サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2017年06月30日

2017 第16節 : サガン鳥栖 VS 浦和レッズ

鎌田のフランクフルト移籍が電撃的に決定し、前半戦のホーム最終戦が思いもよらぬ壮行試合となった浦和戦。選手、ベンチ、フロント、サポーターが一丸となって、鎌田を快く送り出すための準備としては最高となる試合を演じてくれました。今回は、簡単に振り返ります。

浦和は、いわゆるミシャシステム。基本陣形は3—6―1なのですが、セットアップでウイングバック、セカンドトップが鳥栖の最終ライン近くまで張りだします。更に、ダブルボランチのうちの一人が最終ラインに下がり、森脇と槇野は相手の陣形やボールの渡り方を見つつ、攻撃のフォローを行います。

鳥栖としては、最終ラインで相手が5枚いるのに対して、4バックしかいない状況をどう対処するかというところなのですが、仙台戦は最初からサイドハーフを最終ラインに引かせるという形を取りましたが、浦和戦ではその形をとらず、必要に応じて福田、義希が最終ラインのカバーをするという形を取りました。

仙台は、ビルドアップでは中盤にいるところから徐々に前に出てきて、最後は前線に人を寄せていく形ですが、浦和はセットアップが前線に5枚で、そこにボールが入らなければ(柏木との距離が空くと直接は入りずらい)セカンドトップ(武藤、興梠)が中盤のスペースに引いてビルドアップのフォローを行うので、必ずしも常に5枚が前線にいるわけではありません。

また、最初から引いてしまうと、それは槇野、森脇に対するアクションを取れる人間がいなくなるということで、引いてしまうと相手が容易に人数をかけてでてくる隙を作ってしまうところもあり、今回は、まずはセットアップの時点で前線と最終ラインの間を埋めさせないよう、前からプレスをかけていく策を取りました。

当然、毎回毎回プレスがはまるわけではないので、プレスが交わされたときには、相手が前に出てきて最終ラインの5名のフォローをしなければならないので、そこは義希、福田の出番です。彼らの中盤を埋める動き、最終ラインをフォローする動きは非常に神経を使ったと思います。それでいて、最後は貴重な2点目をたたき出した福田はMOMに相応しい、非常に素晴らしい動きでした。

とはいうものの、浦和の攻撃を完璧に抑え込んでいたかというとどうしても隙が生まれるシーンはありまして、福田と義希の2人がディフェンスラインに入るとセカンドボールを拾えず、押し込まれる時間帯を作っていました。また、彼らが最終ラインに入ってしまった時のトランジションの場面で、イーブンボールに負けてしまうと中盤に大きなスペースをあけてしまうシーンがありました。当然、槇野、森脇が攻撃に参画すると、サイドに目が移ってしまってチーム全体が寄ってしまうというところもありました。柏木や阿部の中盤での独走を生んでしまったのは、そのような状況からでした。

先制点は小野だったのですが、実は、試合中によくヘディングに競り勝ってるねと友人と話しておりまして、1分、8分など、ボールの落下地点、落下タイミングの予測が絶妙で、ジャンプの位置、タイミングが良ければ上背で負けてもヘディングに勝てるのだなということを再認識した次第であります。20分には、イバルボが入団してきて以来、最大のリーグ初ゴールのチャンスを生むこととなりましたが、これも小野が直前のヘディングの競り合いで勝ったことによって生まれています。先制点は、この試合で空中戦で優位になっていた調子の良さがそのままゴールと言う形で現れた部分です。

また、イバルボですが、ヨーロッパで(当然、マッシモさんの下で)サッカーをしてきたということもありまして、スペースに対するケアは体に刷り込まれている模様です。特に福田が最終ラインに下がったときに空いたスペースに対して、浦和の選手がボールを持ちだして使われると危険だと察知すると猛然とカバーリングに入っていました。リスク管理のメリハリが効いて非常の良いプレーでした。

原川の不慮の怪我で鎌田が下がり、前線に田川が入ります。鎌田と小野は攻守でポジショニングを調整していて、良いコンビネーションを見せていましたが、田川が入ることによって若干中盤が硬直してしまったのですが、後半に入ってくると田川の運動量が徐々に輝きを見せてきます。先制点もとって、しっかりと守備への道筋を立てたところに、田川が前線で追い回して相手の邪魔をするプレイはチームにとってかなりのサポートになりました。

当然、強力な浦和の攻撃をPKだけの1点に抑えたのは、最終ラインの4人の働きによるものが大きいのですが、前線、中盤も含めてチーム全体のハードワークの勝利でした。久しぶりの「鳥栖らしい」勝利に酔いしれた夜でした。


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Posted by オオタニ at 13:05 │Match Impression (2017)