合には、ライン間の選手にボールを配球することができます。裏を返すと、守備側としては意識の統一(組織としての統率)が必要なわけで、全体が連動せずに誰か一人が食いついたり、誰か一人がブロックを組んだままだとスペースを与えてしまい、また、フリーの選手を作ってしまうわけなのです。
当然、フィールドプレイヤーの10人がすべてのスペースを守る事はできないので、守備側としては相手が攻撃を仕掛けるスペースや選手に対して狙いを絞って(意識を合せて)守備を行う必要があるのですが、この試合は、割と鹿島の守備組織のズレが発生するシーンが多く、そのズレによって生じたスペースを狙って、鳥栖が効果的にボールを運ぶことが出来ていましたし、前半からしっかりとシュートチャンスに結びつけていました。後は、シュートを決めるだけだったのですけど…なかなかそこはですね(笑)
もうひとつ、イバルボに対するケアは鹿島全体として徹底していましたが、イバルボがそのマークをモノともしない高いボールキープ力によってマッチアップした選手(センターバック)を引き連れてスペースを作り、そしてそのスペースに対して小野や原川が飛び込んでいくという連動性の高い攻撃ができていました。
■最終ライン間を狙う攻撃








このように、鳥栖は、試合を通じて全体をバランスよくインサイド、アウトサイドに選手を配置し、鹿島の選手間のスペースを狙う動きを狙っていました。この攻撃が奏功し、福田の決勝点はほぼフリーでシュートを放つことができました。鹿島の守備としての中央への絞り方、選手に対するアプローチを逆手に取った形での得点でした。
鹿島としては、選手交代のカードが攻撃の選手だったので、ベンチからは勝ちにいきなさいというメッセージが送られていたのでしょう。ただ、鳥栖がボールを持っている時のアプローチをどのように取るのかというところは、選手間の意識のずれがあったかもしれません。福田の決勝点のシーンでは、前線の5人はボールを追って前から取ろうとしていましたが、鳥栖のフォワードが押し込んでいたということもあり、中盤から後ろの5人は鳥栖の攻撃に備えているような状態となりました。これにより、鳥栖のビルドアップでフリーになっている選手が生まれ、最終的には5人と5人との大きなギャップに福田がポジションを取ってボールを受けることができました。
ここからの攻めも秀逸でして、イバルボとアンヨンウがこの試合のコンセプトである、センターバック間にポジションを取り、そこから抜けだすアンヨンウと、ファーサイドに引き付けるイバルボと言う形で、分断することに成功しました。福田の判断もよく、アンヨンウへのパスを出した後は、彼もまたセンターバックとサイドバックの間のスペースをめがけてランニングを行います。
もうひとつのポイントとしては、福田がボールを受けて田川のクロスがあがるまで、鹿島の守備陣は備えていた5人だけで迎え撃たなければならなくなった事です。鹿島が前からボールを奪おうとして出ていったことが、前線の5人が最終ラインへ帰陣する遅れを生んでしまいました。福田に対するマークのずれもさることながら、田川がノープレッシャーでクロスをあげることが出来たことは鹿島としての対応のミスでしょう。そのミスをついて、ビルドアップから前進・フィニッシュまで福田がすべてのプレーに絡んだ素晴らしいゴールでした。




鹿島としても、決してチャンスがなかったわけでもなく、レアンドロのドリブルによるチャンスメイクや、金崎が吉田の裏のスペースをついた動きなどで、幾度となく起点を作っていました。特にサイドバックへの裏を狙った攻撃に関しては、速攻によるチャンスメイクもさることながら、ビルドアップによって吉田を引き付けた裏を狙う攻撃もできておりました。左サイドへのカバーリングを行うためチョンスンヒョンが引っ張り出されていたケースが何度かあり、金崎にマッチアップさせてからのクロスと言う形作りは、鹿島として狙い通りだったのでしょう。
鳥栖の守備は、センターバックが引き出されたときのつるべの動きが整理されており、セントラルハーフ(義希や福田)のディフェンスラインへのリトリートによるカバーリング、サイドバック(吉田・小林)の絞りによるセンターバック化というタスクをしっかりとこなしていました。小林のゴール前のクロスに対するクリアは非常によく目立ちますよね。無論、チョンスンヒョンの金崎への対応も良かったです。崩されかけながらも、決定的なピンチを迎えることなく、失点を喫するまでには至りませんでした。


アグレッシブでかつリスクを最小限に抑えた効率的な戦いで連勝中の首位から勝ち星を挙げたのは、チームにとっても好影響を与えるでしょう。特に、報道では、マッシモさんの契約延長が決まったということで、これからの戦いは決して消化試合ではなく、来年も見据えた戦いにもなります。今シーズン残り試合、ひとつでも上の順位を目指し、少しでもチームのレベルを高めて欲しいと思います。
<画像引用元:DAZN>
Posted by オオタニ at
18:30
│Match Impression (2017)