サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2019年03月23日

パスネットワーク図を用いたFC東京戦とジュビロ磐田戦との比較

試合分析手法の一つである、「パスネットワーク図」なる情報を入手し、さっそく、当Blogでも作図してみました。
分析対象は、FC東京戦の前半と、ジュビロ磐田戦の前半です。
双方ともに4-4-2のシステムでのセットアップであった点、ボールポゼション率がほぼ同じである点ということでピックアップしました。
ただし、後半は退場者がでて選手交代やシステム変更などで比較対象とするのが難しかったため、前半同士の比較とさせてもらいました。

※ 筆者、人事異動で超多忙なプロジェクトにアサインされ、決して暇を持て余している訳ではないことだけは記載しておきます(笑)

■ FC東京戦(前半)
パスネットワーク図を用いたFC東京戦とジュビロ磐田戦との比較


■ ジュビロ磐田戦(前半)
パスネットワーク図を用いたFC東京戦とジュビロ磐田戦との比較

■ パスネットワーク図から見えたもの
(1)FC東京戦
フォワードへ直接入るパスが少なく、フォワード間のパスも少なくなっています。フォワードに入る矢印の中では、大久保からトーレスへのパスの矢印が濃くなっています。前線がゲームメイクに寄与できず、最終ラインからのボールの前進が上手くできずに長いボールを使わざるを得なかった事が分かります。チョドンゴンがポストプレイで寄与していたかと思っていたのですが、ボールを受けた回数はトーレスとさほど変わりありません。チーム全体として、FC東京の守備に変化を加えるような動きがあまりできていなかったのかもしれません。

秀人は最終ライン近くにポジションを移してポゼションをとり、ボール回しの中心となっていましたが、なかなか前方向へのパスが出せていません。ボールの巡回で明確なルートが見えず、最終ライン間でのパス交換は出来ているものの、思うように前進が図れなかった事を示しています。

金崎と原のパス交換が多くなっています。チームとしては右サイドを使った攻撃が有効であったことを示します。しかしながら、金崎からフォワードや義希にボールが入っていないので、やはり金崎の単騎突破や金崎からの長いボールに頼っていたことが分かります。

三丸から松岡へのパスが入り、そこからトーレスへのパスへと繋がっています。松岡はボールの中継点としての役割があったのでしょうが、彼に入ってくるボールそのものも少なく、攻撃に対する寄与はあまりみられませんでした。(対峙するのが室屋、久保というのも厳しかったかもしれません)

(2)ジュビロ磐田戦
福田、藤田、三丸のボール回しが中心となっており、左サイドからの突破を図っていたことが分かります。

金崎は15回もパスを受ける事に成功しており、その多くが三丸、福田という比較的後ろにポジションを取った選手から直接ボールが入ってきています。サイドハーフから直接金崎にはボールが入っておりません。実際の試合でもそうだったのですが、松岡、原川が磐田のサイドハーフ(もしくはサイドバック)を引き連れていて、金崎が入り込むスペースづくりに寄与したことが分かります。

パスの循環としては、

① 藤田 ⇒ 福田 ⇒ 三丸 ⇒ 金崎 ⇒ 原川 ⇒(オーバーラップした)三丸

② 藤田 ⇒ 福田(義希) ⇒ 原川 ⇒(オーバーラップした)三丸

という形作りが出来ていたことが分かります。三丸は、この試合、前半だけで7本ものクロスを上げていますし、左サイドの崩しとしては、良い攻撃ができていたと思います。

藤田から右サイドに出ていくボールはありますが、右サイドから戻ってくるボールはほぼありません。左サイドを中心とした攻撃であったため、そこから右サイドに展開すると、磐田の守備ブロックで阻害されることなく(ボール保持のために左サイドに戻す事なく)前進できていたことが分かります。(本編でも、磐田フォワードのスライドとアダイウトンの守備について触れています)

右サイドは、原から松岡へのパスはありません。原と松岡の連携による右サイドの崩しはできていませんでした。実際の試合でもそうだったのですが、原がボール保持したタイミングで松岡が動き出して相手サイドバックを引き連れていき、原が余裕を持って前を向けたために早めに長いボールをゴール前に入れていました。右からは早めに入れろという監督の指示だったのかもしれません。

鳥栖が左サイドから攻めていたのは、左サイドでボールを奪われたとしても、アダイウトンから遠いサイドのために、カウンター攻撃を受ける可能性が低かったからこその選択であった可能性も伺えます。松岡のタスクとしては、攻撃に寄与するよりは、アダイウトンを自由にさせないためのキープレイヤーハンターであった可能性もあります。

(3)両試合の比較
相手チームの守備の強度は頭にいれておかなければならないので、一概には言えないのかもしれませんが、ジュビロ磐田戦の方が、攻撃に関する特徴がしっかりと出ていて、自分たちが思い描く攻撃がある程度実現できていたのかなと思いました。

金崎に関しては、あらゆるところに顔をだしてボールを引き出す動きを見せてくれるため、サイドハーフで動きを制限させるよりは、中央に配置して左右のどちらのスペースででもパスコースを作る役割を果たしてくれる方が、チームとして機能していました。

松岡はどちらの試合ともにボールタッチ回数が少なくなっています。味方のスペースを作るためのランニングや、相手ボール保持時・ネガトラ時のプレッシングのタスクが与えられているのではないかと思われます。ただ、ジュビロ戦では金崎から彼に多くのボールが入ってきていますし、良い位置に飛び込めば、周りが見える金崎からはボールがしっかりと出てきます。アシストやゴールに繋がるプレイもそろそろみられるかもしれません。

■ パスネットワーク図を作った感想
このパスネットワーク図はExcelを用いて作図しました。その上での感想です。

・ パスをカウントするのはそこまで苦じゃありませんでした。試合は何度も見直すので、その中でカウントしていくのは特に大変な作業ではありませんでした。ただ、解像度が悪いと、サガン鳥栖の選手は分かるのですが、相手チームは誰が触っているのかわからないので、相手チームの分析は困難だなと思いました。

・ 時間、選手交代(退場)、システム変更などの戦況の変化のどこのタイミングで集計を区切ったらよいのかが迷いました。最初は15分おきなどで集計していましたが、ある程度の時間を重ねないと傾向が分からなかったです。

・ 最初にテンプレートを作ることが苦労しました。グラデーションの色をどのようにしたら見やすくなるかというところに気を使いました。他の方の作図みたいに色で分けようとしましたが、どの色が回数が多いパスなのか覚えるのが大変だったので、私は同一系列の色(青色)で表現することにしました。

・ 他の方が作られる図は、パス出しの数量が多いと選手オブジェクトを大きくしたりされていましたが、セルの結合で大きさを変える事に限界があったので、枠線の色で表現するようにしました。それなりには見やすいかと(笑)

・ パス出し数、受け数をネットワーク図の中で記載した方が、どの選手がどういった活躍度合いなのかが参考になるかと思ったのでアレンジしてみました。

・ 矢印を書いていく中で、油断すると(コーヒー飲んだりすると)、ふと図に戻った時に、どこまで書いたのかあっというまに分からなくなるというリスクがあります(笑) カウント表をチェックシートとして用いながら作図しました。

・ データとして見ると、やはり頭の中でイメージしていたことと現実は異なるなということを感じました。インパクトのあるプレイが一回あると、そのプレイが頭の中によぎるので、再現性を認識するにあたっての阻害要因になっていることがわかりました。正確なデータと正確なデータ解釈はやはり大事です。

・ 思ったよりも大した手間ではないですし、今後も分析のひとつの情報源として、できればパスネットワーク図は作っていきたいかなと思いました。

・ Excel大好きなので、単純に楽しかったです(笑)


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Posted by オオタニ at 13:44 │Match Impression (2019)