サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2019年02月07日

ルナー・ニュー・イヤー・カップ 香港選抜戦

ルナー・ニュー・イヤー・カップ 香港選抜戦のレビューです。
ゴールシーンとチャンスシーンしか見ていないので、そのシーンを紹介しつつ、攻撃に関して少し掘り下げます。

まずは、ゴールシーンです。

左サイドの三丸にボールが渡ったところからですが、その時点で相手のサイドバックが三丸へのマーキングを行います。また、福田がハーフスペースに入ることによって、相手のセントラルハーフをひきつけます。

香港としては、トーレスに対しては最新の注意を払いますので、センターバック2人がトーレスにつく選択をします。クエンカは、ハーフスペースに入ってくる福田にマーキングがついているので、少しインサイドにポジションを取りました。

図は、三丸からボールがクエンカに渡った時点です。

ルナー・ニュー・イヤー・カップ 香港選抜戦

この時点でクエンカは2つのスペースを認識することになります。

1つ目は、自分の目の前に広がる中央へのスペース。香港のボランチがバイタルエリアをケアするために、クエンカに対するマークではなく、スペースを埋める選択をしておりました。クエンカはこのスペースをボールを運べるエリアとして活用します。

2つ目は、三丸と福田が幅を取るポジションをとったことによって、生まれたセンターバックの脇のスペース。このスペースが非常に大事なスペースで、クエンカとトーレスが、このスペースに対する認知の共有を図れたことが、ゴールのきっかけとなります。

ボールを運んだクエンカが、センターバックの脇のエリアに向けて浮き球のパスをだすと、オフサイドラインを見計らって飛び出したトーレスがボールを受けて反転してシュートを決めます。これこそが、トーレスの真骨頂ですよね。
三丸、福田のポジションの取り方によって、相手の最終ラインとセントラルハーフを動かし、そしてクエンカとトーレスが上手にスペースを使ってゴールを決めるという素晴らしい連携でした。


2枚目の図ですが、こちらはクエンカのシュートがポストに当たって惜しくも入らなかったシーンの組み立てです。

ルナー・ニュー・イヤー・カップ 香港選抜戦

ポイントは2つ。

1つ目は、トーレスがトップの位置にいたのですが、ボールを受けようと下がることによって、香港のセンターバックを引き連れてゴール前にスペースを作り出した事。

2つ目は、左サイドで数的同数である状況から、クエンカのボール保持によって三丸につくはずのサイドバックを引き寄せて、三丸をフリーな状態にすることに成功したことです。

福田にボールを預けたクエンカは、迷わずにトーレスが空けたスペースへとダイアゴナルランを始めます。福田はフリーとなった三丸へパスを送り、ボールを受けた三丸は少し運んでクロスを送ります。香港がトーレスの空けたスペースを最後までうまくケアできなかった事により、侵入してきたクエンカはシュートを打てる機会を作りだすことができました。

この2つのシーンを見ただけで、クエンカが「本物」であることが伺えます。スペースに対する認知力。ボールを保持する力、味方の位置の把握と効果的に利用する力、そして利用できるスペースに対して迷わずランニングができる判断力。彼自身のゴールも期待したいですが、トーレスの潜在能力を大きく発揮させてくれる存在としての活躍も期待したいですね。

また、もうひとつポイントがありまして、この2つのシーンは、クエンカのサイド(左サイド)からのチャンスメイクだったのですが、逆サイド(右サイド)にも幅を取るメンバーがポジションを取っています。ちょうど、三丸がポジションを取っている位置の逆サイドにいる選手ですね。

このポジションをとることによって、もし、左サイドが手詰まってしまったら、サイドチェンジでセンターサークル付近にいるボランチを経由し、素早く逆サイドにボールを展開することによって、相手のセントラルハーフのスライドを要求することが出来ます。仮に右サイドで崩せなかったとしても、再び左サイドに戻ってきたときにクエンカが利用できるスペースが作れているかもしれません。

また、クエンカのシュートのシーンは、もし、クエンカがボールをさわれなかったとしたら、逆サイドの選手(島屋?)にシュートチャンスが訪れていました。この形を作れると左足が使える選手が右サイドにいることによって、シュートの精度も上がりますよね。キムミヌがカットインしてシュートを決めていたような形も作れます。

今後、試合を重ねていくうちに、カレーラス監督の形が作り出されていくのでしょうが、この2つのシーンを見ても、トーレスの動きを周りが効果的に使っていることが伺えます。そこに、金崎、小野、豊田、ドンゴン、イバルボなどの個性を持った選手たちがどのように絡んでいくのか、どのような化学反応をおこせるのか、非常に楽しみですね。


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Posted by オオタニ at 18:02 │Match Impression (2019)