サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2017年06月04日

2017 第13節 : サガン鳥栖 VS コンサドーレ札幌

『値段のないスタジアム』という企画で注目を集めた札幌戦。初めてスタジアムを訪れた方も多かったかと思いますが、互いにスペースをつぶしあって相手のミス待ちによってシュートチャンスを狙い、そして最後は猛攻を耐えて守りきるという、なかなかしぶめの展開となりましたので、この試合にどのくらいの面白さを感じ、どのくらい集金できたかはわかりませんが、この企画の要点は集金額ではなく、「また試合に来ようかな」と一人でも多くの人に思って頂けることですので、将来的な観客増につながることを期待しています。
さて、試合から1週間も経っているので簡単にこの試合のポイントを整理しました。

鳥栖も札幌も守り方は整理されているので、自分たちのストロングポイントだけを用いた攻め方だけではなかなか得点できず、
① 守備が整理されているからこそ相手の動きのパターンを読んで攻め側主導でスペースを作りだす
② 整理されている守備にミスやほころびが生じたときに、そこにチーム全体が気づいて一気にシュートまで持っていく

という、より多くの工夫が必要です。

まず①について。
私が思う、前半のキーポイントは福田でした。鳥栖のセンターバック2名に対して札幌の2トップがプレスに入ります。そこからサイドに流した時には札幌のハーフが寄せてくる。寄せられたときにそのままセンターバックに戻すと金園、戸倉の更なるプレスの餌食になるのでサイドバックからのつなぎが重要なのですが、そこを鳥栖のセンターハーフ3人がうまくポジショニングを取ってボールを受けていました。
ちょっと動きが変わったなと思ったのは、義希が中央で受けて相手のハーフをひきつけたスペースに福田がうまく中央に流れ込んでつないでいた場面があったのですが、15分頃だったか、ベンチのマッシモさんが直接福田を呼んで
「サイドに流れなさい」
という指示。
これにより、福田はサイドに幅をとる動きに変わります。右サイドは純然たる、小林が手前で福田が前という縦の関係が築かれます。
ただ、左サイドはその縦の関係が少し違っていて、原川がサイドに幅を取ることもあれば、吉田と原川が入れ替わって、吉田が幅を取ることもあり。
おそらく、ボールを持って縦に勝負するに当たっては、「吉田>原川」「福田>小林」という序列があるのでしょう。スピードを生かすならばこの並びにするのもうなずけます。

そして、マッシモさんが指示したこの福田に幅を取らせるという利点は、小林、義希に対して札幌のセントラルハーフをひきつけ、そこで福田を大外につけておくことによって、相手のウイングバック(菅)を引き出すこと。(左サイドでは、吉田が早川を引っ張り出すこと)これにより、札幌のセンターバックはサイドのスペースも気にしなければならないし、豊田の高さも気にしなければならないという、数多くの「タスク」を考えなければならなくなります。
鳥栖は、ロングボールで何回か豊田のシュートまでつながったシーンがありましたが、この双方のパターンを考えなければならないという状況が、長いボールに対する処理の一歩が出遅れ、うまく裏を取れたということにつながります。

鳥栖として、もう一つ惜しかったのは、せっかくウイングバックを引き出したのに、そのスペースを使うタイミングが前線の3人とあっていなかったこと。特に、チョドンゴンがサイドに流れて受ける動きをもっと多く見せてくれるとそこが起点になって、最後は豊田が中央でズドンという構図が作れたのですが、どうもチョドンゴンは中央で受けたいプレイヤーの模様。そういう意味では、すぐにサイドに流れるイバルボの方が、札幌戦でははまっていたかもしれません。

もしくは、カウンターの場面も含め、せっかくウイングバックの裏にスペースを作ってそこに鎌田やチョドンゴンなどが走りこんだときには、そこに鳥栖の選手が気づかずに(もしくはおとりとして利用して)、中央にドリブルで切り込んで玉砕するシーンとかもあり(特に福田が多かった)。サイドの深いところで鎌田にボールを預けたら、相手につかれてもクロスまで持って行けるスキルがあるので、考えすぎずに簡単に使っても良いのですけどね。

そして、得点シーンは②の動きでした。
フリーキックで長いボールをゴール前に送り込むと見せかけて、つなぎ始めることによって、札幌の陣形が大きく崩れます。長いボールに備えて、都倉や金園がゴール前にはっていたため、センターバックからのつなぎに対して札幌のハーフの選手が大きく前にひっぱりだされます。そこからはひとつひとつ持ち場がずれている札幌のスペースをしっかりつくだけでよく、原川⇒義希⇒吉田というパスの流れは非常に見事でした。鎌田のゴールが決まった時に、一番ゴールに近い位置を守っていたのが都倉というのがこのゴール(通常状態ではない札幌の陣形)を物語っています。

札幌とすれば、鳥栖が原川に対して繋いだときに大きくプレスで前進した選手がいたのですが、それが果たして必要だったのかというところが反省点でしょう。味方が連動して押し上げできていないときだったので、どこまで人を気にするかというのはありましたが、結果的に、原川に対するあのプレスによって義希のスペースをつくり、義希に対して横山がつかなければならなくなって横山が後手を踏んで前にプレスに入ったときに、吉田が侵入するスペースを作ることになってしまいました。

後半は、鳥栖が引き気味に構え、前半からよく動いていた鳥栖のセンターハーフの前への推進力が弱まった点、豊田が(気を利かせて)2列目や3列目に戻って守備をしたことによってセカンドボールを拾うエリアに人が少なくなってしまった点、札幌が都倉というストロングを生かすために長いボールが多くなってしまった点、などによって押し込まれてしまうような状態になっていたのですが、崩された形でのクロスを上げられることもなく、最後はフランコも投入してしっかりと中央を固めて勝利をもぎ取りました。

互いにつぶしあって、攻撃もうまくいきそうだけども最後の詰めが甘くてシュートまで行けないところも多くあり、最後は完全にリトリートしきってしまって猛攻を食らうという、ハラハラドキドキというか…なかなかストレスのたまる試合でした(笑)
勝ち点を重ねて混戦となっている上位を少しでも覗きこむか、それとも残留争いに引きづり込まれる序曲となってしまうかという試合でしたので、ホント勝ってよかったです。


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Posted by オオタニ at 11:02 │Match Impression (2017)