サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2010年07月20日

徳島 VS 鳥栖 (テレビ観戦)

ちょっと思うことがありましたので、久しぶりにアップします。

昨日の鳥栖、徳島、双方の選手たちのプレーにおけるアイデア、イマジネーション、オーガナイズ、そしてコンセプト。たとえば、選手たちがあるプレーをするという決断をし、そのプレイが100%ミスがなく実行できたとすれば、勝ったのは間違いなく鳥栖だと思います。美しいサッカーに対する発想力、想像力、組織力、そしてチームとしての概念(最初から日本語で書けと(笑))は鳥栖が完全に上回っていたと思います。

しかしながら、残念ながら、鳥栖にはそれらの構想を具現化する実行能力がなかった。非常に大雑把なんですが、この試合においては、鳥栖が実行したいこと、実行しようとしたことが技術不足や体力不足でミスで終わってしまい、チーム全体として考えていることが実現できなかったことが敗因です。

では、逆に考えてみましょう。プレーに対する判断能力がどちらがよかったかと言えば徳島の方がよかったと思います。彼らは、愚直に勝つためのプレーを選択しました。成功率の高いプレーを選択し、極力無駄なミスを排除するプレイ。攻撃のためにリスクをかけたり、組織全体で連動して攻守を実行するシーンは鳥栖に比べると少ない状態でした。ですので、徳島の戦いっぷりが意外性にも創造性にもつながらず、見ていておもしろくないシーンもあったでしょう。しかしながら、勝ったのは徳島であり、そして、後半の主導権を握っていたのも実質徳島でした。

ハーフタイムからの徳島の修正っぷりは見事でした。鳥栖の体力がなくなってきたからというのもありますが、攻撃を分断するには何をしたらよいのか、少ない手数で守備の隙を突くには何をしたらよいのか、失点のリスクを防ぐために何をしたらいいのか、そこには、美しいサッカーをするという観点はなかったかもしれません。ただ、試合を勝っている状態のままクロージングするというミッションのためにひとりひとりが頑張っていました。

鳥栖は、後半は自信を持ってプレイできておりませんでした。トレーニングで培われたものを前半は前面に押し出していたと思いますが、「負けている」という状況に変化してから、突如として現実的な勝ち点を取りに行こうとする選択を考えた。そこが失敗の原因のひとつだとも考えられますし、それらのプレーに変化したにも関わらず勝ちきれなかったのは選手たちの対応力不足だとも考えられます。

言葉やデータとしては表しにくい”流れ”という観点で言うと、赤星がPKを止めた段階では鳥栖に流れが”ぐっ”と来てもよかったのではと思いました。しかしながら、チームとしての戦い方に不協和が発生していたために、同点に追いつくことがままならなかったというのが自分の中での評価です。

前半のようにコンセプトに基づいて戦いたかったメンバーもいれば、もっとロングボールを多用するなど、相手の陣形や状況に応じた戦い方をしたかったメンバーもいたような気がします。各々の考え方がバラバラでしたので、どっちつかずの攻撃に終始してしまいました。

さて、文章冒頭において「そのプレイが100%ミスがなく実行できたとすれば」という文言を記載しました。
これが何を意味しているかというと、プレイの質に直結するものだと考えます。攻撃でいうとゴールを奪うという目的、守備でいうとボールを奪うという目的、場面に応じて目的は異なるのですが、今回は攻撃に主眼を置いてみましょう。

攻撃に主眼を置いたときに、ゴールを奪うという目的を果たすために一番手っとり早いのはロングシュートを放つことです。
その次に考えられるのは、キーパーと1VS1の状況を作るパスを送り込むこと(ロングボール、スルーパス)
その次に考えられるのは、ドリブルでかわして数的有利を作ること
その次に考えられるのは、ゲームメークの選手にパスを送ること
その次に考えられるのは、サイドの選手にパスを送ること
その次に考えられるのは、バックパスを…

という形で、いろいろな選択肢があります。そして、これらの選択肢の中からプレーを選ぶ際の重要な要素のひとつとして、成功の確率というのがあげられます。

成功すればゴールへ近づくのは上記の例で行くと、上の方になればなるほどゴールへ直結します。ロングシュートが決まれば得点ですからね(笑)しかしながら、上の方へ行けば行くほど成功の確率というのは少なくなります。

要は、これらの成功の確率と成功した際のリターンの大きさが判断の基準(指標)であり、それらのプレイに対してミスが発生した際に受けるダメージが”リスク”として表現され、それらが調和した状態がプレイの質という形になるのです。

リスクは難しい要素でありまして、シュートを打った場合に、とんでもなくはずしてゴールラインを越えて行った場合にはリスクは低いのですが、シュートを打ってブロックされてそれが相手の足元に行った場合には大きなリスクになる可能性があります。リスクも一種の確率でありまして、リスクへの対応もダメージの度合いと確率に対する対応になります。(これらは、守備に対する観点ともなりえます。)

上記のプレーの確率とリターンとの兼ね合いというものに対して、鳥栖の選手たちはあまりにも稚拙すぎました。そこの判断力が徳島の方が上回っていたからこそ、徳島が勝ち点3を得ることができました。

分かりやすいシーンで言いますと、前半に衛藤がスローインからのボールをダイレクトボレーでシュートを打ちました。アイデア、イマジネーションとしては素晴らしいと思います。決まれば間違いなくJリーグアフターゲームショウの今週のベストゴールです(笑)しかしながら、決まる確率は、彼の技量、そしてゴールからの距離を考えてほぼ0%です。

同点に追いつかれたシーンでも、キムミヌが相手ゴール前で3~4人に対してドリブル突破をしかけました。成功の確率はかなり低いと思われます。そして、実はかなりリスクの高かったプレーでありまして、ボールを奪われてそのままカウンターで失点を喫してしまいました。平島のクロスボールは秀逸でしたね。

逆に、津田がPKを取ったシーンですが、ひとりでドリブル突破をするという選択肢は、成功すればかなりの大きなリターンがあります。実際にPKというリターンを得ることができました。では、あの場面で失敗したらどうなるかというと、フォローが誰もいない状態でありましたので、ボールを奪われたところで受けるダメージというのはほぼないに等しい状態です。攻撃は津田にまかせた状態で、徳島は強かに守備ラインを整えていたことでしょう。リスクはほとんどありません。

このように、鳥栖が選択するプレーは見ていて楽しかったものかもしれませんが、確率、リターン、リスク、これらの要素を組み合わせた状態で考えると、鳥栖の選手たちの判断はかならずしも勝利に直結するようなプレーばかりではなかったことがうかがえます。要するに、コンセプトやイマジネーションとしては高いレベルにありながら、局面におけるプレーの質が残念ながら低かったわけなのです。

成功確率が大きいリターンが少ないプレイと、成功確率が小さいがリターンが大きいプレイ、そしてそれらに対するリスクの予知。これらの選択肢を場面に応じて正しい判断の元に実行できる能力こそがワールドクラスの選手であり、ワールドカップで勝ちあがれるチームなのであります。

日本代表は、守備に着目して失点が少なくなることを重視したプレイを求めました。それが今回の結果を生んだとも言えますし、果てはパラグアイ戦のスコアレスドローが今回の集大成だったということはちょっとした皮肉でもあります。

では、話を戻しますが、現在の鳥栖と徳島のチームコンセプト(イマジネーション、アイデア、オーガナイズ)でJ1に昇格した場合はどうなるか。これこそが、J1とJ2を行き来するエレベータチームとなるか、それともJ1の座を守り続けることになるのかにかかってくると思います。このジレンマは、すべてのJ1昇格を狙うチームに言えることですよね。一体、どれだけのチームが昇格後のチーム構想を見据えてJ2を戦っているのか。

鳥栖が、この試合の前半のようなコンセプトにおいて昇格したならば楽しみですが、残念ながら、それでは勝ち点を奪えなかったというのも現実です。

筆者は、見ていて面白いサッカーと勝ち点が奪えるというサッカーは融合できると考えております。
そして、鳥栖の選手たちにプレーに対する判断能力がついたら、J2では至極のサッカーをすると思っております。


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Posted by オオタニ at 22:21 │Match Impression (2010)