サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2017年06月22日

2017 第15節 : サガン鳥栖 VS ベガルタ仙台

DJ YUYAさんもスタジアムで相手チームを迎える拍手の際、仙台の事を「ライバル」と称していましたが、そのライバルとの戦いは、痛み分けという結果に終わり、ホームで連勝中というバックボーンもついに途切れる結果となってしまいました。

仙台は、今回も登録は4-4-2でしたが、大岩、平岡、増嶋が中央にポジショニングし、両サイドに永戸、蜂須賀、底を支えるのが三田、富田、前線に石原がいて、西村と奥埜が周りをフォローします。
言わずもがな、仙台のストロングポイントは蜂須賀と永戸なのですが、鳥栖が選ばなくてはならないのは、彼らにボールが渡る前につぶし切る対処か、彼らにボールが渡っても突破やクロスのところの最後の仕事をさせないか、いわゆる前から行くか後ろから行くかという選択であり、そこで鳥栖が選択したのは後者の方でした。

仙台のビルドアップは、3バックがボールを回して、直接サイドに展開するか、ボランチを経由するか。それに対して、鳥栖はツートップを彼ら3人に当てて、前線への縦パス(石原・西村へのダイレクトパス)だけは防ぐポジショニング。
鳥栖の中盤は、仙台がボールを保持しているサイドにいるハーフ(福田、原川)が、仙台のサイドの選手(蜂須賀、永戸)を「気にする」形であり、彼らの前方のスペースを消すように、半ば5バックのような形で対峙します。原川のサイドは永戸への対処に関して、時折小林と引継ぎしているような形は見受けられましたが、福田は吉田と完全に役割をすみわけて福田が優先的に蜂須賀を見るという形。

福田、原川がポジションを下げるため、中盤のフォローは鎌田が入り、鎌田、義希、そしてサイドハーフのどちらかが中央をスライドして相手のボランチと奥埜を見る形というのが基本路線でした。基本路線と言うのは、押し込まれているのを察知すると、豊田、富山も戻って中盤のスペースを埋めます。この守備意識の高さが、ポジティブトランジションでの攻撃転換への遅さに繋がるのですが。リスクマネジメントとは難しいものです。

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台
対する仙台の守備は、鳥栖のセンターバック2名に対しては石原が頑張る形。両サイドバックにボールが入った時に西村と奥埜が詰めてきます。鳥栖の逃げ道となるサイドハーフの選手には永戸と蜂須賀が対応し、義希と鎌田は両ボランチが見ています。

試合開始当初は、両チームともにセンターバックを比較的自由にしている状態であり、そうなると彼らが余裕を持って前を見れるので一発狙って蹴りたくなるというのが心情。事実、増嶋から石原に一発で通ってシュートまで持って行かれたシーンもありましたし、青木から富山を狙ってフィードもうまくハマったりしていました。とは言うものの、試合も落ち着いてくると、ロングボールへの対処も守備側のセンターバックがうまく反応したり、守備側のフォワードの選手もいい所に蹴らせないように詰めてきて、その精度も段々と落ちてくるようになります。そうるすと、両チームのセンターバックも攻め方を変えてくるわけでしで、後述しますが、おおざっぱに言うと、鳥栖は「もっといい形で蹴られるようにしよう」仙台は「蹴らなくても運ぶようにしよう」という感じです。

■ それぞれのソリューション

鳥栖の解決策は2つ。サイドハーフが開いて受けて永戸、蜂須賀を引き寄せて、センターバックの脇のスペースもしくは仙台のボランチをウイングバックの間のスペースを鎌田や富山が使う方法。もうひとつは、自分たちが絞ってセンターバックからボールを受け、その間に小林、吉田を前方に押し出し、そこに永戸、蜂須賀を引き寄せて、同じくサイドのスペースを作り出す方法。いずれにしても、サイドハーフの動きによって、永戸、蜂須賀を引き寄せてスペースを空ける動きを繰り返し、そしてその動きは比較的うまくいっており、一つの攻撃のポイントは作れていたのかなと言う所です。当然、詰まった時のロングボールは豊田個人の強さに任せるとしてましたが、豊田は比較的強さを発揮して競り勝つシーンが多かったので、いっそのこと、彼をめがけたボールをもっともっと使っても良かったかなというところでした。

気になるのは、原川と福田が前半だけで2回入れ替わったりしたのですが、その意図はちょっと不明。福田がロングボールをバンザイ(古い野球用語ですが)してしまって蜂須賀に裏を取られた直後だったりしたので、まさかそれが気に入らなかったことが原因ではないとは思いますが。その他に考えられるのは、思いのほか福田のサイドで裏を取れたりボールを持てたりしたので、その攻撃のタクトの役割を原川にさせたかったとか。

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台
仙台の解決策も2つ。富田を下げて平岡と2人で最終ラインにてパス交換する間に、大岩と増嶋を両サイドに押しやり、センターバックの2人がボールを持って鳥栖のサイドハーフが下がったスペースを利用する方法。もう一つは、前述のように、鳥栖がどちらかのハーフ(特に福田の方)が最終ラインに落ちるケースが多く、逆サイドにボールがあるときも蜂須賀、永戸を気にして中央に絞ってこないので、そのスペースを奥埜、三田が利用する方法。

仙台の方がスペースを利用してボールを運んでいるため、「誰かマークにつけよ」という野次を言った人がいたかいないかはわかりませんが、するすると出てくる相手を自由にさせていることに対して、あまりいい印象を持っていなかったかもしれません。逆にいうと、それを理解して福田も原川もポジションを決めているため、鳥栖としては「ここまではいいよ」というスペースを与えている状態です。彼らが落ちて対応するため、サイドにボールを渡されても、中央の青木、ミンヒョクが釣り出されて対応を強いられるというケースも少なく、クロスを上げられても鳥栖のセンターバック2人はしっかりと対応できていました。

流石に、原川と福田が抜かれてゴールライン近くからクロスを上げられた時にはひやりとしましたが、往々にしてそういう形を作られたときは鳥栖にミスが発生した時ですから、守りとしては準備した対応通りになったのではないかという感じです。

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

■ 2点目の壁

後半、幸先よく先制点が取れました。左サイドの蜂須賀の裏を使って鎌田が抜け出し、吉田がフォローして中央の原川へクロスからのミドルシュート。結局最後はクロスの質ですよね。崩しの場面までは作るけれども、クロスの質が悪くて得点にならないケースが続いていたなか、ボックス内に集中していた鎌田、富山、鎌田が仙台のマークを引き寄せ、原川がうまくフリーになっていました。

その後は、仙台がボールを保持して攻めて、鳥栖が奪った時にはカウンターを模索するという展開。その展開も徐々に仙台がディフェンスラインの選手を前に押し出してくることによって、鳥栖の受け身の様相が強くなってきます。これは、現在のサガン鳥栖のチーム全体の指向なのですが、スペースマネジメントをしようという意識が前線の選手から身についておりまして、それは豊田であってもイバルボであっても然りという状況。よって、中盤の選手が動かされることによってスペースが空いた時、もしくは相手選手が危険なスペースに入り込もうとした時に、前線の選手が献身的にスペースケアを行います。無論、この動きによって失点のリスクは低減されるわけなのですが、当然のことながら前線に選手がいなくなるということは、トランジションの場面でボールを預ける選手(裏へ抜ける選手)がいないということにもなります。2点目が奪えないというのは様々な要因が絡みあうのですが、守備への対応によってポジショニングが動かされるということで、自分たちが思い描くカウンターの形にはまっていないのでしょう。
もうひとつは、前線に選手が残っている場合でも、その動き方がボール保持者のサポートや引き出し役になっていないケースが多く、せっかくのカウンターの場面で、横パスを選択せざるを得ないというシーンが発生しています。

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

2017 第15節 : サガン鳥栖  VS  ベガルタ仙台

セットプレイによって同点に追い付かれた後は、その勢いのまま、仙台は両ウイングバックを前にあげて前線からボールを奪いに行く形。リャンヨンギ、中野が上手に右サイドでゲームを作り、いい形で崩せていました。前半は縦の動きしかなかったですが、中野、リャンが外から中央に入ったり、中央から外に出たりと、上手にスペースを使ってくるので、鳥栖はどのスペースをケアするのかというところで難しかったかなという所です。それにしても、後半終了間際の永戸のクロスから中央に入ってきたリャンのヘディングは決まったかと思いました。仙台としては一番決めたかった形ですしね。

鳥栖はイバルボも入りまして長いボールが多くなり、セカンドボールを拾った時がチャンスという形になりますが、最後の豊田が抜け出したシーンはホント惜しかったですね。ゴールキーパーを褒めるしかないのですが、豊田が左サイドに前進してしまったので、そちらには味方のフォローがなく、豊田が交わし切るしか選択肢がないという所でキーパーは迷いなく詰めることができました。

それぞれが、相手の動きをとらまえてストロングポイントを消すような形での試合だったのですが、どちらかというと鳥栖の方が仙台の両サイドを意識していたのかなという所です。それによって、仙台のウイングバックの動きに引っ張られるケースが多くなってしまいました。水野が入ってからは少し押し込み返すところもあったので、そのあたりの攻撃への転換というのは、ホームの試合だっただけにもう少し早く見たかったなと思います。

次節は浦和戦。ミシャ式攻撃への対応としては、今回の仙台戦のような形になるかと思うのですが、仙台よりも選手たちのスケールがまた一段とあがりますので、果たしてどのようにして勝ち点に結び付けるのか、楽しみな試合です。

<画像引用元:DAZN>



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Posted by オオタニ at 12:57 │Match Impression (2017)