サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2015年03月18日

愛媛 VS 福岡

愛媛と福岡の試合を見ました。主に失点シーンのポイントを。G大阪や鳥栖に比べてつっこみどころ満載だったので、ついつい長くなってしまいました。愛媛VS福岡の録画撮っている方は、ぜひとも下の振り返りと共に見てみてください。鳥栖サポの方は、最後の方の「■ゾーンで守る守備のよい例」だけでも見てみてください。

■1失点目
①5分40秒:
酒井、城後、坂田が左サイドでプレスするも、右サイド(愛媛の左サイド)に展開される。

②5分45秒:
牛之濱がボール保持者にチェックにいく(牛之濱、坂田、城後が前線に並ぶ。)中村北斗は牛之濱がプレスしたスペースを埋めるため(もしくは6番のマークの為)に前にスライドする。

③5分48秒:
愛媛6番(三原)からのくさびのパスが最前線の西田にはいる。西田にボールが入ることによって、前を向かせたくない堤が西田に詰める。この時、センターバックが前におびき出されたため、亀川がセンターバックをカバーするため、中央にスライドする。
※筆者的には、このパスを通されたことによって、堤と亀川が動かされたのが致命的だと思います。また、亀川は通常の動きをしただけで、逆サイドのスペースを空けることは仕方がない(亀川は悪くない)と考えます。

④5分50秒:
愛媛西岡がくさびからのパスを受け、フリーでパスを出せる体制に。その時、福岡は中村はプレスから戻りきれず、亀川は中央に絞っているため、両サイドに広大なスペースを与えてしまう。そして、そのスペースには愛媛の選手がしっかりと2人待機。西岡は愛媛から見て右サイドのスペースへ大きく展開する。(ちなみに、この時、愛媛の左サイドの選手はパスが出てこなかったのでふてくされる(笑))

⑤5分57秒:
愛媛右サイドからクロスがあがって、ニアで合わされて失点。ちなみに、ファーサイドには愛媛の選手(瀬沼と河原)が二人入ってきており、福岡の選手はパクゴンと中村北斗がその後ろから遅れて戻ってきている状態。

さて、ここで守備組織に対する疑問が浮かびます。

②のシーン。
愛媛が左サイドに展開した時に、牛之濱が相手のセンターバックに対して猛然とプレスをかけます。これは、チームとしての意思だったのでしょうか?正直、プレスに行くまでの距離がありすぎて、愛媛の選手が前を向いてパスを出せる状態になってもまだ牛之濱が追いついていません。

牛之濱が1列前に行くことによって、後ろの中村も1列前にスライドすることになります(中村は前にスライドせずに最終ラインのゾーンを守るという選択肢もあったかとは思いますが。)これもスライドする距離がありすぎて、愛媛の6番がパスを受けて前を向くまでに追いついていません。

前から追っていくのは良いのですが、全体があまりにも間延びしてしまっているので、そのプレスにチームとして追いつけていないのです。その間延びしているスペースを使われるので、愛媛に面白いようにパスをつながれてしまいます。

理想としては、前線の3人が有機的に動いてパスコースを限定し、最後は牛之濱(もしくはボランチ)に奪わせるという形が良いのでしょうが、牛之濱が相手のセンターバックにプレスをかけているということは、中盤の広大なスペースをボランチ2人で見なければならなくなっているということです。

正直、これでボールを奪うのは無理ですね。

そして致命的な状況を生むきっかけとなった③の状態を生んでしまいます。全体が前がかりになってしまった上に、自分のスペースを捨ててプレスに行ってしまった中盤をカバーするため、センターバックの堤が前にでて西田にプレスをかけます。

4バックで1番気を付けなければならないのは、センターバックが釣り出されることです。センターバックが釣りだされた場合は、サイドバックかボランチが必ずカバーリングしなければなりません。よって、亀川は、チーム全体が前がかりになってしまった上に、堤が上がって空いてしまった中央のスペースを、愛媛の西田を見ながらしっかりとスライドして埋めています。

このプレイによって、右の中村北斗、左の亀川、両サイドバックの動いた大きなスペースを愛媛に与えてしまいましたが、中村北斗も亀川も、味方の動きに応じて連動しよう、カバーしようとして動いた結果なので、彼らが空けたくて空けてしまったスペースではないということがわかると思います。

また、ここで更に福岡がまずかったのは、相手の逆サイドへのボールが長すぎてサイドを割ると思ったのか、守備陣が自己判断で足を止めてしまいます。これも失点の要因の一つですよね。各人が自己判断せずに、クロスに備えていち早くポジションを取ることができていれば、もしかしたら防げた失点なのかもしれません。

ちなみに、この一連のシーンで、パクゴンは大混乱してました(笑)
中村北斗が空けたスペースを埋めようとして一旦右サイドバックに入りかけます。愛媛の6番が前を向いてパスを出すときは、パスコースに入ろうとして中盤の位置に戻ろうとします。相手のフォワードにくさびが入った時は、慌ててディフェンスラインをカバーしようとします。味方の動きがあまりにも統制がなさすぎて、自分の役割が何なのか見失っているかのように前後にさまよってます。

福岡は、22分46秒にも同じような形でピンチになりかけます。この時は、中央から右サイドにでるボールの質が悪くてクロスを上げられるには至りませんでしたが、前線と牛之濱が無理なプレスをかけることによって、ボランチと最終ラインがついていけずに、全体が一瞬にして間延びして、綻びが生じています。

試合を見れる方は、7分46秒のシーンを見てみてください。酒井が左サイドに1枚引いて、パクゴンと末吉が中央、牛之濱が右サイドに構え、4-4-2のゾーンを組んでます。福岡が焦ってプレスに行くこともないため、愛媛はパスの出しどころがなくて、7分58秒に無理なサイドチェンジを試みますが、ミスとなって福岡のスローインになってしまいます。正直、前半はこれでよかったと思うんですけどね。前線のメンバーは、何をあせってボールを奪いに行こうとしてたのかなと思います。

■15分のドフリーとなったシーン

14分41秒:
愛媛のボランチにボールが入り、猛然とプレスをかける末吉。
⇒ここまではOK
ボランチからセンターバックへのバックパスに対しても猛然とプレスをかける末吉。
⇒なぜ?
そして、キーパーへのバックパスに対しても猛然とプレスをかける末吉。
⇒なぜ?なぜ?なぜ?

結果、4-4の2ラインで守っていたディフェンスに穴が開き、キーパーからのパスで再び愛媛のボランチがボールを受けます。愛媛は苦労せずに相手のボランチが1枚いないという状況をいただきました(笑)。末吉のプレスは残念ながら、相手に攻撃のチャンスを作るためのものとなってしまいました。

牛之濱は、末吉がいなくなってしまったので、左にスライドします。これは、末吉がいなくなったボールサイドに対してスペースを埋めなければならないから、必然の動きであります。

この時も、パクゴンの動きが混乱してまして(笑)
末吉がプレスに入ったときは、20番の河原をみているんですよ。マンマークなのかな?
それで、末吉が空けたスペースをパクゴンがスライドするわけでもなく。(筆者は、坂田が埋めるのが一番良いのかなと思います。)
そうかと思えば、次のパスでボールが流れていくのに応じて左サイドによっていっているんですよね。
パクゴンが左サイドによっていってしまったもんですから、牛之濱はなおさら中央にしぼらないといけなくなります。

動きとしては末吉とパクゴンがマンマーク的な?動きをしてしまって自分のエリアという意識がなく、牛之濱の方はゾーンで守ることを意識していた感じで、彼らが動いたスペースを埋めようと中にスライドしてます。そうしたら、右サイドに大きなスペースが空くのは必然といえば、必然です。

4-4のラインでゾーンで守る上では、ボールと逆サイドのスペースはある程度捨てないと守りきれないという面はあります。だからこそ、相手によい形でボールを蹴らせないというボールサイドへの守備が重要になります。この場面でも、牛之濱があのようにしぼってしまった段階で、左サイドのメンバーは気を引き締めて逆サイドへの展開を防がなければならない場面でしたが、城後が引いて二人でプレスをかけるわけでもなく、そのエリアを守っているのは酒井だけ。…これじゃ、無理か。

このシーンは、愛媛の西田が素晴らしい動きをしました。末吉が猛ダッシュでプレスをかけた瞬間、空けてくれたスペースに移動してボールを要求しています。また、愛媛が右サイドへ展開した際にも、サイドバックからのパスの選択肢が増えるようにボールを受けられるスペースへ移動します。(実質、パスを受けて起点となりました。)この西田のような動きを城後ができたら、福岡の攻撃の選択肢も増えそうなんですけどね。

■2失点目
ここでも不思議な動きが。
25分9秒の時点では、酒井?がディフェンスラインに入って5人でディフェンスラインを形成しています。
でも、25分16秒の時点では、愛媛の右サイドにパスがでると、食いつくように酒井が前にプレスをかけていきます。本来守るべきところよりも、1列下がっていたのに気付いて、あわてて前に出て行った的な感じでした。
ところが、このプレイの何がまずいって、このプレスで遮るべきパスコースである縦を切ってないんですよね。相手に横パスもしくはバックパスをさせるような位置にいなければならないのですが、簡単に縦の選手にパスを入れさせてしまいます。
その結果、愛媛の右サイドの選手が、ディフェンスラインと中盤のライン(と言っていいのか?)の間で前を向いてボールを受け取ることができ、ディフェンスラインとキーパーとの間のスペースにフリーでラストパスを送ることができる機会を与えてしまったのです。結果的にこのラストパスが失点につながりました。確かに、ラストパスとトラップしてから持ち込んでのシュートもよかったのですが、その場面を作られるまでの過程のミスが致命的でした。

■福岡が改善した方がよいところ。
・ ゾーンかマンマークかはっきりする。
・ ボランチとサイドハーフはプレスをする位置と相手を決める。無理にセンターバックやサイドバックにプレスに行かない。
・ フォワードは、相手のディフェンスからボランチに入るパスコースを消す。横に出されるのはOKと割り切る。無理に奪いにいかない。
・ どうしても前から奪いたい場合は、ファーストアタックは3人のフォワードにさせて、相手がどうしようもなく出すパスのコースにボランチやサイドハーフが入るようにする。

という所でしょうか。井原さんが守備の構築にどの程度の猶予を考えているかというのはありますが、次節から無失点ゲームで連勝!という感じになりそうかと言われると、まだまだ厳しいんじゃないかなと思います。

■ゾーンで守る守備のよい例
録画が見れる方は、鳥栖対G大阪の33分30秒から34分あたりの鳥栖の守備を確認してみてください。相手のディフェンスラインのボール回しに無理につっかかるメンバーはいません。豊田と池田はディフェンスラインのボール回しに対して、通されてはいけないパスコース(ボランチへのパスコース)を消すことに専念します。遠藤がディフェンスラインまでひいてボールを受けてもプレスではなく、縦へのパスコースを切るだけです。この時、豊田は何回か明神の位置を確認しています。

34分6秒、ガンバは、攻撃の糸口を見つけるために、大森が引いてきてボールを受けようとします。センターバックがボールを受けたとき、豊田が明神へのパスコースを切ったので、藤田はセンターバックから大森にパスがでると想定して大森にプレスをかける準備を始めます。センターバックが大森にボールを渡した瞬間、藤田がプレスをかけてボールを奪いに行きますが、大森は藤田が来ていることが見えたので、ワンタッチで明神へはたきます。(←大森はぱっと後ろを見て藤田を把握してました。これはこれで大森も素晴らしい。)谷口は藤田のプレスを見て、大森のパスの出所が明神もしくはセンターバックしかないことを想定(準備)してますので、明神にチェックをかけます。明神にボールが出た瞬間が奪えるチャンスだったのですが、残念ながらファールになりました。ただ、これで谷口がボールをノーファールで奪えたら大チャンスでしたね。フォワードと中盤との連係、プレスをかけるタイミング、プレスをかける相手、見ていて美しい守備組織だ(笑)

今年の鳥栖は昨年以上に守備組織の構築ができているなと感じた瞬間でした。とはいえ、今回はガンバも4-4-2で対面がマッチしてましたが、相手が4-4-2じゃなかったらマッチアップが変わるからですね。その時、どう対応するかが楽しみです。


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Posted by オオタニ at 01:06 │Match Impression (2015)