サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

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Posted by さがファンブログ事務局 at

2017年09月28日

2017 第27節 : 浦和レッズ VS サガン鳥栖

マッシモ監督の就任が決定した当初、私が勝手に思い描いたのは、サガン鳥栖の伝統とも言うべきしっかり引いた形で守った上で、機を見て攻撃に転じるサッカーで、そしてその攻撃の主たるメソッドとしては、前線の高さを生かしたロングボールによる前進と、献身的な動き(豊富な運動量・ハードワーク)によるセカンドボールの奪取、サイドの選手のスピードを生かしたカウンター攻撃でした。イタリア出身の監督という先入観もあり、また、鳥栖の選手層を考えるとそのようなメソッドを具現化してくれるにふさわしい監督だと解釈していました。

ところが、ふたを開けてみると、新生サガン鳥栖が目指したサッカーは、攻撃ではボールを保持してショートパスを繋ぎながら、しっかりとしたビルドアップで相手の隙ができるのを狙うポゼション重視のサッカーであり、屈強なフォワードの高さ(ロングボール)に頼った偏重的なサッカーからの脱却を図る意図が見え、守備では前線からの連動性を重視して積極的に前からボールを奪いにいく、自分たちが主導権を握りながら試合を進めていこうとするアクションサッカーでした。

思い描いていたサッカーと異なることによって不安が募り、しかもなかなか結果に結びつかない状態で降格の心配をしなければならないような状態にも陥りましたが、昨年度の後半くらいから少しずつそのスタイルが浸透し、更に今年度はそのスタイルを実現してくれる力を持った選手たちが入団したり、既存の選手たちが大きく成長してくれたことによって、確実にスタイルチェンジを果たすことができました。現在も、結果としては順位が大きく跳ね上がっているわけではないですが、昨年度のようにスタイルそのものを否定するような意見はほとんど出なくなったように思えます。

そういう1年半を過ごしながら、今節の浦和戦を迎えるわけなのですが、ようやくなのか、ここにきてなのか、試合前に想像していた戦い方とは異なるメソッドでマッシモは挑んできました。相手ボールになっても必要以上に深追いせず、自陣でブロックを組んでスペースを可能な限り埋めた上で、そして必ず人も捕まえる動き。主体的にボールを奪いに行く形ではないのですが、相手にボールを保持されながらも可能な限り自由を制限し、そして最後の所では防ぎきるという戦術を実行し、マッシモ監督就任直後に思い描いていたサッカーが、今まさにここにきて実行されたわけなのです。

1年半の戦いの結果、チーム全体に守りに対する考え方のベースが出来上がっているからこそ成しえた戦術であるというのは前提として、攻撃面に関しては、イバルボの前線のボールキープによってこの戦術が機能したことは言うまでもありませんし、小野や原川と言ったパスセンスに優れた選手たちが長短のパスを使い分けることも、田川のようなスピードとパワーで相手ディフェンスの裏を執拗に狙う事も少ない人数で手早く攻めるためには必要な要素です。

特に、この試合の攻撃で一番良かったのは、イバルボが前線でキープして、義希がトップスピードで飛び出し、イバルボの丁寧なパスによって義希がダイレクトでシュートを放ったシーンです。しっかりとした守備でボールを奪い、そして少ない人数で瞬時にゴール前に迫ってシュートを放つというこの試合での狙いにぴったりと合致した完璧な攻撃でした。小野のシュートや原川のシュートがポストに当たるようなチャンスもありましたが、私はこの義希のショートこそこの試合で実現したかった攻撃の成就であると思いますし、それだけに、一番決めてほしかったシュートでした。ホント、このシーンは、イタリア代表かと思ってしまって、ついついツイートしてしまいました(笑)今節、(相手のミスはあったものの)見事なカウンター攻撃で2点を奪ったところは、今回の戦術による戦いとしては最大の成果でした。





守備に関しては、この試合でのコンセプトとしては、「誰が」「誰に対して」「どの位置で」マーキングするかというところの意識共有を行うこと。特にサイドでは極力フリーとなる浦和の選手を作らないというところでした。よって、セットアップのフォーメーションとしては、前半を「4-5-1」、後半を「5-4-1」としておきながらも、浦和の選手たちの攻撃に対する人数のかけ方や選手の配置に応じた柔軟な対応を行っており、ベースが4バックであっても相手の選手の位置によってはディフェンスラインに5人~6人並んでいましたし、後半のようにベースが5バックであっても、浦和の選手が引いて受けようとすると中盤にでも付いていって結果的に4バックに見えるようなシーンもありました。

この試合で特によかったのは、サイドの関係であり、サイドバック(小林、三丸)インサイドハーフ(福田、原川)、サイドハーフ(田川、小野)がそれぞれスペースと人のケアを補完し合う動きをしっかりと見せてくれたことです。浦和が駒井、高木を高い位置に置き、時折サイドバック(後半はストッパー)も攻撃に参画させていたので、彼らの動きにどう合わせるかというところの対処は神経を使ったでしょうが、彼らが引いたり絞ったりする動きに合わせたマーキング、マーキングで動いたスペースをカバーする動き、そこに入ってくる浦和の選手たちをケアする動き、どの動きも高い連動性を見せており、非常に守備意識が高く対応できていました。







中央の人数のかけ方も整備された動きであり、浦和が中央でボールを持っている時にはイバルボも含めた形で絞り込みを行い、なるべく縦に入れられないようにスペースを絞っていました。サイドバックが中央に絞り込んだ時には、福田、小野がアウトサイドでは下がるように指示されていた模様です。当然、その時のマークの付き方に応じて原川と田川もアウトサイドのケアを行っていました。




センターサークル付近でのボール保持者に対しては、センターバックに対してはイバルボ、ボランチに対しては義希、サイドではその時についている人間と言う形で棲み分けができており、浦和がゾーン2まで入り込んだ時には、イバルボまで下がって必要以上に前から奪いに行かないというルールの下ではっきりしている守備でしたので、誰かが前に行ったおかげでスペースを生んでしまうという、鳥栖の失点パターンのような綻びは生みませんでした。

それでも2失点してしまったのですが、1失点目は完全にトランジションの隙を突かれた形で、鳥栖の選手が上がっている状態でショートカウンターを受け、結果ペナルティエリア深くまで入り込まれたことによってコーナーキックを与えてしまったことが失点に繋がりました。

2失点目はこれまでの守備のルールから行くとサイドでのフリーの選手は作らないことになっていたのですが、選手交代によってそのルールを少し外してボールサイドに人数を寄せすぎてしまった所を突かれました。当然、1失点目にしても、2失点目にしても、クロスを跳ね返すことができれば良かったのですが、プレッシャーのない場面でのキックなので、良いボールが入ってきてしまいますね。



この1試合だけで、戦術方針の変更かというとそれは早計であり、戦術の幅が広がったという解釈の方が適切なのでしょう。当然、対戦相手(相手との力関係)や起用する選手によっても戦い方は変わりますので、もしかしたら次の鹿島戦では、これまでの戦い方に戻るかもしれません。
先制点を上げてから非常に良い形で試合を進めていただけに、是非とも無失点と勝ち点3を得たかった試合ですが、ひとまずこの試合は、サガン鳥栖の新たな可能性を見ることができたということを喜びたいと思います。

<画像引用元:DAZN>
  

Posted by オオタニ at 19:57Match Impression (2017)