2016年09月29日
サガン鳥栖の今シーズンのトラッキングデータ
今シーズンのサガン鳥栖におけるセカンドステージ13節(大宮戦)までのトラッキングデータを一覧化しました。試合の中での走行距離の上位3名までを表にしております。また、チームの走行距離と得点・失点の散布図と決定係数をExcelで表示してみました。



以下、分析とまでには至らないので、感想・推察程度な感じで読んでみてください。
開幕してからの序盤は、走行距離のトップ3に、鎌田、キムミヌ、チェソングンの名前が目立ちますが、その他のメンバーは日替わりのようにいろいろなプレイヤーが名を連ねております。まだスタメンも固定されず、また、試合の中での役割も明確に定まっておらず、本来走るべき選手が走らなかったり、走らなくてもよい選手が走ったりして「無駄な疲労」や「ポジションミス」などが発生していた時期と考えられます。
ファーストステージも中盤以降になってくると、走行距離のトップに登場してくる選手が、段々と固定化されていきます。マッシモさんの選手交代が少ないというのもありますが、選手の役割分担が明確になってきており、現在我々が目の当たりにしている、中盤の選手の走力によってゲームをコントロールする試合に段々と近づいてきている状態ではないかと推察されます。
そして、この頃から現在に至るまで、継続して義希が走行距離のトップに君臨しております。義希のカバーリング能力が段々と力を発揮して来た頃です。いつも、このBlogでは、4-3-1-2の“1”のポジションに入る鎌田を代表して鎌田システムと言っていますが、実は鳥栖の組織は義希システムなのかもしれません。
セカンドステージに入ってからは、走行距離上位に早坂、福田の名前が登場し、上位が、義希、早坂、福田、キムミヌで固定されてきます。(特にキムミヌはシーズンを通して上位に名を連ねています。)サガン鳥栖の得点能力が向上したのもこの頃からであり、(1試合当たりの平均得点:1stStage 0.59 ⇒ 2ndStage 1.38)彼らの台頭により前線からボールを奪える組織が構築でき、また、中盤が汗かき役として攻守に貢献することによって、フォワードやディフェンスの選手が、余分なランニングをすることなく一番肝心な場面で力を発揮できるようになったのかもしれません。
キムミンヒョクが走行距離の上位に名を連ねた時は、必ず失点しております。また、4試合中3試合が負けゲームです。(勝った1試合も大逆転したFC東京戦)キムミンヒョク(センターバック)が走らざるを得ない状況というのは、チームにとってうまくいっていない状況なのかもしれません。
サガン鳥栖は、湘南相手以外の全試合で、相手よりも走行距離が上回っています。サガン鳥栖がハードワークのチームということが、数字で証明されています。
散布図から見ると、走行距離と得点数、走行距離と失点数には相関はほとんどありません。前述の湘南が鳥栖よりも走るチームですが、今シーズン成績でもわかるように、良く走るから勝てるというわけでもなさそうです。必要な時に必要なランニング(スプリント)を効率よく遂行できる方が大事だと考えられます。



以下、分析とまでには至らないので、感想・推察程度な感じで読んでみてください。
開幕してからの序盤は、走行距離のトップ3に、鎌田、キムミヌ、チェソングンの名前が目立ちますが、その他のメンバーは日替わりのようにいろいろなプレイヤーが名を連ねております。まだスタメンも固定されず、また、試合の中での役割も明確に定まっておらず、本来走るべき選手が走らなかったり、走らなくてもよい選手が走ったりして「無駄な疲労」や「ポジションミス」などが発生していた時期と考えられます。
ファーストステージも中盤以降になってくると、走行距離のトップに登場してくる選手が、段々と固定化されていきます。マッシモさんの選手交代が少ないというのもありますが、選手の役割分担が明確になってきており、現在我々が目の当たりにしている、中盤の選手の走力によってゲームをコントロールする試合に段々と近づいてきている状態ではないかと推察されます。
そして、この頃から現在に至るまで、継続して義希が走行距離のトップに君臨しております。義希のカバーリング能力が段々と力を発揮して来た頃です。いつも、このBlogでは、4-3-1-2の“1”のポジションに入る鎌田を代表して鎌田システムと言っていますが、実は鳥栖の組織は義希システムなのかもしれません。
セカンドステージに入ってからは、走行距離上位に早坂、福田の名前が登場し、上位が、義希、早坂、福田、キムミヌで固定されてきます。(特にキムミヌはシーズンを通して上位に名を連ねています。)サガン鳥栖の得点能力が向上したのもこの頃からであり、(1試合当たりの平均得点:1stStage 0.59 ⇒ 2ndStage 1.38)彼らの台頭により前線からボールを奪える組織が構築でき、また、中盤が汗かき役として攻守に貢献することによって、フォワードやディフェンスの選手が、余分なランニングをすることなく一番肝心な場面で力を発揮できるようになったのかもしれません。
キムミンヒョクが走行距離の上位に名を連ねた時は、必ず失点しております。また、4試合中3試合が負けゲームです。(勝った1試合も大逆転したFC東京戦)キムミンヒョク(センターバック)が走らざるを得ない状況というのは、チームにとってうまくいっていない状況なのかもしれません。
サガン鳥栖は、湘南相手以外の全試合で、相手よりも走行距離が上回っています。サガン鳥栖がハードワークのチームということが、数字で証明されています。
散布図から見ると、走行距離と得点数、走行距離と失点数には相関はほとんどありません。前述の湘南が鳥栖よりも走るチームですが、今シーズン成績でもわかるように、良く走るから勝てるというわけでもなさそうです。必要な時に必要なランニング(スプリント)を効率よく遂行できる方が大事だと考えられます。
Posted by オオタニ at
17:51
│SAgAN Diary
2016年09月27日
2016 2ND 13節:大宮アルディージャ VS サガン鳥栖
天皇杯から中2日でしかもアウェーの地での対戦となった大宮戦ですが、エース不在というピンチな状況の中、選手全員のハードワークによって最後まで足が止まることなく走り切り、守備に軸を置いた戦いでしっかりと勝ち点1を獲得しました。この結果により、今シーズンの年間総合順位の15位以上が確定し、来シーズンもトップリーグで戦えることとなりました。ファーストステージで思うように勝ち点が稼げなかった状況から考えると、J1残留という最低限の結果を残せたことは、マッシモサガンの1年目としては合格ラインでしょう。
■ 試合の流れ
鳥栖は出場停止であるマッシモ、豊田、ムスに変わって、ブルーノ、富山、早坂がはいります。セットアップとしては4-4-2(&ベンチ穏やか)が基軸ですが、チーム全体が攻撃よりも守備に意識を置いていたこともあり、相手の選手のポジショニングに応じて、4-1-3-2、5-4-1、6-3-1など、流動的に対応していました。
大宮も、前節の川崎戦から河本、横谷が出場停止というのもあり、スタメンを3人入れ替えて鳥栖戦に臨みましたが、セットアップとしては4-4-2でいつもと変わらず。ただし、試合の中で家長が巧みにポジショニングを変更することにより、鳥栖の守備の抜け穴づくりを模索しておりました。
PKで幸先よく得点を取ったサガン鳥栖としては、前半はほぼ完ぺきと言っていいような内容で、崩されるような危険なシーンもほぼありませんでしたし、逆に、相手のミスに乗じて得点できそうなシーンを何度も作ることができました。
しかしながら、大宮が後半に入って攻めの圧力をかけてくると、泉澤をキープレイヤーとして左サイド(鳥栖の右サイド)からの崩しをしかけ、鳥栖は何度かピンチはしのいだもののコーナーキックから同点弾を浴びてしまいました。その後も大宮の攻勢でしたが、前線の選手たちも含めたハードワークでそれ以上の失点を防ぐことに成功し、勝ち点1を得ることができました。
失点を1に抑えることはできたのですが、後半はかなり耐える展開となり、前線も守備に入らざるをえない状況に加えて、豊田、ムス(後半途中から鎌田)がいない時の攻撃の迫力という点では物足りない試合運びでした。
■ キープレイヤー泉澤のポジショニング
大宮は前半、ボール運びに苦労していました。相手の動きに合わせて鳥栖が守備陣形を変えておりまして、コンパクトなポジショニングでしっかりとスペースをつぶしていました。このような守備が出来るのは、富山、早坂の守備の貢献があるからでして、特に早坂のカバーリングは中盤のスペースをうまく埋めることに貢献していました。
前半40分のカウンターのピンチでは、早坂がボランチのスペースを埋めて大宮の攻撃に対応するという、フォワードとしては十分すぎるくらいの守備への貢献を見せていたのですが、その反面、早坂が守勢に回るということは、攻撃へ加担するスピードが遅れるということにも繋がり、そう考えると、PK以外の得点ができずの引き分けは妥当な結果なのかとも言えます。
大宮も手をこまねいてばかりではなく、フォワードとサイドハーフのポジションチェンジをしたり、サイドハーフのポジションを中央に絞らせたり、ボランチが前線に飛び出したりと、鳥栖の守備のギャップを作ろうという動きは見せていました。しかしながら、前半に至っては、ギャップを作ろうとする動きが、鳥栖の守備の範囲内で行われていたので、多少、スペースが空くことはあっても、そこにボールが出されたときの対応が、鳥栖としては「間に合う」範囲でありました。よって、深くえぐられたり、フリーでシュートを放てる状況を迎えたりということはなく、非常に安定した戦いのまま前半を終えることができました。
また、鳥栖の守備が「間に合う」範囲の中で大宮の選手たちが動いているということは、鳥栖がボールを奪いに行く機会もそれなりにありますので、プレスをかけることによって、大宮のミスを誘発しておりました。そのミスに乗じて前半に何回かチャンスがあったのですが、ここがストライカー不在というこの試合の画竜点睛を欠いた部分でありまして、決定力を持った選手がピッチ上にいなかったのが最後まで響きました。


後半に入ってからは大宮の動きが一変します。前半の終了間際から家長と江坂のポジションを入れ替え、起点を浅い位置で作る形を模索し、それに加えて、右サイドでゲームを作るときにボールサイドに寄って中央での引込を狙っていた泉澤のポジションを、後半からは逆サイドのスペースに残したままにします。
これにより、大宮は鳥栖の守備の範囲内で行われていたパス交換を鳥栖の守備の範囲外へ展開する攻撃にシフトし、右サイドで細かくつないで鳥栖の選手を寄せたところに、大きく左サイドの泉澤に展開というひとつの攻撃のパターンが生まれます。家長からの展開が多かったのですが、センターバックから泉澤へのパスが通るようになったのも、大宮として攻撃の構築が非常に楽になりました。
鳥栖の守備のスライドも決して遅かったわけではなく、泉澤へのボールの動きに合わせて全体がしっかりとスライドすることはできていました。ただし、後半の最初の方は、その攻撃への対処方法が選手間で明確に定められておらず、サイドチェンジした際に藤田と泉澤が直接マッチアップで対峙する場面を作られてしまい、迂闊に飛び込むこともできないままずるずると下げられて、深い所からクロスを上げられるシーンが続きました。

その動きから与えてしまったコーナーキックで失点してしまいましたが、鳥栖の方も修正をしてきまして、泉澤がサイドにいる時に、フォワードが中盤に下がり、サイドハーフが最終ラインに下がることにより、泉澤が使えるスペースをつぶす対応を行っていました。大宮の攻撃がサイドチェンジありきとなりつつあったので、藤田のポジションを少しワイドにずらすという選択肢もありましたが、鳥栖はセンターバックとサイドバックのスペースを空けるというリスクを取らず、サイドハーフを下げるという選択を行いました。この対応は、守備を考えると非常に有効でありましたが、攻撃に割く人数を減らすことにも繋がり、前半に比べると、攻撃の迫力は半減してしまいました。

試合終了間際に皮肉なシーンがありまして、藤田がフリーでボールを持っていたのですが、中央にくさびを入れてしまってボールを奪われる結果となり、守備網の中でボールを回そうとして機能しなかった大宮の前半のような攻撃を、今度は逆に鳥栖が実践してしまう形となりました。
ゴール前でくさびを受ける相手が、個人で打開できるムスやゴール前で威力を発揮する豊田ならばこのパスは有効であったかもしれませんが、この試合で起用されている選手やこの試合のトレンドで考えると、大宮の守備網の範囲外(逆サイド)で待っている吉田への展開の方がおもしろかったかなとは思います。おそらく、家長であったならば大きくサイドに展開していたでしょう。

試合終了間際にここのところ好調であるマテウスが出てきまして、鳥栖にとっては彼が一つの脅威でもあったのですが、出場した時間帯が遅かったので、彼も焦りから個人突破を試みるプレイに終始してしまい、懸念していた大宮の選手交代による更なる圧力は、清水がひとつ見せ場を作ったくらいで、失点することなくゲームセットとなりました。
この試合、大宮の攻撃に対する工夫を、鳥栖の選手たちが前線の選手も含めたポジショニングで対処するという、ちょっとした知恵比べの様相をみせたおもしろい戦いでありました。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
■ 試合の流れ
鳥栖は出場停止であるマッシモ、豊田、ムスに変わって、ブルーノ、富山、早坂がはいります。セットアップとしては4-4-2(&ベンチ穏やか)が基軸ですが、チーム全体が攻撃よりも守備に意識を置いていたこともあり、相手の選手のポジショニングに応じて、4-1-3-2、5-4-1、6-3-1など、流動的に対応していました。
大宮も、前節の川崎戦から河本、横谷が出場停止というのもあり、スタメンを3人入れ替えて鳥栖戦に臨みましたが、セットアップとしては4-4-2でいつもと変わらず。ただし、試合の中で家長が巧みにポジショニングを変更することにより、鳥栖の守備の抜け穴づくりを模索しておりました。
PKで幸先よく得点を取ったサガン鳥栖としては、前半はほぼ完ぺきと言っていいような内容で、崩されるような危険なシーンもほぼありませんでしたし、逆に、相手のミスに乗じて得点できそうなシーンを何度も作ることができました。
しかしながら、大宮が後半に入って攻めの圧力をかけてくると、泉澤をキープレイヤーとして左サイド(鳥栖の右サイド)からの崩しをしかけ、鳥栖は何度かピンチはしのいだもののコーナーキックから同点弾を浴びてしまいました。その後も大宮の攻勢でしたが、前線の選手たちも含めたハードワークでそれ以上の失点を防ぐことに成功し、勝ち点1を得ることができました。
失点を1に抑えることはできたのですが、後半はかなり耐える展開となり、前線も守備に入らざるをえない状況に加えて、豊田、ムス(後半途中から鎌田)がいない時の攻撃の迫力という点では物足りない試合運びでした。
■ キープレイヤー泉澤のポジショニング
大宮は前半、ボール運びに苦労していました。相手の動きに合わせて鳥栖が守備陣形を変えておりまして、コンパクトなポジショニングでしっかりとスペースをつぶしていました。このような守備が出来るのは、富山、早坂の守備の貢献があるからでして、特に早坂のカバーリングは中盤のスペースをうまく埋めることに貢献していました。
前半40分のカウンターのピンチでは、早坂がボランチのスペースを埋めて大宮の攻撃に対応するという、フォワードとしては十分すぎるくらいの守備への貢献を見せていたのですが、その反面、早坂が守勢に回るということは、攻撃へ加担するスピードが遅れるということにも繋がり、そう考えると、PK以外の得点ができずの引き分けは妥当な結果なのかとも言えます。
大宮も手をこまねいてばかりではなく、フォワードとサイドハーフのポジションチェンジをしたり、サイドハーフのポジションを中央に絞らせたり、ボランチが前線に飛び出したりと、鳥栖の守備のギャップを作ろうという動きは見せていました。しかしながら、前半に至っては、ギャップを作ろうとする動きが、鳥栖の守備の範囲内で行われていたので、多少、スペースが空くことはあっても、そこにボールが出されたときの対応が、鳥栖としては「間に合う」範囲でありました。よって、深くえぐられたり、フリーでシュートを放てる状況を迎えたりということはなく、非常に安定した戦いのまま前半を終えることができました。
また、鳥栖の守備が「間に合う」範囲の中で大宮の選手たちが動いているということは、鳥栖がボールを奪いに行く機会もそれなりにありますので、プレスをかけることによって、大宮のミスを誘発しておりました。そのミスに乗じて前半に何回かチャンスがあったのですが、ここがストライカー不在というこの試合の画竜点睛を欠いた部分でありまして、決定力を持った選手がピッチ上にいなかったのが最後まで響きました。


後半に入ってからは大宮の動きが一変します。前半の終了間際から家長と江坂のポジションを入れ替え、起点を浅い位置で作る形を模索し、それに加えて、右サイドでゲームを作るときにボールサイドに寄って中央での引込を狙っていた泉澤のポジションを、後半からは逆サイドのスペースに残したままにします。
これにより、大宮は鳥栖の守備の範囲内で行われていたパス交換を鳥栖の守備の範囲外へ展開する攻撃にシフトし、右サイドで細かくつないで鳥栖の選手を寄せたところに、大きく左サイドの泉澤に展開というひとつの攻撃のパターンが生まれます。家長からの展開が多かったのですが、センターバックから泉澤へのパスが通るようになったのも、大宮として攻撃の構築が非常に楽になりました。
鳥栖の守備のスライドも決して遅かったわけではなく、泉澤へのボールの動きに合わせて全体がしっかりとスライドすることはできていました。ただし、後半の最初の方は、その攻撃への対処方法が選手間で明確に定められておらず、サイドチェンジした際に藤田と泉澤が直接マッチアップで対峙する場面を作られてしまい、迂闊に飛び込むこともできないままずるずると下げられて、深い所からクロスを上げられるシーンが続きました。

その動きから与えてしまったコーナーキックで失点してしまいましたが、鳥栖の方も修正をしてきまして、泉澤がサイドにいる時に、フォワードが中盤に下がり、サイドハーフが最終ラインに下がることにより、泉澤が使えるスペースをつぶす対応を行っていました。大宮の攻撃がサイドチェンジありきとなりつつあったので、藤田のポジションを少しワイドにずらすという選択肢もありましたが、鳥栖はセンターバックとサイドバックのスペースを空けるというリスクを取らず、サイドハーフを下げるという選択を行いました。この対応は、守備を考えると非常に有効でありましたが、攻撃に割く人数を減らすことにも繋がり、前半に比べると、攻撃の迫力は半減してしまいました。

試合終了間際に皮肉なシーンがありまして、藤田がフリーでボールを持っていたのですが、中央にくさびを入れてしまってボールを奪われる結果となり、守備網の中でボールを回そうとして機能しなかった大宮の前半のような攻撃を、今度は逆に鳥栖が実践してしまう形となりました。
ゴール前でくさびを受ける相手が、個人で打開できるムスやゴール前で威力を発揮する豊田ならばこのパスは有効であったかもしれませんが、この試合で起用されている選手やこの試合のトレンドで考えると、大宮の守備網の範囲外(逆サイド)で待っている吉田への展開の方がおもしろかったかなとは思います。おそらく、家長であったならば大きくサイドに展開していたでしょう。

試合終了間際にここのところ好調であるマテウスが出てきまして、鳥栖にとっては彼が一つの脅威でもあったのですが、出場した時間帯が遅かったので、彼も焦りから個人突破を試みるプレイに終始してしまい、懸念していた大宮の選手交代による更なる圧力は、清水がひとつ見せ場を作ったくらいで、失点することなくゲームセットとなりました。
この試合、大宮の攻撃に対する工夫を、鳥栖の選手たちが前線の選手も含めたポジショニングで対処するという、ちょっとした知恵比べの様相をみせたおもしろい戦いでありました。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
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13:42
│Match Impression (2016)
2016年09月23日
2016 天皇杯 サガン鳥栖 VS セレッソ大阪
浦和、広島と優勝を争う強豪相手に連敗してしまったサガン鳥栖ですが、中4日で天皇杯の試合を迎えました。多少スタメンを変えてくるかとも思っていましたが、いつも通りの布陣でセレッソ大阪との戦いに挑みました。セレッソもJ1で戦う選手たちと遜色ないメンバーがスタメンに名を連ねていましたが、サガン鳥栖のトップリーグで戦っている経験が物を言い、サガン鳥栖が久しぶりの勝利を上げることができました。
■ スタメン
ツートップの豊田とムスは次節の大宮戦が出場停止であったため、スタメンで使ってくるだろうとは思っていましたが、中盤の鎌田、福田、義希、ミヌも同様に使ってきたのは、セレッソに対する警戒感あってのことでしょう。裏を返せば、彼らの替わりを安心して任せられる選手がいないということにもなりますが。その結果、サガン鳥栖はいつもの鎌田フォーメーションによる通常スタメンで臨むことになりました。
セレッソ大阪は、前の試合から酒本、玉田などを外して天皇杯に臨みました。リーグの方で熾烈な2位争いを行っていますので、少しターンオーバーしてきた感じです。攻撃時は、ワイドの2名のポジション取りが鳥栖に合わせて高かったり低かったりしたことがありましたが、おそらくセットアップとしては、3-4-2-1で、守備時にはワイドの2名が下がってくる形でした。前半は、セレッソとしては守備に比重を置いていた模様で、長いボールを使って前で上手くキープできたならば人数を厚くして攻めるという形でして、主導権を握ろうと前に出てくるというよりは、まずは失点を抑える事を優先し、後半で勝負するという姿勢が見えました。
■ 試合雑感
私は、J1とJ2の違いの中の一つの要素としては、スピードの差(強弱のつけ方)だと考えています。展開(動き)の速さ、判断の速さ、ボールの速さ、そしてそれらのスピードの緩急のつけ方がJ1よりも下のカテゴリの試合を見た時にいつも感じる事です。
サガン鳥栖は、中盤の3人がいつも通り非常に運動量が豊富でして、最終ラインに引いてボールを受けたかと思うと、裏へのスペースを狙って飛び出すなど、セレッソのマーキングミスを誘発するのに貢献していました。中盤の選手や鎌田がポジションを上下させて動いたところに、セレッソのマーカーの受け渡しが遅れており、その空いたスペースにムスと豊田が入り込んでボールを受け、そして中央で捌くという、鳥栖ではあまり見られないような攻撃が見られたのは、非常に楽しかったです。
本来ならば、山口蛍が危険を察知してボールの出所に対して早めにつぶす役目なのでしょうが、思いのほかそこが間に合ってなかったところを見ると、サガン鳥栖メンバーのプレースピードが彼の想像より上回っていたのでしょう。ボールタッチも含め、サガン鳥栖の方がスピード(スピードコントロール)に長けていたため、終始安定した試合運びができました。
鎌田が浦和戦、広島戦に比べると中盤の位置までポジションを下げて中盤のスペースを埋めるのに貢献し、前線の3人が前残りしてトランジションで守備が手薄になってしまうという状況に陥るのを防いでいたため、中盤の3人が安心して裏のスペースに飛び出せたというのも、思い切った攻撃に繋がりました。
また、ムスがこの試合ではよく攻撃の起点となっていましたし(特に、右サイドの裏へ流れる動きはよかった)、また、セレッソに押し込まれているときにボールを奪った時の預けどころとしても機能していました。そこは、個人の力がなせる利点でありまして、チームとして預けどころがあるというのは大きな武器になるのを改めて感じました。相手がJ2であったというのも差し引いても、裏へのパスやドリブルによるチャレンジはじわじわとセレッソのラインを下げるのに効果があったと感じます。
ただ、ボールを保持して中盤にいる時は上手に味方を使うようなパスも出せますし、スペースを狙ったサイドチェンジのボールを蹴れたりも出来るのですが、惜しむらくは、ゴール近くに入った時の選択ミスがあり、得点に絡めなかったことです。ドリブル突破のチャレンジ精神は買いますし、ゴールが欲しいという気持ちもわかりますが、チームとして俯瞰した形で見るともったいないなというシーンも多々ありました。
守備に関してよかったのは、ボールを奪われたり、ミスでロストした時に、すぐに次の準備をして、高い位置で取り返す動きを、チーム全体が意識できていた事です。前半は、セレッソがトランジション時の鳥栖の寄せのスピードについていけなかったところもありまして、鳥栖が高い位置でボールを奪ってからの攻撃を見せていましたが、それだけに、PKの1点だけで終わってしまったのは、いささかもったいないところではありました。
後半に入ると、当初の予定通りだったと思いますが、セレッソが攻撃に力のある杉本、ソウザ、酒本を投入してきます。ソウザは、前線で起点となって、セレッソの押し上げにかなり寄与しており、彼へのマークが集中するので、山口蛍が比較的ボールをさばきやすいポジションを取ることにも貢献しておりました。ただ、動きの中でリカルドサントスと重複するところがあったのは気になったところで、ボールをもらいたがる人間が多く、もっともっと裏へのスペースに飛び出すプレイヤーがいたら得点につながっていたのかもしれません。
また、目についたのは酒本の動きで、前半はなかなかサイドからのクロスが上がらなかったのですが、後半になると、山口蛍が左右に展開する攻撃ができるようになり、上手くサイドに抜け出した酒本がいい状態でボールを受ける形が前半よりもできておりました。
その酒本のクロスボール自体も脅威でありましたが、クロスのセカンドボールをセレッソが拾える回数が増えてきまして、リトリートしている鳥栖の動きを見逃さずに、ミドルレンジからのシュートを放つ回数がかなり増えました(杉本のポストに当たったシュートは完全にやられたと思いました。)
ただ、鳥栖もしっかりと「守るモード」にスイッチを切り替えておりまして、中盤、最終ラインがリトリートして、必死に跳ね返しておりました。抑え込まれる時間帯であっても、早坂、富山の守備への貢献に加えて、ミヌなどのカウンター時の飛び出しもセレッソの攻撃を一度リセットさせることができておりました。チーム全体が守るだけでなくカウンター攻撃と言う意識を忘れておらず、2点目は、義希がフォワードを追い越して起点となって、富山がフリーになる状態を作り出しました。
後半はやや苦労したものの、しっかりと勝利を手に入れたのは、連敗中のチームにまた自信を蘇らせることに繋がるでしょう。中盤の3人の疲労の蓄積が気になるところですが、シーズンも残りあとわずかであり、暑さも和らいでくることですし、何とか運動量を保ったまま、残りの試合を戦って欲しいと思います。
■ スタメン
ツートップの豊田とムスは次節の大宮戦が出場停止であったため、スタメンで使ってくるだろうとは思っていましたが、中盤の鎌田、福田、義希、ミヌも同様に使ってきたのは、セレッソに対する警戒感あってのことでしょう。裏を返せば、彼らの替わりを安心して任せられる選手がいないということにもなりますが。その結果、サガン鳥栖はいつもの鎌田フォーメーションによる通常スタメンで臨むことになりました。
セレッソ大阪は、前の試合から酒本、玉田などを外して天皇杯に臨みました。リーグの方で熾烈な2位争いを行っていますので、少しターンオーバーしてきた感じです。攻撃時は、ワイドの2名のポジション取りが鳥栖に合わせて高かったり低かったりしたことがありましたが、おそらくセットアップとしては、3-4-2-1で、守備時にはワイドの2名が下がってくる形でした。前半は、セレッソとしては守備に比重を置いていた模様で、長いボールを使って前で上手くキープできたならば人数を厚くして攻めるという形でして、主導権を握ろうと前に出てくるというよりは、まずは失点を抑える事を優先し、後半で勝負するという姿勢が見えました。
■ 試合雑感
私は、J1とJ2の違いの中の一つの要素としては、スピードの差(強弱のつけ方)だと考えています。展開(動き)の速さ、判断の速さ、ボールの速さ、そしてそれらのスピードの緩急のつけ方がJ1よりも下のカテゴリの試合を見た時にいつも感じる事です。
サガン鳥栖は、中盤の3人がいつも通り非常に運動量が豊富でして、最終ラインに引いてボールを受けたかと思うと、裏へのスペースを狙って飛び出すなど、セレッソのマーキングミスを誘発するのに貢献していました。中盤の選手や鎌田がポジションを上下させて動いたところに、セレッソのマーカーの受け渡しが遅れており、その空いたスペースにムスと豊田が入り込んでボールを受け、そして中央で捌くという、鳥栖ではあまり見られないような攻撃が見られたのは、非常に楽しかったです。
本来ならば、山口蛍が危険を察知してボールの出所に対して早めにつぶす役目なのでしょうが、思いのほかそこが間に合ってなかったところを見ると、サガン鳥栖メンバーのプレースピードが彼の想像より上回っていたのでしょう。ボールタッチも含め、サガン鳥栖の方がスピード(スピードコントロール)に長けていたため、終始安定した試合運びができました。
鎌田が浦和戦、広島戦に比べると中盤の位置までポジションを下げて中盤のスペースを埋めるのに貢献し、前線の3人が前残りしてトランジションで守備が手薄になってしまうという状況に陥るのを防いでいたため、中盤の3人が安心して裏のスペースに飛び出せたというのも、思い切った攻撃に繋がりました。
また、ムスがこの試合ではよく攻撃の起点となっていましたし(特に、右サイドの裏へ流れる動きはよかった)、また、セレッソに押し込まれているときにボールを奪った時の預けどころとしても機能していました。そこは、個人の力がなせる利点でありまして、チームとして預けどころがあるというのは大きな武器になるのを改めて感じました。相手がJ2であったというのも差し引いても、裏へのパスやドリブルによるチャレンジはじわじわとセレッソのラインを下げるのに効果があったと感じます。
ただ、ボールを保持して中盤にいる時は上手に味方を使うようなパスも出せますし、スペースを狙ったサイドチェンジのボールを蹴れたりも出来るのですが、惜しむらくは、ゴール近くに入った時の選択ミスがあり、得点に絡めなかったことです。ドリブル突破のチャレンジ精神は買いますし、ゴールが欲しいという気持ちもわかりますが、チームとして俯瞰した形で見るともったいないなというシーンも多々ありました。
守備に関してよかったのは、ボールを奪われたり、ミスでロストした時に、すぐに次の準備をして、高い位置で取り返す動きを、チーム全体が意識できていた事です。前半は、セレッソがトランジション時の鳥栖の寄せのスピードについていけなかったところもありまして、鳥栖が高い位置でボールを奪ってからの攻撃を見せていましたが、それだけに、PKの1点だけで終わってしまったのは、いささかもったいないところではありました。
後半に入ると、当初の予定通りだったと思いますが、セレッソが攻撃に力のある杉本、ソウザ、酒本を投入してきます。ソウザは、前線で起点となって、セレッソの押し上げにかなり寄与しており、彼へのマークが集中するので、山口蛍が比較的ボールをさばきやすいポジションを取ることにも貢献しておりました。ただ、動きの中でリカルドサントスと重複するところがあったのは気になったところで、ボールをもらいたがる人間が多く、もっともっと裏へのスペースに飛び出すプレイヤーがいたら得点につながっていたのかもしれません。
また、目についたのは酒本の動きで、前半はなかなかサイドからのクロスが上がらなかったのですが、後半になると、山口蛍が左右に展開する攻撃ができるようになり、上手くサイドに抜け出した酒本がいい状態でボールを受ける形が前半よりもできておりました。
その酒本のクロスボール自体も脅威でありましたが、クロスのセカンドボールをセレッソが拾える回数が増えてきまして、リトリートしている鳥栖の動きを見逃さずに、ミドルレンジからのシュートを放つ回数がかなり増えました(杉本のポストに当たったシュートは完全にやられたと思いました。)
ただ、鳥栖もしっかりと「守るモード」にスイッチを切り替えておりまして、中盤、最終ラインがリトリートして、必死に跳ね返しておりました。抑え込まれる時間帯であっても、早坂、富山の守備への貢献に加えて、ミヌなどのカウンター時の飛び出しもセレッソの攻撃を一度リセットさせることができておりました。チーム全体が守るだけでなくカウンター攻撃と言う意識を忘れておらず、2点目は、義希がフォワードを追い越して起点となって、富山がフリーになる状態を作り出しました。
後半はやや苦労したものの、しっかりと勝利を手に入れたのは、連敗中のチームにまた自信を蘇らせることに繋がるでしょう。中盤の3人の疲労の蓄積が気になるところですが、シーズンも残りあとわずかであり、暑さも和らいでくることですし、何とか運動量を保ったまま、残りの試合を戦って欲しいと思います。
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18:32
│Match Impression (2016)
2016年09月21日
2016 2ND 12節:サガン鳥栖 VS サンフレッチェ広島
前節、浦和レッズに敗れたものの、選手・サポーター共にセカンドステージ優勝という目標を下方修正する気はさらさらなく、ホームでの広島撃破を選手もサポーターも信じて戦いに臨んだのですが、3失点を喫するという想像しなかった状況となってしまい、それでも絶体絶命のところから気迫の2ゴールで追いつきかけたのですが、あと一歩届かず、無念の連敗となってしまいました。
■ 試合の流れ
鳥栖は前節と同じスタメン。ムスがスタメンに入ってからは守備時におけるセットアップが4-3-1-2であったり、4-3-3であったりする流動的な守備体系ですが、早坂スタメンの時よりも機能性が向上しているとは言い難い状況です。
広島は、攻撃時には3-6-1でウタカをトップに、茶島と柴崎がセカンドトップ(シャドーストライカー)に入り、ワイドにミキッチと柏、ゲームは青山と丸谷が作ります。守備時には、両サイドを下げて5-4-1の構え。両ウイングは、鳥栖のサイドバックが侵入してきた際に積極的にマークにつく形を取り、中盤は、セカンドトップ・ボランチの4人でしっかりと固めていました。
しっかりとリトリートして構える広島に対して、鳥栖の攻撃は思いのほか機能していたように感じました。それは、繰り返し行われていた、下図の攻撃パターンに表れています。
最終ラインでボールを保持し、センターハーフのミヌと福田はボールを受けに下がらずに、中央で広島のマークを引き付けています。鳥栖は最終ラインでボールを回しながら、逆サイドに展開して鳥栖のサイドバック(藤田、吉田)と広島のウイングバック(ミキッチ・柏)が対峙する状況を作り出します。
ミキッチ・柏は、藤田・吉田を前進させまいとマークに入りますが、その裏のスペースにしっかりとミヌや福田が入って、サイドバックからのワンタッチでボールを受けることが出来ていました。
ミヌや福田がそのスペースに入れない時は、鎌田やムスがそのスペースを狙っており、ウイングバックが空けたスペースを狙うという形が鳥栖の選手たちの共通意識の下で行われていました。
豊田が、あまりサイドのスペースに流れてこなかったことを考えると、豊田はやはりゴールゲッターであるというチームの方針があってこそのことでしょう。ただ、それにしては、この試合の豊田のシュートが遠い位置からのミドルシュートしか印象がないのは、やや残念な感じです。




このようにサイドのエリア深くまでボールを運ぶのは組織としての崩しであり、この試合ではうまく機能していたところなのですが、最後のゴール前へのラストパスやシュートに関しては、個人の力によるところが大きくなります。
広島は、もちろん深く入ってきた相手を自由にさせませんから、そのスペースまでボールを運ばれたとしても、中央はしっかりとセンターバックが構えていますし、ボランチが下りてきて(もしくはセンターバックがカバーリングに入って)サイドでボールを持った鳥栖の選手には自由を与えないカバーリングも行います。そこで、どれだけのクロスを上げることができるか、どれだけのシュートを放てるかというところが、ゴールに繋がるか否かというポイントです。
鎌田がゴール前にドリブルで入ってきたり、ムスが早いクロスをニアに送ったり、福田やミヌが切り返してクロスを上げたりしていますが、カットされたり、ブロックされたりして、惜しくもゴールに繋がらなかったのは、広島の個々の能力の強いところでありました。
後半、鳥栖がウイングバックの裏のスペースを利用する機会が減少したのは、ハーフタイムにミキッチと柏の裏のスペースにボールが入った際の対処の指示(もしくは選手間の議論)があったのではないかと想定します。前半に使えていたスペースに対して、広島のセンターバックが早めにカバーリングに来ていましたし、流れによっては、青山や丸谷がいち早く察知してスペースをつぶしにかかって来ていました。
3点差がついたことによって、広島もやや引き気味になったところに、鳥栖がフレッシュな早坂、富山を入れて前線の動きを活発化させ、高い位置からの追い込みに伴って、最終ラインの谷口、ミンヒョクも高い位置にポジショニング取ることによって、セカンドボールも拾えるようになり、この押せ押せムードの中で、セットプレイやミンヒョク&ミヌのビッグプレイ(ミンヒョクの縦パスとミヌの囲まれていながらのシュート)によって2点返しますが、惜しくも反撃はここまででした。
1点差に追いついた後に、この勢いに乗じて同点まで行きたかったのですが、広島も押し返して連続でコーナーキックを与えてしまった時間帯があり、個人的には、ここで勢いがやや消失したのが痛かったかなと思います。
■ 豊田、鎌田、ムス、3人の関係
守備に関しては、早坂が入っている時に比べると、明らかに機能不全に陥っている状態です。前線に3人が並んでいる状態で、簡単に前線(第1列)が突破されてしまうのは、中盤、最終ラインに相応の負荷をかけることになります。特に、相手が中盤を厚くしてくるチームであれば、中盤の数的不利によってそのまま決定的なピンチを招く羽目になります。
鳥栖のプレスが機能して、中盤がボールをカットできるのも、前線が相手の動きに制約をかけるプレスをかけるからこそです。
ところが、この試合は、相手のどういったプレイを阻害したいのか(左(右)への展開を阻害したい、ボランチへのパスを阻害したい、前線へのロングボールを阻害したい・・・)、そして、そのために誰がどのスペースを埋める(どの選手につく)のか、そういったところの意思疎通が取れていないのを感じました。


無論、彼らが単純にさぼっているわけではなく、中盤の選手が不在の時は、自分たちが中盤に下がってカバーリングするなど、3人共に献身的な動きを見せることもあります。ただ、せっかくの動きが3人バラバラな意思の下で対応してしまうと、無駄なものに終わってしまうという事です。
流れの中のひとつの場面というのもありますが、図でもありますように、2人がセンターバックへのパスコースを阻害していますが、どちらのサイドを殺したいのか、そして、肝心なボール保持者に対してのアプローチは誰が行うのか、中央へのパスはどの程度ケアするのか、そして、大事な大事なドリブルで抜かれない意識、そのあたりの守備をもっとできるようになれば、ピンチの数は減ってくるはずです。
攻撃面に関しては、ムスが思いのほかゲームメイクのポテンシャルを見せています。彼は、ボールキープして起点となり、味方を使ったスルーパスをだし、また、ドリブル突破も仕掛けられますし、ゴール前での鋭い飛び出し(シュート)も見せてくれます。私は、彼の動きに対してすごく期待感がありまして、特に、前線でボールキープしてあのような相手の間隙を縫うようなパスが出せる選手は、鳥栖の外国人としてビスコンティ以来久しぶりに見たかもしれません。
ただし、それも、周りのメンバーとの意思の疎通があってからこそ生きる物であり、高さとシュート力のある豊田、キープ力と創造性のある鎌田をどのように生かすのか、また、ムス自身が彼らによってどう生かさせるのかというところで考えると、まだまだチームにフィットしきれていないのを感じます。
豊田、鎌田、ムス、3人とも非常に高い個人能力を保有しており、ベンチメンバーも含めて、鳥栖史上でも類を見ないほどの選手たちが前線にそろっています。3人の関係性(役割分担)に関して、日々のトレーニングの中で互いにコミュニケーションを取り、相互理解した上で攻撃を組み立てることができれば、ムスが加入したことによって、サガン鳥栖をもう一段上のレベルまで引き上げてくれると信じていますし、そのようになるために、攻撃の準備と守備への貢献のバランスに関してマッシモさんがうまく手綱を引いてくれることを期待しています。
■ 審判との関係について
この試合は、非常にメンタルコンディションが上下する状況でありまして、試合の展開もさることながら、開始当初から、主審や副審の判定に対する不信感が選手、スタッフ及びスタジアム全体に生じたことは確かです。ただ、至る所で検証されていますが、疑惑のシーンとされていた部分に関しては、判定通りであったかと思います。いずれにしても、審判技術向上のために、意見書を提出し、リーグの中で検証してもらうというのは、チームとしてとるべき対応でしょう。
ところで、試合中に監督や選手が審判に対して抗議することによるメリットは何が考えられるでしょうか。原則として判定は覆りませんし、度が過ぎると意義や遅延によってイエローカードの対象となりますし、抗議が認められないことによってフラストレーションがたまってメンタル面でも悪影響がでます。
判定の理由を問うたりするのは、審判とのコミュニケーション(ある意味審判のコントロール・釘さし)という意味でも必要かもしれませんが、必要以上にヒートアップして審判に敵意を持って接するのは得策ではありません。選手の鼓舞の為というのもやや詭弁に聞こえます。
主審は必ずしも百戦錬磨の担当割り当てが行われるわけではありません。今回のように、若い経験のない主審が割り当てられることもあり、そして、今回のようにマネジメントがうまくいかないようなケースが当然のごとくあり得ます。もちろん、納得の行かないジャッジに激高することもあるでしょう。ただ、そういう状況下において、如何にしてセルフコントロールして普段のポテンシャル通りの実力を発揮できる状況に自分たちの身を置くことが出来るかというのは、勝利へ向けて、技術、体力と共に必須条件であるようにも思われます。
本来ならば3点取られて失墜してしまう所でしょうが、最後まであきらめない気持ちで2点を取り返しました。それだけに、次節に指揮官、エース、期待の助っ人の3人がそろって試合に出場できない状況になってしまったのは、残念でなりません。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
■ 試合の流れ
鳥栖は前節と同じスタメン。ムスがスタメンに入ってからは守備時におけるセットアップが4-3-1-2であったり、4-3-3であったりする流動的な守備体系ですが、早坂スタメンの時よりも機能性が向上しているとは言い難い状況です。
広島は、攻撃時には3-6-1でウタカをトップに、茶島と柴崎がセカンドトップ(シャドーストライカー)に入り、ワイドにミキッチと柏、ゲームは青山と丸谷が作ります。守備時には、両サイドを下げて5-4-1の構え。両ウイングは、鳥栖のサイドバックが侵入してきた際に積極的にマークにつく形を取り、中盤は、セカンドトップ・ボランチの4人でしっかりと固めていました。
しっかりとリトリートして構える広島に対して、鳥栖の攻撃は思いのほか機能していたように感じました。それは、繰り返し行われていた、下図の攻撃パターンに表れています。
最終ラインでボールを保持し、センターハーフのミヌと福田はボールを受けに下がらずに、中央で広島のマークを引き付けています。鳥栖は最終ラインでボールを回しながら、逆サイドに展開して鳥栖のサイドバック(藤田、吉田)と広島のウイングバック(ミキッチ・柏)が対峙する状況を作り出します。
ミキッチ・柏は、藤田・吉田を前進させまいとマークに入りますが、その裏のスペースにしっかりとミヌや福田が入って、サイドバックからのワンタッチでボールを受けることが出来ていました。
ミヌや福田がそのスペースに入れない時は、鎌田やムスがそのスペースを狙っており、ウイングバックが空けたスペースを狙うという形が鳥栖の選手たちの共通意識の下で行われていました。
豊田が、あまりサイドのスペースに流れてこなかったことを考えると、豊田はやはりゴールゲッターであるというチームの方針があってこそのことでしょう。ただ、それにしては、この試合の豊田のシュートが遠い位置からのミドルシュートしか印象がないのは、やや残念な感じです。




このようにサイドのエリア深くまでボールを運ぶのは組織としての崩しであり、この試合ではうまく機能していたところなのですが、最後のゴール前へのラストパスやシュートに関しては、個人の力によるところが大きくなります。
広島は、もちろん深く入ってきた相手を自由にさせませんから、そのスペースまでボールを運ばれたとしても、中央はしっかりとセンターバックが構えていますし、ボランチが下りてきて(もしくはセンターバックがカバーリングに入って)サイドでボールを持った鳥栖の選手には自由を与えないカバーリングも行います。そこで、どれだけのクロスを上げることができるか、どれだけのシュートを放てるかというところが、ゴールに繋がるか否かというポイントです。
鎌田がゴール前にドリブルで入ってきたり、ムスが早いクロスをニアに送ったり、福田やミヌが切り返してクロスを上げたりしていますが、カットされたり、ブロックされたりして、惜しくもゴールに繋がらなかったのは、広島の個々の能力の強いところでありました。
後半、鳥栖がウイングバックの裏のスペースを利用する機会が減少したのは、ハーフタイムにミキッチと柏の裏のスペースにボールが入った際の対処の指示(もしくは選手間の議論)があったのではないかと想定します。前半に使えていたスペースに対して、広島のセンターバックが早めにカバーリングに来ていましたし、流れによっては、青山や丸谷がいち早く察知してスペースをつぶしにかかって来ていました。
3点差がついたことによって、広島もやや引き気味になったところに、鳥栖がフレッシュな早坂、富山を入れて前線の動きを活発化させ、高い位置からの追い込みに伴って、最終ラインの谷口、ミンヒョクも高い位置にポジショニング取ることによって、セカンドボールも拾えるようになり、この押せ押せムードの中で、セットプレイやミンヒョク&ミヌのビッグプレイ(ミンヒョクの縦パスとミヌの囲まれていながらのシュート)によって2点返しますが、惜しくも反撃はここまででした。
1点差に追いついた後に、この勢いに乗じて同点まで行きたかったのですが、広島も押し返して連続でコーナーキックを与えてしまった時間帯があり、個人的には、ここで勢いがやや消失したのが痛かったかなと思います。
■ 豊田、鎌田、ムス、3人の関係
守備に関しては、早坂が入っている時に比べると、明らかに機能不全に陥っている状態です。前線に3人が並んでいる状態で、簡単に前線(第1列)が突破されてしまうのは、中盤、最終ラインに相応の負荷をかけることになります。特に、相手が中盤を厚くしてくるチームであれば、中盤の数的不利によってそのまま決定的なピンチを招く羽目になります。
鳥栖のプレスが機能して、中盤がボールをカットできるのも、前線が相手の動きに制約をかけるプレスをかけるからこそです。
ところが、この試合は、相手のどういったプレイを阻害したいのか(左(右)への展開を阻害したい、ボランチへのパスを阻害したい、前線へのロングボールを阻害したい・・・)、そして、そのために誰がどのスペースを埋める(どの選手につく)のか、そういったところの意思疎通が取れていないのを感じました。


無論、彼らが単純にさぼっているわけではなく、中盤の選手が不在の時は、自分たちが中盤に下がってカバーリングするなど、3人共に献身的な動きを見せることもあります。ただ、せっかくの動きが3人バラバラな意思の下で対応してしまうと、無駄なものに終わってしまうという事です。
流れの中のひとつの場面というのもありますが、図でもありますように、2人がセンターバックへのパスコースを阻害していますが、どちらのサイドを殺したいのか、そして、肝心なボール保持者に対してのアプローチは誰が行うのか、中央へのパスはどの程度ケアするのか、そして、大事な大事なドリブルで抜かれない意識、そのあたりの守備をもっとできるようになれば、ピンチの数は減ってくるはずです。
攻撃面に関しては、ムスが思いのほかゲームメイクのポテンシャルを見せています。彼は、ボールキープして起点となり、味方を使ったスルーパスをだし、また、ドリブル突破も仕掛けられますし、ゴール前での鋭い飛び出し(シュート)も見せてくれます。私は、彼の動きに対してすごく期待感がありまして、特に、前線でボールキープしてあのような相手の間隙を縫うようなパスが出せる選手は、鳥栖の外国人としてビスコンティ以来久しぶりに見たかもしれません。
ただし、それも、周りのメンバーとの意思の疎通があってからこそ生きる物であり、高さとシュート力のある豊田、キープ力と創造性のある鎌田をどのように生かすのか、また、ムス自身が彼らによってどう生かさせるのかというところで考えると、まだまだチームにフィットしきれていないのを感じます。
豊田、鎌田、ムス、3人とも非常に高い個人能力を保有しており、ベンチメンバーも含めて、鳥栖史上でも類を見ないほどの選手たちが前線にそろっています。3人の関係性(役割分担)に関して、日々のトレーニングの中で互いにコミュニケーションを取り、相互理解した上で攻撃を組み立てることができれば、ムスが加入したことによって、サガン鳥栖をもう一段上のレベルまで引き上げてくれると信じていますし、そのようになるために、攻撃の準備と守備への貢献のバランスに関してマッシモさんがうまく手綱を引いてくれることを期待しています。
■ 審判との関係について
この試合は、非常にメンタルコンディションが上下する状況でありまして、試合の展開もさることながら、開始当初から、主審や副審の判定に対する不信感が選手、スタッフ及びスタジアム全体に生じたことは確かです。ただ、至る所で検証されていますが、疑惑のシーンとされていた部分に関しては、判定通りであったかと思います。いずれにしても、審判技術向上のために、意見書を提出し、リーグの中で検証してもらうというのは、チームとしてとるべき対応でしょう。
ところで、試合中に監督や選手が審判に対して抗議することによるメリットは何が考えられるでしょうか。原則として判定は覆りませんし、度が過ぎると意義や遅延によってイエローカードの対象となりますし、抗議が認められないことによってフラストレーションがたまってメンタル面でも悪影響がでます。
判定の理由を問うたりするのは、審判とのコミュニケーション(ある意味審判のコントロール・釘さし)という意味でも必要かもしれませんが、必要以上にヒートアップして審判に敵意を持って接するのは得策ではありません。選手の鼓舞の為というのもやや詭弁に聞こえます。
主審は必ずしも百戦錬磨の担当割り当てが行われるわけではありません。今回のように、若い経験のない主審が割り当てられることもあり、そして、今回のようにマネジメントがうまくいかないようなケースが当然のごとくあり得ます。もちろん、納得の行かないジャッジに激高することもあるでしょう。ただ、そういう状況下において、如何にしてセルフコントロールして普段のポテンシャル通りの実力を発揮できる状況に自分たちの身を置くことが出来るかというのは、勝利へ向けて、技術、体力と共に必須条件であるようにも思われます。
本来ならば3点取られて失墜してしまう所でしょうが、最後まであきらめない気持ちで2点を取り返しました。それだけに、次節に指揮官、エース、期待の助っ人の3人がそろって試合に出場できない状況になってしまったのは、残念でなりません。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
Posted by オオタニ at
19:22
│Match Impression (2016)
2016年09月14日
2016 2ND 11節:浦和レッズ VS サガン鳥栖
気が付けばセカンドステージも11節を迎え、優勝争いや残留争いの行方が気になる頃になりました。サガン鳥栖は2ステージ制という恩恵を受けてセカンドステージの優勝という文字が見え隠れし出した状況だったのですが、浦和レッズという高いハードルを越えることができずに残念ながら一歩後退となってしまいました。
■ 試合の流れ
序盤は、どちらがペースを握るということもなく、前線からのチェックで奪いたいところでボールを奪うような場面(特に西川からのフィードをカットできるような鋭い出足)もありましたし、ボールを保持してゴールを伺う機会もありましたし、持ち前のハードワークを前面に押し出して、一進一退と言っても過言ではない戦いを見せていました。
しかしながら、主導権を握って戦えていたかと言うと、そこまでには至らなかったのも事実でありまして、鳥栖が完全に主導権を握ることができなかったポイントは2つあると考えます。
1つは、浦和のトランジション(攻守の切り替え)です。トランジションのスピードが下位チームとは比べ物にならない程早く、鳥栖がボールを奪って攻撃を仕掛けようとしても浦和のフォアチェックや素早いリトリートによって、ボールを前方に展開できず気がつけば遅攻フェーズに入っていました。
本来は高い位置でボールを奪って素早い攻撃を見せたいところでしたが、ボールを奪ってからのスピードアップができず、気が付けばボールを持たされる展開になり、効果的なパスをだせないまま相手にボールを奪われてしまうことが何度となく発生しておりました。
もう1つは、豊田がロングボールに対して絶対的優位に立てなかったという点です。いつもは鳥栖側に分があるはずのロングボールに対して、浦和の屈強なセンターバックである、那須、槇野が立ちはだかり、豊田の独壇場となりませんでした。
長いボールに対するセカンドボールを拾って二次攻撃に繋げるどころか、逆に前半30分のシーンのように長いボールを跳ね返されて逆に浦和のカウンターの起点になるような事態も発生し、全体を押し上げるきっかけづくりとならず、ロングボールを効果的に利用する機会がいつも程はありませんでした。
前半終了間際の失点シーンに関しては後述しますが、後半は、2点差がついてしまったので、リスクを冒してまで得点を奪いにいかなくてもよい浦和と、リスクを冒してでも得点を取りにいかなければならなくなってしまった鳥栖との戦いという形になり、前がかりになった鳥栖のスペースを狙った浦和が幾度となくチャンスを作っていましたが、林の好プレーによってなんとか失点を免れました。
最後の谷口のヘッドが決まっていれば、負けながらも多少は報われる試合だっただけに、ちょっと惜しかったかなという気持ちはありますが、浦和のミスがほとんどなかった事を考えると、完敗と言ってもいいような試合でした。
■ 失点に至るまでの経緯
現地で試合を見ていないので、画面から入ってくる情報だけが頼りなのですが、時間帯による約束事なのか、相手(特に、関根、宇賀神)の動きに対するリアクションとしての約束事なのか、この試合の中で鳥栖がいつもとは異なる守備組織で構える何かしらのトリガーがあったことは確かです。
いつものようにフルタイムで前線からのプレッシャーに行くのではなくてセンターハーフを最終ラインに下げることが多く、2人のセンターハーフを最終ラインに下げて時折6バックのような形で最終ラインのスペースを消す守り方にシフトすることもありました。
最終ラインに人をそろえるということは、中盤の選手がいたスペースを空けるということであり、では、そのスペースを守るためにどうするかという解決策が必要となります。
序盤の内は、浦和の阿部・柏木のゲームメイクに対して、前線2人と中盤2人(豊田、ムス、鎌田、ミヌ)が、パスコース、ドリブルコースへの対処を行い、スペースを埋める動き、相手の突進を阻止する動きをいつも以上にハードに対応していました。
特にキムミヌと鎌田は上下の動きによって浦和の最終ラインにプレッシャーをかけたり、引いてスペースを守ったりと非常に多くの事を求められていました。(ちなみに、鎌田は(途中交代ではありますが)1分あたりで換算するとキムミヌよりも福田よりも走っています。)
浦和に深く押し込まれた場合は、豊田が1列下がって中盤のスペースを埋める役割を果たしていましたし、この頃は、鳥栖が最終ラインに人数をかけても、それを前線と中盤の選手がカバーリングできていて、浦和の選手が動くスペースをある程度抑制することができていました。



ただ、動きに少し陰りが見え始めたのが、前半35分頃です。序盤の内は、ボールの動き、人の動きについていく体力と気力があります。しかしながら、試合も進み体力が消耗してくると、メンタル面、フィジカル面、双方の疲れで足が動かなくなり、少しずつ地力の違いによるプレッシャーが鳥栖イレブンにのしかかってきます。そして、その一瞬の隙を逃さないのが、阿部であり、柏木でした。
この時間帯を迎え、阿部、柏木が鳥栖の前線のチェックを難なくはがすようになってきました。いつもだったら、前線がはがされても、鳥栖の中盤が二の矢と言わんばかりに襲い掛かってくるのですが、関根、宇賀神へのスペースを与えないために、義希、福田が最終ラインに近い所で構えているため、前線と最終ラインとの間に大きなスペースを生み出し、二の矢となるプレッシャーをかけることができませんでした。
また、柏木の位置取りが、この時間帯は最終ラインまで下がってきたことも、鳥栖の前線の付き方に迷いが生まれました。抑えるべきところがゲームメイクする阿部や柏木なのか、それとも彼らからパスが渡るであろう森脇、槇野、那須なのか、柏木のポジショニングのわずかな変化なのですが、鳥栖の選手間のポジショニングの微妙なズレ(明確な意思疎通が行えていない)のを感じました。柏木や阿部のドリブルの仕掛けに対して、豊田とムスの2人はパスの出先を気にしていた状態であり、それに対して急遽プレスに行くという選択をしませんでしたし、その体力も残っていないように目に映りました。
そして、とうとう、阿部、柏木がドリブルで持ち出してからストレスフリーの状態でパスコースを探し、最終ラインで良いポジショニングを見せていた関根に好パスを通され、鳥栖が対処する暇もなくシュートを浴び、ゴールを奪われるという結果になってしまいました。




■ 今後に向けて
下図は、阿部から右サイドの森脇にパスを通され、中盤にプレッシャーが全くかからない状態(複数人がフリーの状態)を察知して吉田が慌ててマークに向かいますが、そのスペースを使って裏へ抜け出すズラタンへのパスを許してしまったシーンです。この間、浦和がゴール前にチャンスを作るためのパスはたったの2本です。
私は、このシーンが、試合の流れの中で、チームのコンセプトを保ちつつ、前線、中盤、最終ラインがそれぞれどういう陣形を取れば良かったのか、選手同士がコミュニケーションをとってみんなで策を練るよい材料かなと思います。

サガン鳥栖の組織構築という観点で考えると、今はまだ、完成へ向けた過渡期の段階です。相手が4-4-2(4-5-1)の場合で、ある程度オーソドックスな攻め方をしてくる場合では、自分が守るスペースと相手が攻めるエリアとが対比しやすく、選手個々の次の動きのアイデアが生まれやすい状態になってきました。
しかしながら、今回の浦和のように、強力なアンカーがゲームメイクする場合や、前線に4~5枚並べられた場合など、相手に自分たちの守備の陣形にそぐわない形を作られたり、個人能力の高い選手による攻撃を受けたりした際には、人への対応をとるのか、スペースへの対応をとるのか、プレスをかけるのか、リトリートするのか、試合の中で最適解を出すには至っていない状態です。
相手との力関係のみならず、勝っている時、同点の時、負けている時など、それぞれの状況に応じて戦い方を変えなければなりませんが、まだまだその引き出しを多数持っているわけではありません。マッシモさんが、福田のポジショニングを試合の中で様々変えて挑んでいましたが、組織およびそれに紐づく個々の判断が自然に対応できるようになるにはまだまだ時間が必要で、現在は試行錯誤の段階だと感じました。
ファーストステージでの浦和との戦いのように、勝ち点1を獲得するために、完全に引いてしまう戦いをするのもひとつの手だとは思いましたが、マッシモさんとしては、現在の鳥栖の状態で、どの程度戦うことができるのか確認したかったのでしょう。そう考えると、ファーストステージのスコアレスドローよりも、今回の0-2での敗戦の方が、得るものは多かったのではないかと思います。
得られる勝ち点は望んでいるものではありませんでしたが、この試合における経験(特に失点のシーン)は、今後のサガン鳥栖のより強固な守備システムの構築に向けて必ず活用して欲しいですね。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
■ 試合の流れ
序盤は、どちらがペースを握るということもなく、前線からのチェックで奪いたいところでボールを奪うような場面(特に西川からのフィードをカットできるような鋭い出足)もありましたし、ボールを保持してゴールを伺う機会もありましたし、持ち前のハードワークを前面に押し出して、一進一退と言っても過言ではない戦いを見せていました。
しかしながら、主導権を握って戦えていたかと言うと、そこまでには至らなかったのも事実でありまして、鳥栖が完全に主導権を握ることができなかったポイントは2つあると考えます。
1つは、浦和のトランジション(攻守の切り替え)です。トランジションのスピードが下位チームとは比べ物にならない程早く、鳥栖がボールを奪って攻撃を仕掛けようとしても浦和のフォアチェックや素早いリトリートによって、ボールを前方に展開できず気がつけば遅攻フェーズに入っていました。
本来は高い位置でボールを奪って素早い攻撃を見せたいところでしたが、ボールを奪ってからのスピードアップができず、気が付けばボールを持たされる展開になり、効果的なパスをだせないまま相手にボールを奪われてしまうことが何度となく発生しておりました。
もう1つは、豊田がロングボールに対して絶対的優位に立てなかったという点です。いつもは鳥栖側に分があるはずのロングボールに対して、浦和の屈強なセンターバックである、那須、槇野が立ちはだかり、豊田の独壇場となりませんでした。
長いボールに対するセカンドボールを拾って二次攻撃に繋げるどころか、逆に前半30分のシーンのように長いボールを跳ね返されて逆に浦和のカウンターの起点になるような事態も発生し、全体を押し上げるきっかけづくりとならず、ロングボールを効果的に利用する機会がいつも程はありませんでした。
前半終了間際の失点シーンに関しては後述しますが、後半は、2点差がついてしまったので、リスクを冒してまで得点を奪いにいかなくてもよい浦和と、リスクを冒してでも得点を取りにいかなければならなくなってしまった鳥栖との戦いという形になり、前がかりになった鳥栖のスペースを狙った浦和が幾度となくチャンスを作っていましたが、林の好プレーによってなんとか失点を免れました。
最後の谷口のヘッドが決まっていれば、負けながらも多少は報われる試合だっただけに、ちょっと惜しかったかなという気持ちはありますが、浦和のミスがほとんどなかった事を考えると、完敗と言ってもいいような試合でした。
■ 失点に至るまでの経緯
現地で試合を見ていないので、画面から入ってくる情報だけが頼りなのですが、時間帯による約束事なのか、相手(特に、関根、宇賀神)の動きに対するリアクションとしての約束事なのか、この試合の中で鳥栖がいつもとは異なる守備組織で構える何かしらのトリガーがあったことは確かです。
いつものようにフルタイムで前線からのプレッシャーに行くのではなくてセンターハーフを最終ラインに下げることが多く、2人のセンターハーフを最終ラインに下げて時折6バックのような形で最終ラインのスペースを消す守り方にシフトすることもありました。
最終ラインに人をそろえるということは、中盤の選手がいたスペースを空けるということであり、では、そのスペースを守るためにどうするかという解決策が必要となります。
序盤の内は、浦和の阿部・柏木のゲームメイクに対して、前線2人と中盤2人(豊田、ムス、鎌田、ミヌ)が、パスコース、ドリブルコースへの対処を行い、スペースを埋める動き、相手の突進を阻止する動きをいつも以上にハードに対応していました。
特にキムミヌと鎌田は上下の動きによって浦和の最終ラインにプレッシャーをかけたり、引いてスペースを守ったりと非常に多くの事を求められていました。(ちなみに、鎌田は(途中交代ではありますが)1分あたりで換算するとキムミヌよりも福田よりも走っています。)
浦和に深く押し込まれた場合は、豊田が1列下がって中盤のスペースを埋める役割を果たしていましたし、この頃は、鳥栖が最終ラインに人数をかけても、それを前線と中盤の選手がカバーリングできていて、浦和の選手が動くスペースをある程度抑制することができていました。



ただ、動きに少し陰りが見え始めたのが、前半35分頃です。序盤の内は、ボールの動き、人の動きについていく体力と気力があります。しかしながら、試合も進み体力が消耗してくると、メンタル面、フィジカル面、双方の疲れで足が動かなくなり、少しずつ地力の違いによるプレッシャーが鳥栖イレブンにのしかかってきます。そして、その一瞬の隙を逃さないのが、阿部であり、柏木でした。
この時間帯を迎え、阿部、柏木が鳥栖の前線のチェックを難なくはがすようになってきました。いつもだったら、前線がはがされても、鳥栖の中盤が二の矢と言わんばかりに襲い掛かってくるのですが、関根、宇賀神へのスペースを与えないために、義希、福田が最終ラインに近い所で構えているため、前線と最終ラインとの間に大きなスペースを生み出し、二の矢となるプレッシャーをかけることができませんでした。
また、柏木の位置取りが、この時間帯は最終ラインまで下がってきたことも、鳥栖の前線の付き方に迷いが生まれました。抑えるべきところがゲームメイクする阿部や柏木なのか、それとも彼らからパスが渡るであろう森脇、槇野、那須なのか、柏木のポジショニングのわずかな変化なのですが、鳥栖の選手間のポジショニングの微妙なズレ(明確な意思疎通が行えていない)のを感じました。柏木や阿部のドリブルの仕掛けに対して、豊田とムスの2人はパスの出先を気にしていた状態であり、それに対して急遽プレスに行くという選択をしませんでしたし、その体力も残っていないように目に映りました。
そして、とうとう、阿部、柏木がドリブルで持ち出してからストレスフリーの状態でパスコースを探し、最終ラインで良いポジショニングを見せていた関根に好パスを通され、鳥栖が対処する暇もなくシュートを浴び、ゴールを奪われるという結果になってしまいました。




■ 今後に向けて
下図は、阿部から右サイドの森脇にパスを通され、中盤にプレッシャーが全くかからない状態(複数人がフリーの状態)を察知して吉田が慌ててマークに向かいますが、そのスペースを使って裏へ抜け出すズラタンへのパスを許してしまったシーンです。この間、浦和がゴール前にチャンスを作るためのパスはたったの2本です。
私は、このシーンが、試合の流れの中で、チームのコンセプトを保ちつつ、前線、中盤、最終ラインがそれぞれどういう陣形を取れば良かったのか、選手同士がコミュニケーションをとってみんなで策を練るよい材料かなと思います。

サガン鳥栖の組織構築という観点で考えると、今はまだ、完成へ向けた過渡期の段階です。相手が4-4-2(4-5-1)の場合で、ある程度オーソドックスな攻め方をしてくる場合では、自分が守るスペースと相手が攻めるエリアとが対比しやすく、選手個々の次の動きのアイデアが生まれやすい状態になってきました。
しかしながら、今回の浦和のように、強力なアンカーがゲームメイクする場合や、前線に4~5枚並べられた場合など、相手に自分たちの守備の陣形にそぐわない形を作られたり、個人能力の高い選手による攻撃を受けたりした際には、人への対応をとるのか、スペースへの対応をとるのか、プレスをかけるのか、リトリートするのか、試合の中で最適解を出すには至っていない状態です。
相手との力関係のみならず、勝っている時、同点の時、負けている時など、それぞれの状況に応じて戦い方を変えなければなりませんが、まだまだその引き出しを多数持っているわけではありません。マッシモさんが、福田のポジショニングを試合の中で様々変えて挑んでいましたが、組織およびそれに紐づく個々の判断が自然に対応できるようになるにはまだまだ時間が必要で、現在は試行錯誤の段階だと感じました。
ファーストステージでの浦和との戦いのように、勝ち点1を獲得するために、完全に引いてしまう戦いをするのもひとつの手だとは思いましたが、マッシモさんとしては、現在の鳥栖の状態で、どの程度戦うことができるのか確認したかったのでしょう。そう考えると、ファーストステージのスコアレスドローよりも、今回の0-2での敗戦の方が、得るものは多かったのではないかと思います。
得られる勝ち点は望んでいるものではありませんでしたが、この試合における経験(特に失点のシーン)は、今後のサガン鳥栖のより強固な守備システムの構築に向けて必ず活用して欲しいですね。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
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12:35
│Match Impression (2016)
2016年09月08日
2016天皇杯 アビスパ福岡 VS レノファ山口
ルヴァンカップの日程の影響により、平日に開催された天皇杯の2回戦のアビスパ福岡対レノファ山口。PK戦にまでもつれる激闘は、レノファ山口の勝利で幕を納め、レノファ山口初の3回戦進出となりました。
アビスパ福岡は、登録は4-5-1でしたが、実際は4-4-2で守備ゾーンを構築しており、前線は、中原と邦本の2名が並び、中盤と最終ラインは4人ずつのラインを組んでいました。
レノファ山口も、アビスパと同様に4-4-2のラインで守備ゾーンを構築しておりましたが、アビスパから押される時間帯になると5-4-1へと変化があり、相手の状態に応じてアンカーを最終ラインまで下げるかどうか決めていた模様です。
試合全体としては、ボールを保持していたレノファがイニシアチブを握っていたように見えますが、実際のところ、福岡は完全に構えて待ち構える状態であり、ミスから先制点を奪われはしましたが、同点、逆転とゴールを決めて、延長後半14分まで勝っていたことを考えると、ある程度アビスパが運びたいような試合の流れになっていたと思います。
レノファがボールを保持しているときは、29番の三幸もしくは、6番の望月が最終ラインのセンターバック間に入ってゲームメイクの役割をしました。(後半途中からは、6番望月から10番庄司に変わり、庄司がその役割を担っていました)
レノファ3人のビルドアップに対して、アビスパが見ているのは前線の2人ということで、ビルドアップ地域での数的有利を保てていましたし、アンカーは比較的ノープレッシャーでボールを保持することができていましたが、なかなか効果的なボールを前線に送ることができず。
アビスパのフォワードがあまり前から来てなかったので、アンカーが最終ラインまで下がらずに、つなぎをセンターバックだけにまかせるという手もあるかなと思っていましたが、延長に入るころには、ゲームメイクに下がるのではなく、通常のボランチの位置でボールを受け、そこから前へとボールを配球していまして、そちらの方が、前線との距離が近くなって裏のスペースへのパスも効果的に出来ていました。
レノファは、ツートップと11番鳥養、19番星がアビスパの最終ラインに張り付いたところからスタートして、サイドバックの裏のスペースを作り出す動きがすごくよかったです。
よく目についたのは、レノファ右サイドにいた11番の鳥養がボールを受けるために下がる動きを見せたところに、アビスパ左サイドバック阿部がくっついていきます。その阿部がくっついていったスペースに4番小池がうまく潜り込んでパスを受けることができた時は良いチャンスとなっていました。
この試合のMVPはゴールキーパーの一森という声が大きいかもしれませんが、私的には11番鳥養に関家具MVPくらいは上げたいと思います(笑)サイドバックの阿部を引き連れていく上下動や、最終ラインから裏のスペースへの飛び出し、32番中山が引いたスペースに入り込むランニングなど、前線の攻撃の活性化は間違いなく鳥養の動きから生み出されたものでした。
福岡の守備は完全に迎撃態勢で、レノファの最終ラインがボールを持っているときも、邦本、中原二人は我関せずという形で、中央に二人がパスコースだけを消すために並んでいました。レノファの6番や29番がちょっかいをかけるように、フォワード2人の間に入ってボールを受けたりもしていましたが、ほとんど食いついてこず。
アビスパは、無理に奪いに行ってスペースを空けたくないという思惑が強かったのか、とにかくスペースを埋めるための動きが優先されているようでした。どの方向に進ませたいのか、どの方向ならばNGなのかという、前線の2人が守備の主導権を握ってボールを奪い取ろうという動きはありませんでしたが、与えるスペースを最小限にして、相手がサイドから作ろうとした時にプレスをかける、それでもゴール前まで進められるとセンターバック個人の力弾き返すという守備の構図は見て取れました。
ただ、この守備の形だと、アビスパの攻撃へのトランジションは、自分たちの深い陣地でボールを奪うか、高い位置で相手にミスが発生するかに限られます。相手のミスは偶発的なものなので、深い位置でボールを奪ってから攻め上がることを考えると、ボールを奪ってから邦本と中原がサイドバックの裏のスペースに向けて動きを見せますが、遠い所からのパスになるのでなかなかつながらず。長いパスがサイドラインを割っていくシーンはアビスパ福岡サポーターの溜息を誘っていました。
その点、レノファの方はボールをサイドに追い込んでから、サイドバックやボランチから縦に入るボールを奪うという方針が見えて、何度もアビスパのパスを中盤でカットするシーンが見えました。ボールを奪う位置が高いので、その後の攻撃もよい形を作り出すことができましたが、残念ながら最後のクロスとシュートの精度に欠け、これがJ1とJ2との違いなのかなという所です。
良い形で前線までボールを運んでチャンスを作る気配を見せるものの決定的なシュートにまでは至らないレノファと、しっかりと守備ブロックを引いて奪ってからカウンターのきっかけをつくるものの、前線のフリーの選手に送るパスの精度に欠けてチャンスがチャンスにならないアビスパという戦いで、延長後半まで戦って互いに2点取ったものの、レノファがシュート10本、アビスパがシュート5本で終わってしまったというのがこの試合を表していると思います。
しかし、レノファの最後の猛攻は見事でした。体力的には厳しい状態だったでしょうが、最後までボールを奪う動きやなんとか前線に運ぼうとする動きなど、11人全員が勝利への執念を見せたことが同点ゴールに繋がりました。この試合で再三再四空けていた阿部の裏のスペースからの得点というのも、私的には乙なゴールだなと思いました。
最後に。レノファは、自陣のゴール前でも繋ごうとしていましたし、レノファサポーターもそれを理解してて 例えミスがあってピンチになろうとしても「クリアしろ!」 なんて無粋なことは言いませんでした。 レノファのサッカーをみんな理解しているんだなと思いました。自分のチームのサッカーのコンセプトを理解するということは、本当に選手の後押しに繋がるのだなと感じました。
アビスパ福岡は、登録は4-5-1でしたが、実際は4-4-2で守備ゾーンを構築しており、前線は、中原と邦本の2名が並び、中盤と最終ラインは4人ずつのラインを組んでいました。
レノファ山口も、アビスパと同様に4-4-2のラインで守備ゾーンを構築しておりましたが、アビスパから押される時間帯になると5-4-1へと変化があり、相手の状態に応じてアンカーを最終ラインまで下げるかどうか決めていた模様です。
試合全体としては、ボールを保持していたレノファがイニシアチブを握っていたように見えますが、実際のところ、福岡は完全に構えて待ち構える状態であり、ミスから先制点を奪われはしましたが、同点、逆転とゴールを決めて、延長後半14分まで勝っていたことを考えると、ある程度アビスパが運びたいような試合の流れになっていたと思います。
レノファがボールを保持しているときは、29番の三幸もしくは、6番の望月が最終ラインのセンターバック間に入ってゲームメイクの役割をしました。(後半途中からは、6番望月から10番庄司に変わり、庄司がその役割を担っていました)
レノファ3人のビルドアップに対して、アビスパが見ているのは前線の2人ということで、ビルドアップ地域での数的有利を保てていましたし、アンカーは比較的ノープレッシャーでボールを保持することができていましたが、なかなか効果的なボールを前線に送ることができず。
アビスパのフォワードがあまり前から来てなかったので、アンカーが最終ラインまで下がらずに、つなぎをセンターバックだけにまかせるという手もあるかなと思っていましたが、延長に入るころには、ゲームメイクに下がるのではなく、通常のボランチの位置でボールを受け、そこから前へとボールを配球していまして、そちらの方が、前線との距離が近くなって裏のスペースへのパスも効果的に出来ていました。
レノファは、ツートップと11番鳥養、19番星がアビスパの最終ラインに張り付いたところからスタートして、サイドバックの裏のスペースを作り出す動きがすごくよかったです。
よく目についたのは、レノファ右サイドにいた11番の鳥養がボールを受けるために下がる動きを見せたところに、アビスパ左サイドバック阿部がくっついていきます。その阿部がくっついていったスペースに4番小池がうまく潜り込んでパスを受けることができた時は良いチャンスとなっていました。
この試合のMVPはゴールキーパーの一森という声が大きいかもしれませんが、私的には11番鳥養に関家具MVPくらいは上げたいと思います(笑)サイドバックの阿部を引き連れていく上下動や、最終ラインから裏のスペースへの飛び出し、32番中山が引いたスペースに入り込むランニングなど、前線の攻撃の活性化は間違いなく鳥養の動きから生み出されたものでした。
福岡の守備は完全に迎撃態勢で、レノファの最終ラインがボールを持っているときも、邦本、中原二人は我関せずという形で、中央に二人がパスコースだけを消すために並んでいました。レノファの6番や29番がちょっかいをかけるように、フォワード2人の間に入ってボールを受けたりもしていましたが、ほとんど食いついてこず。
アビスパは、無理に奪いに行ってスペースを空けたくないという思惑が強かったのか、とにかくスペースを埋めるための動きが優先されているようでした。どの方向に進ませたいのか、どの方向ならばNGなのかという、前線の2人が守備の主導権を握ってボールを奪い取ろうという動きはありませんでしたが、与えるスペースを最小限にして、相手がサイドから作ろうとした時にプレスをかける、それでもゴール前まで進められるとセンターバック個人の力弾き返すという守備の構図は見て取れました。
ただ、この守備の形だと、アビスパの攻撃へのトランジションは、自分たちの深い陣地でボールを奪うか、高い位置で相手にミスが発生するかに限られます。相手のミスは偶発的なものなので、深い位置でボールを奪ってから攻め上がることを考えると、ボールを奪ってから邦本と中原がサイドバックの裏のスペースに向けて動きを見せますが、遠い所からのパスになるのでなかなかつながらず。長いパスがサイドラインを割っていくシーンはアビスパ福岡サポーターの溜息を誘っていました。
その点、レノファの方はボールをサイドに追い込んでから、サイドバックやボランチから縦に入るボールを奪うという方針が見えて、何度もアビスパのパスを中盤でカットするシーンが見えました。ボールを奪う位置が高いので、その後の攻撃もよい形を作り出すことができましたが、残念ながら最後のクロスとシュートの精度に欠け、これがJ1とJ2との違いなのかなという所です。
良い形で前線までボールを運んでチャンスを作る気配を見せるものの決定的なシュートにまでは至らないレノファと、しっかりと守備ブロックを引いて奪ってからカウンターのきっかけをつくるものの、前線のフリーの選手に送るパスの精度に欠けてチャンスがチャンスにならないアビスパという戦いで、延長後半まで戦って互いに2点取ったものの、レノファがシュート10本、アビスパがシュート5本で終わってしまったというのがこの試合を表していると思います。
しかし、レノファの最後の猛攻は見事でした。体力的には厳しい状態だったでしょうが、最後までボールを奪う動きやなんとか前線に運ぼうとする動きなど、11人全員が勝利への執念を見せたことが同点ゴールに繋がりました。この試合で再三再四空けていた阿部の裏のスペースからの得点というのも、私的には乙なゴールだなと思いました。
最後に。レノファは、自陣のゴール前でも繋ごうとしていましたし、レノファサポーターもそれを理解してて 例えミスがあってピンチになろうとしても「クリアしろ!」 なんて無粋なことは言いませんでした。 レノファのサッカーをみんな理解しているんだなと思いました。自分のチームのサッカーのコンセプトを理解するということは、本当に選手の後押しに繋がるのだなと感じました。
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18:25
│Match Impression (2016)
2016年09月05日
2016天皇杯 サガン鳥栖 VS FC琉球
台風の到来が懸念されましたが、FC琉球との天皇杯2回戦は予定通りの開催となりました。琉球のサポーターも少ない人数ながらも大きな声で声援を送っており、非常に素晴らしいサポーターのみなさんでした。台風も近づいておりましたが、無事に帰ることができたでしょうか。
サガン鳥栖は、新潟戦のスタメンから代表招集組である林、キムミンヒョクの他に、福田、豊田を先発から外して赤星、青木、早坂、池田を入れて試合に臨みました。システムは、いつもと変わらず4-3-1-2の鎌田フォーメーションです。
FC琉球は、トップにパブロを配置し、6番をアンカー気味に配置する4-1-4-1でスタートしましたが、サガン鳥栖が先に点を取り、攻めなければならない状態になると、ワイドの選手が前線に張って、4-1-2-3のようなスタイルに変更しつつ、試合終盤は、ディフェンスを外してフォワードを入れ、サイドバックを高く上げて総攻撃を仕掛けてきました。
■ 鳥栖と琉球のめまぐるしい攻守の切り替え
試合全体としては、攻守の切り替えも早くスピーディな展開…と言えば聞こえが良いのですが、サガン鳥栖にとっては、前半早めに得点を取った割には試合を落ち着かせる(いなせる)ポイントをうまく見つけられず、慌ただしく攻守の応酬をしながら90分が過ぎてしまったという印象です。
ムスの素晴らしいボレーシュートで幕を開けた試合でしたが、得点をとっても鳥栖はムスと池田のツートップとトップ下の鎌田が積極的に攻撃に関与し、1点を取ったからといって攻撃の手を緩めるようなまねはしません。
ムスは、前線のスペースを見つけてからの動き出しも早いので、ボールを(チーム全体を)前へ前へと推進するパワーがあります。ムスが良い所に動き出すので、味方も彼に使おうとしてボールを前へ、前へと運ぶ攻撃を繰り広げます。
もはや鳥栖の文化でもある前線のターゲットへのロングボールという選択もこの試合でも使用しており、今回のターゲットは池田が務めました。池田はロングボールに対して身を挺してボールをキープしようとする動きを見せてくれましたが、ロングボールの競り合いやキープは彼のストロングポイントではないので苦労している面もありました。
池田本人にとっては体を使ってキープする動きだったのでしょうが、審判にとっては手を使って相手の動きを制する動作と捉えられ、審判の所作で判断するところによると、「繰り返し競技規則に違反する」に該当してイエローカードの提示を受けました。イエローカードの提示を受けてからファールに対して慎重になってしまい、次第にロングボールに対する競り合いでの迫力を出すことができなくなってしまったのは残念でした。
対して、琉球の選手がボールを奪ったときの第一選択肢はパブロへのボールでした。ボールを奪ってから「何をしようか」という考える必要がなく、鳥栖のトランジション時のプレスをかわして、“そこにいるはず”のパブロへ配球することがファーストチョイスでした。
琉球はパブロへボールが渡ると全体を押し上げる合図であり、琉球のボール回しに意図的に間を作るのは、パブロがボールを持ってキープしている時だけで、押し上げが成功してからは、ダイレクトもしくはワンタッチでのパス回しで、サガン鳥栖のプレスが来る前にボールを離してしまうというコンセプトに見えました。
確かに、ボールを持っていると、福田、義希、早坂にすぐ囲まれてしまうので、囲まれて奪われる前に次の選手に繋いでしまえという判断は、プレスの強い鳥栖相手には有効でしたし、実際に相手をはがすアイデアをもった選手が何人も存在しました。
この戦術は、選手全体の意思が統一していないとなかなかやれることではありませんし、技術力の必要なプレイですので、つなぎの途中でのミスは多かったのですが、ひとたびつなぎに成功すると、鳥栖の中盤はおろか最終ラインまで一気に穴を開けることに成功し、華麗なパス回しに鳥栖のサポーターがため息を吐くシーンもありました。
もう一つ、琉球で印象的だったのは、サイドバックやボランチの選手が、前線にポジショニングしている中盤の選手にボールを当て、ダイレクトで落としたボールをこれまたダイレクトでサイドチェンジという攻撃です。
琉球のいい時間帯では、鳥栖の最終ラインに合わせて4人が前線に並ぶ形から、サイドの空いている選手に対して、当てて、落として、(鳥栖が寄せて取れなくて)ダイレクトでサイドチェンジという攻撃を見せ、鳥栖のプレスの連動(特定のサイドに対して横のスライドをチーム全体で実施する)を逆手に取った見事な攻撃でした。
試合も終盤に差し掛かった時にパブロとの交代で入ったレオナルドにも手を焼いていました。ボールキープに加え、前へのドリブルもスペースへの飛び出しも見せており、あの疲れ切っている時間帯で入られると対処に苦労する存在でした。
全体の流れとしては、鳥栖が奪えば、池田へのロングボールか、スペースに逃げるムスへの配球を行い、琉球が奪えば、パブロを狙ってボールを入れて、そこからダイレクト(もしくはワンタッチ)でのパス交換でゴールへ迫るという、攻撃のパターンは様々でしたが、いずれにしても、両チームに「ハーフを下して後ろに人数をかけてでもゆっくりつなぐ」「最終ラインでサイドを変えて穴を探す」というチョイスは優先度としては低かった模様です。
鳥栖も琉球も前へ、前へと行くものの、シュートに至る前の段階で、割とボールロストも多いという状態で、ボールが落ち着く間もなく右に左にという展開を生んでしまい、鳥栖としては、前半早めに2点差をつけて勝っている割には、慎重さと冷静さにかけていたかなという感じですが、スタジアム全体が、「J3相手なんだからもっと攻めろ。もっと点を取れ」という雰囲気を醸し出していたので、選手たちもそのような気持ちがあったかもしれません。
ただし、勝利はしたものの、試合終了間際の猛攻を必死で防ぐ鳥栖の選手の姿を見て、FC琉球はそんなにたやすい格下の相手ではなかったというのは観客のみなさんも感じ取れたのではないかと思います。
■ 岡田が入ったことによるリズムの変化
岡田が入ってから、チームのボール回しに変化ができました。最終ラインの選手が相手に囲まれると長いボールを蹴るという選択肢しか生まれない状態から、最終ライン近くまでひいて逃げ道を作るという選択肢をチームに与えることができていました。彼が攻撃のやり直しの時間を作ることに寄与し、最終ラインをボールロストせずにゆっくり穴を見つけるためのボールキープができました。
岡田の3点目のゴールは、ボール回しの中でゆっくり時間を作りながら、右サイドでボールを保持していた藤田から逆サイドへの三丸へとボールを回し、サイドによっていた鎌田への縦パスのあと、琉球の選手に囲まれますが、鎌田がうまく抜け出して、中盤と最終ラインの間にポジションを取っていた岡田へのパスに成功します。
この試合、琉球のゴールキーパーが鳥栖の長いボールに対して飛び出してクリアする姿を何回も見たことと思います。琉球の最終ラインが高い位置をとるので、その背後のスペースを狙われた時の対処はゴールキーパーがスイーパーのような役目を果たしていました。岡田がボールを受けた時、ゴールキーパーは、池田が背後を狙っていることはわかっているので、そのボールが出されたときには、自分が対処しなければならないという事を想定しています。
ところが、FC琉球の最終ラインは、池田と福田の裏へと抜ける動きを見て、全体が一斉にリトリートを始めてしまい、肝心のボールを持っている岡田に対するアプローチがなく、岡田に対して全体を見る余裕を与えてしまいました。岡田は、ゴールキーパーのポジショニングの状態を見逃さず、華麗なミドルシュートを叩きこむことに成功しました。
岡田が試合に入り、自分がボール回しの逃げ道になることにより、ロストしてでも前へ進んで強引に攻めきるという形から、ロストせずにボールを回して慎重に攻めるというゲームの流れを変える動きを取り、最終的にはいい形で自分がゴールを決める成果が生まれました。思わず、全盛期の藤田俊哉みたいだとつぶやいたシーンでした。
■ 琉球の攻撃への対処は
鳥栖の対処としては、やはりボールの出所を抑えたかったのですが、池田、ムスの2人が効果的にボールの出所を抑えることができたかというと、最終ラインから直接パブロへのボールを通してしまうなど、決して完全なものではありませんでした。一旦パブロに入ってしまうと、琉球全体が押し上げるので、仮にパブロのところでボールを奪えたとしてもそのまま中盤が密集状態になり、どちらに転ぶか分からないボールを多く作りだしてしまっていたのは、鳥栖の守備としてはらしくない所でした。
前半の途中で、ムス、池田に加えて鎌田も琉球の最終ラインにプレッシャーをかけるようになり、琉球の配球元となるセンターバック2人+下がった6番の選手に対して、鳥栖も同人数でプレッシャーをかけることによって、簡単にパブロへのボールが入らない時間帯がありました。
ボールを受けられないパブロは、中央でなくサイドにポジションを取るようになり、パブロをサイドに押しやることによって、琉球のポイントがゴールから遠くなってしまう時間がありましたが、(鳥栖の選手が攻める気持ちを抑えるかどうかは別問題として)このように、前線の3人が出所を抑えるディフェンスが機能していたときは、琉球が思うように攻められなかったのを感じました。
見たかったという観点だけで話すと、サイドチェンジの出所を抑えきれないならば、単純に中盤もしくは最終ラインを5枚にして、4-5-1や5-4-1にして、人の配置で対処するという手や、レオナルドに対してマンマークをつけて、4-1-4-1にしてしまっても面白かったかもしれません。(ただし、鳥栖の守備のコンセプトを崩さなければならない変更ですので、マッシモさんは選択しないでしょう。)
■ まとめ
強烈にボールキープできるメンバーを前線に据えておき、そこでタメを作って全体の攻撃の態勢を整えてから、ダイレクトのパス交換でゴールに迫る琉球の攻撃は迫力がありましたし、鳥栖の監督や選手たちも素直に勝利を喜べるようなインタビューでなかったところを見ると、得点差ほどの快勝とは言えない戦いでした。
ただ、トーナメントは勝ち残ることが最大の成果であり、無事に勝利して次の戦いに駒を進めることができたので、私的には100点の出来だったと思います。
サガン鳥栖は、新潟戦のスタメンから代表招集組である林、キムミンヒョクの他に、福田、豊田を先発から外して赤星、青木、早坂、池田を入れて試合に臨みました。システムは、いつもと変わらず4-3-1-2の鎌田フォーメーションです。
FC琉球は、トップにパブロを配置し、6番をアンカー気味に配置する4-1-4-1でスタートしましたが、サガン鳥栖が先に点を取り、攻めなければならない状態になると、ワイドの選手が前線に張って、4-1-2-3のようなスタイルに変更しつつ、試合終盤は、ディフェンスを外してフォワードを入れ、サイドバックを高く上げて総攻撃を仕掛けてきました。
■ 鳥栖と琉球のめまぐるしい攻守の切り替え
試合全体としては、攻守の切り替えも早くスピーディな展開…と言えば聞こえが良いのですが、サガン鳥栖にとっては、前半早めに得点を取った割には試合を落ち着かせる(いなせる)ポイントをうまく見つけられず、慌ただしく攻守の応酬をしながら90分が過ぎてしまったという印象です。
ムスの素晴らしいボレーシュートで幕を開けた試合でしたが、得点をとっても鳥栖はムスと池田のツートップとトップ下の鎌田が積極的に攻撃に関与し、1点を取ったからといって攻撃の手を緩めるようなまねはしません。
ムスは、前線のスペースを見つけてからの動き出しも早いので、ボールを(チーム全体を)前へ前へと推進するパワーがあります。ムスが良い所に動き出すので、味方も彼に使おうとしてボールを前へ、前へと運ぶ攻撃を繰り広げます。
もはや鳥栖の文化でもある前線のターゲットへのロングボールという選択もこの試合でも使用しており、今回のターゲットは池田が務めました。池田はロングボールに対して身を挺してボールをキープしようとする動きを見せてくれましたが、ロングボールの競り合いやキープは彼のストロングポイントではないので苦労している面もありました。
池田本人にとっては体を使ってキープする動きだったのでしょうが、審判にとっては手を使って相手の動きを制する動作と捉えられ、審判の所作で判断するところによると、「繰り返し競技規則に違反する」に該当してイエローカードの提示を受けました。イエローカードの提示を受けてからファールに対して慎重になってしまい、次第にロングボールに対する競り合いでの迫力を出すことができなくなってしまったのは残念でした。
対して、琉球の選手がボールを奪ったときの第一選択肢はパブロへのボールでした。ボールを奪ってから「何をしようか」という考える必要がなく、鳥栖のトランジション時のプレスをかわして、“そこにいるはず”のパブロへ配球することがファーストチョイスでした。
琉球はパブロへボールが渡ると全体を押し上げる合図であり、琉球のボール回しに意図的に間を作るのは、パブロがボールを持ってキープしている時だけで、押し上げが成功してからは、ダイレクトもしくはワンタッチでのパス回しで、サガン鳥栖のプレスが来る前にボールを離してしまうというコンセプトに見えました。
確かに、ボールを持っていると、福田、義希、早坂にすぐ囲まれてしまうので、囲まれて奪われる前に次の選手に繋いでしまえという判断は、プレスの強い鳥栖相手には有効でしたし、実際に相手をはがすアイデアをもった選手が何人も存在しました。
この戦術は、選手全体の意思が統一していないとなかなかやれることではありませんし、技術力の必要なプレイですので、つなぎの途中でのミスは多かったのですが、ひとたびつなぎに成功すると、鳥栖の中盤はおろか最終ラインまで一気に穴を開けることに成功し、華麗なパス回しに鳥栖のサポーターがため息を吐くシーンもありました。
もう一つ、琉球で印象的だったのは、サイドバックやボランチの選手が、前線にポジショニングしている中盤の選手にボールを当て、ダイレクトで落としたボールをこれまたダイレクトでサイドチェンジという攻撃です。
琉球のいい時間帯では、鳥栖の最終ラインに合わせて4人が前線に並ぶ形から、サイドの空いている選手に対して、当てて、落として、(鳥栖が寄せて取れなくて)ダイレクトでサイドチェンジという攻撃を見せ、鳥栖のプレスの連動(特定のサイドに対して横のスライドをチーム全体で実施する)を逆手に取った見事な攻撃でした。
試合も終盤に差し掛かった時にパブロとの交代で入ったレオナルドにも手を焼いていました。ボールキープに加え、前へのドリブルもスペースへの飛び出しも見せており、あの疲れ切っている時間帯で入られると対処に苦労する存在でした。
全体の流れとしては、鳥栖が奪えば、池田へのロングボールか、スペースに逃げるムスへの配球を行い、琉球が奪えば、パブロを狙ってボールを入れて、そこからダイレクト(もしくはワンタッチ)でのパス交換でゴールへ迫るという、攻撃のパターンは様々でしたが、いずれにしても、両チームに「ハーフを下して後ろに人数をかけてでもゆっくりつなぐ」「最終ラインでサイドを変えて穴を探す」というチョイスは優先度としては低かった模様です。
鳥栖も琉球も前へ、前へと行くものの、シュートに至る前の段階で、割とボールロストも多いという状態で、ボールが落ち着く間もなく右に左にという展開を生んでしまい、鳥栖としては、前半早めに2点差をつけて勝っている割には、慎重さと冷静さにかけていたかなという感じですが、スタジアム全体が、「J3相手なんだからもっと攻めろ。もっと点を取れ」という雰囲気を醸し出していたので、選手たちもそのような気持ちがあったかもしれません。
ただし、勝利はしたものの、試合終了間際の猛攻を必死で防ぐ鳥栖の選手の姿を見て、FC琉球はそんなにたやすい格下の相手ではなかったというのは観客のみなさんも感じ取れたのではないかと思います。
■ 岡田が入ったことによるリズムの変化
岡田が入ってから、チームのボール回しに変化ができました。最終ラインの選手が相手に囲まれると長いボールを蹴るという選択肢しか生まれない状態から、最終ライン近くまでひいて逃げ道を作るという選択肢をチームに与えることができていました。彼が攻撃のやり直しの時間を作ることに寄与し、最終ラインをボールロストせずにゆっくり穴を見つけるためのボールキープができました。
岡田の3点目のゴールは、ボール回しの中でゆっくり時間を作りながら、右サイドでボールを保持していた藤田から逆サイドへの三丸へとボールを回し、サイドによっていた鎌田への縦パスのあと、琉球の選手に囲まれますが、鎌田がうまく抜け出して、中盤と最終ラインの間にポジションを取っていた岡田へのパスに成功します。
この試合、琉球のゴールキーパーが鳥栖の長いボールに対して飛び出してクリアする姿を何回も見たことと思います。琉球の最終ラインが高い位置をとるので、その背後のスペースを狙われた時の対処はゴールキーパーがスイーパーのような役目を果たしていました。岡田がボールを受けた時、ゴールキーパーは、池田が背後を狙っていることはわかっているので、そのボールが出されたときには、自分が対処しなければならないという事を想定しています。
ところが、FC琉球の最終ラインは、池田と福田の裏へと抜ける動きを見て、全体が一斉にリトリートを始めてしまい、肝心のボールを持っている岡田に対するアプローチがなく、岡田に対して全体を見る余裕を与えてしまいました。岡田は、ゴールキーパーのポジショニングの状態を見逃さず、華麗なミドルシュートを叩きこむことに成功しました。
岡田が試合に入り、自分がボール回しの逃げ道になることにより、ロストしてでも前へ進んで強引に攻めきるという形から、ロストせずにボールを回して慎重に攻めるというゲームの流れを変える動きを取り、最終的にはいい形で自分がゴールを決める成果が生まれました。思わず、全盛期の藤田俊哉みたいだとつぶやいたシーンでした。
■ 琉球の攻撃への対処は
鳥栖の対処としては、やはりボールの出所を抑えたかったのですが、池田、ムスの2人が効果的にボールの出所を抑えることができたかというと、最終ラインから直接パブロへのボールを通してしまうなど、決して完全なものではありませんでした。一旦パブロに入ってしまうと、琉球全体が押し上げるので、仮にパブロのところでボールを奪えたとしてもそのまま中盤が密集状態になり、どちらに転ぶか分からないボールを多く作りだしてしまっていたのは、鳥栖の守備としてはらしくない所でした。
前半の途中で、ムス、池田に加えて鎌田も琉球の最終ラインにプレッシャーをかけるようになり、琉球の配球元となるセンターバック2人+下がった6番の選手に対して、鳥栖も同人数でプレッシャーをかけることによって、簡単にパブロへのボールが入らない時間帯がありました。
ボールを受けられないパブロは、中央でなくサイドにポジションを取るようになり、パブロをサイドに押しやることによって、琉球のポイントがゴールから遠くなってしまう時間がありましたが、(鳥栖の選手が攻める気持ちを抑えるかどうかは別問題として)このように、前線の3人が出所を抑えるディフェンスが機能していたときは、琉球が思うように攻められなかったのを感じました。
見たかったという観点だけで話すと、サイドチェンジの出所を抑えきれないならば、単純に中盤もしくは最終ラインを5枚にして、4-5-1や5-4-1にして、人の配置で対処するという手や、レオナルドに対してマンマークをつけて、4-1-4-1にしてしまっても面白かったかもしれません。(ただし、鳥栖の守備のコンセプトを崩さなければならない変更ですので、マッシモさんは選択しないでしょう。)
■ まとめ
強烈にボールキープできるメンバーを前線に据えておき、そこでタメを作って全体の攻撃の態勢を整えてから、ダイレクトのパス交換でゴールに迫る琉球の攻撃は迫力がありましたし、鳥栖の監督や選手たちも素直に勝利を喜べるようなインタビューでなかったところを見ると、得点差ほどの快勝とは言えない戦いでした。
ただ、トーナメントは勝ち残ることが最大の成果であり、無事に勝利して次の戦いに駒を進めることができたので、私的には100点の出来だったと思います。
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20:08
│Match Impression (2016)
2016年09月02日
新潟のオフサイドとなったゴールシーンについて
サガン鳥栖が、セカンドステージの10節を終えて、年間総合の失点数がJ1で一番少ないチームとなりました。堅守を支えているのは、ゴールキーパー、ディフェンダーの活躍はもちろん必要ですが、彼らだけで失点を抑えられるわけではありません。
守備組織の確立のためには、前線のボールの流れを制限するプレス、中盤の選手のアプローチ、カバーリングなど、チーム全体として個々の役割を整理し、ボールをどの位置でどのようにして奪うのか意思統一することが必要です。
それに加え、当初想定していた守備ができなかった時に、(抜かれてしまった、カウンターを受けてしまったなど)どのようにしてチームメンバーが守備組織を再構築するのか、状況に応じたポジショニングが重要となります。
先日のアルビレックス新潟戦で、想定していた守備ポジションが取れなかったときのカバーリング対応に関して参考となるシーンがありましたので紹介します。
25分頃のシーンなのですが、この頃は、新潟が作戦指宿を絶賛遂行中でありまして、キーパーからのロングボールを指宿がミヌに難なく競り勝ち、前線の起点として新潟が押し込んでいる時間帯であり、最終ラインを何度か崩されかけて、やっとコーナーキックに逃げた場面です。
その、コーナーキックを林がキャッチした後に素早いスローでカウンターを狙ったボールを鎌田に配球しますが、そのボールが長すぎて相手にカットされてしまいます。
下図はカットされてからのトランジションの場面ですが、豊田が新潟の攻撃に備えるために中盤のラインに入り、鎌田が入るべき2列目のカバーリングを実行しました。このカバーリング自体は素晴らしいプレーでした。(もう少し、ボールへのプレッシャーをかけることができていれば満点でした)

野津田は、中盤のラインがそろっているので、中央へのつなぎやドリブルによる前進をあきらめ、鳥栖の左サイドの裏のスペースに走りこむ小林にボールを配球して起点をつくります。この裏へのボールに対し、吉田がしっかりとマークをしていたため、小林はバックパスを選択せざるを得なくなります。
小林が野津田に戻した後のシーンがこちらなのですが、吉田の裏へ配球されるときには、4人が並んでいた中盤ですが、新潟が鳥栖の左サイドに起点をつくる間に、守備陣形が崩れて中盤の選手がひとり足らない状態になっています。

サガン鳥栖は、4-3-1-2での構えがスタートラインとなっていますが、この場面では、カウンターで出て行った鎌田は戻らず(おそらく豊田とポジションチェンジをしたと思っている)、豊田はフォワードの選手なので相手が鳥栖の深い陣地に入った段階で自分のゾーンと思っていない、という譲り合い状態が生まれてしまい、4-3-1-2の「1」の部分の役割を果たす人間が不在となってしまいました。
その結果、どのようになったかというと、中央でフリー状態である山崎に対するプレッシャーを誰もかけられず、慌てて最終ラインからミンヒョクが出てプレッシャーに向かいましたが、山崎はしっかりと見極めた上でラファエルシルバへのパスを選択し、ラファエルシルバがゴールネットを揺らしました。結果的にはオフサイドで事なきを得たのですが、非常に危ないシーンでした。

ポイントなのは、フリーだった山崎が4-3-1-2の1の選手が十分にマークできるゾーンにいることであり、鳥栖が定められた4-3-1-2をしっかりと取っていれば、訪れなかったピンチであるということです。
鳥栖の守備陣形が4-3-1-2というスタートラインであるならば、そのスタートラインに立ち戻るようにしなければなりませんし、本来そのゾーンを守るべきメンバーがいなければ、代わりの選手(豊田、ムス)がカバーリングしなければなりません。
ストライカーに要求するのは非常に酷なのですが、特に、豊田は、一旦は中盤のラインに入ったので、鎌田が戻りきれないならばそのまま中盤の守備を担うという選択が必要でした。
この時間帯は新潟が鳥栖を押し込んでいた時間帯であり、最終ラインも2列目のラインも鳥栖陣地に引いてブロックを構えている時間帯であったため、2列目の前のスペースが空くということは前線の選手も頭の中で考えておかなければならなかったところです。
冒頭でも述べたように、守備組織とはチーム全体で作り上げるものです。ひとりひとりが、現在、組織がどのような状態にあるのか、そして、味方は現在どのような位置にいるのかということをフィールドに出ている11人が全員頭をフル回転してプレーすることができれば、今よりも更に強固な守備組織が構築されるでしょう。
ゴールから近いエリア、遠いエリアということに関わらず、守備組織を整える事を疎かにしてしまうと、あっという間にピンチが訪れるということを教えてもらったシーンでした。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
守備組織の確立のためには、前線のボールの流れを制限するプレス、中盤の選手のアプローチ、カバーリングなど、チーム全体として個々の役割を整理し、ボールをどの位置でどのようにして奪うのか意思統一することが必要です。
それに加え、当初想定していた守備ができなかった時に、(抜かれてしまった、カウンターを受けてしまったなど)どのようにしてチームメンバーが守備組織を再構築するのか、状況に応じたポジショニングが重要となります。
先日のアルビレックス新潟戦で、想定していた守備ポジションが取れなかったときのカバーリング対応に関して参考となるシーンがありましたので紹介します。
25分頃のシーンなのですが、この頃は、新潟が作戦指宿を絶賛遂行中でありまして、キーパーからのロングボールを指宿がミヌに難なく競り勝ち、前線の起点として新潟が押し込んでいる時間帯であり、最終ラインを何度か崩されかけて、やっとコーナーキックに逃げた場面です。
その、コーナーキックを林がキャッチした後に素早いスローでカウンターを狙ったボールを鎌田に配球しますが、そのボールが長すぎて相手にカットされてしまいます。
下図はカットされてからのトランジションの場面ですが、豊田が新潟の攻撃に備えるために中盤のラインに入り、鎌田が入るべき2列目のカバーリングを実行しました。このカバーリング自体は素晴らしいプレーでした。(もう少し、ボールへのプレッシャーをかけることができていれば満点でした)

野津田は、中盤のラインがそろっているので、中央へのつなぎやドリブルによる前進をあきらめ、鳥栖の左サイドの裏のスペースに走りこむ小林にボールを配球して起点をつくります。この裏へのボールに対し、吉田がしっかりとマークをしていたため、小林はバックパスを選択せざるを得なくなります。
小林が野津田に戻した後のシーンがこちらなのですが、吉田の裏へ配球されるときには、4人が並んでいた中盤ですが、新潟が鳥栖の左サイドに起点をつくる間に、守備陣形が崩れて中盤の選手がひとり足らない状態になっています。

サガン鳥栖は、4-3-1-2での構えがスタートラインとなっていますが、この場面では、カウンターで出て行った鎌田は戻らず(おそらく豊田とポジションチェンジをしたと思っている)、豊田はフォワードの選手なので相手が鳥栖の深い陣地に入った段階で自分のゾーンと思っていない、という譲り合い状態が生まれてしまい、4-3-1-2の「1」の部分の役割を果たす人間が不在となってしまいました。
その結果、どのようになったかというと、中央でフリー状態である山崎に対するプレッシャーを誰もかけられず、慌てて最終ラインからミンヒョクが出てプレッシャーに向かいましたが、山崎はしっかりと見極めた上でラファエルシルバへのパスを選択し、ラファエルシルバがゴールネットを揺らしました。結果的にはオフサイドで事なきを得たのですが、非常に危ないシーンでした。

ポイントなのは、フリーだった山崎が4-3-1-2の1の選手が十分にマークできるゾーンにいることであり、鳥栖が定められた4-3-1-2をしっかりと取っていれば、訪れなかったピンチであるということです。
鳥栖の守備陣形が4-3-1-2というスタートラインであるならば、そのスタートラインに立ち戻るようにしなければなりませんし、本来そのゾーンを守るべきメンバーがいなければ、代わりの選手(豊田、ムス)がカバーリングしなければなりません。
ストライカーに要求するのは非常に酷なのですが、特に、豊田は、一旦は中盤のラインに入ったので、鎌田が戻りきれないならばそのまま中盤の守備を担うという選択が必要でした。
この時間帯は新潟が鳥栖を押し込んでいた時間帯であり、最終ラインも2列目のラインも鳥栖陣地に引いてブロックを構えている時間帯であったため、2列目の前のスペースが空くということは前線の選手も頭の中で考えておかなければならなかったところです。
冒頭でも述べたように、守備組織とはチーム全体で作り上げるものです。ひとりひとりが、現在、組織がどのような状態にあるのか、そして、味方は現在どのような位置にいるのかということをフィールドに出ている11人が全員頭をフル回転してプレーすることができれば、今よりも更に強固な守備組織が構築されるでしょう。
ゴールから近いエリア、遠いエリアということに関わらず、守備組織を整える事を疎かにしてしまうと、あっという間にピンチが訪れるということを教えてもらったシーンでした。
<画像引用元:スカパーオンデマンド>
Posted by オオタニ at
18:13
│Match Impression (2016)