2017年09月18日
2017 第26節 : サガン鳥栖 VS ヴァンフォーレ甲府
今季初の連敗から立て直すべくホームで甲府を迎えたサガン鳥栖。台風が接近している事もあり、やや観客が少ない中での試合となりましたが、出足の鈍かった観客数とは裏腹に熱い戦いとなり、残留に向けて必死に戦う甲府の守備を最後の最後でこじ開けて、今シーズンのリーグ戦で初めての逆転勝利を掴むことができました。
試合はサガン鳥栖のカウンターに対する対応のミスによって早い時間帯に甲府が先制することになり、図らずもお互いの戦いに対する姿勢が明確になりました。
甲府は5-3-2で最終ラインを固めながら基本的には自陣でブロックを構え、ボールを奪うとすぐに鳥栖の裏を狙う早い攻撃を仕掛ける戦術。ドゥドゥ、リンス、田中のスピードには鳥栖のディフェンス陣も苦労しており、チャンスと見るや一気呵成に出てくる甲府の攻撃陣は迫力がありました。一人少ない状況でもフォワード2人で崩し切る攻撃は非常に怖く、シュートがバーに当たるシーンや赤星のファインセーブによって防いだシュートなどもあり、鳥栖サポが冷や汗をかくようなシュートシーンを多く作っていました。
一方、鳥栖は、ブロックを構える甲府に対してじっくりとボールを回しながら綻びがおきるエリアを我慢強く探る展開となり、仙台戦に比べるとマッシモさんは攻撃に対する構築を行ってきたようでして、ある程度再現性のある攻撃を続けることができていました。時折、低い位置からのロングボールを豊田に当ててという攻撃も見せましたが、競り勝つ豊田に対するフォローも少なく、ロングボールは大きな成果を生み出すことはありませんでした。
今回は、鳥栖の攻撃戦術を振り返ります。
まずは前半ですが、左サイドは原川が引いた形でビルドアップに入り吉田を前方に押し出す形を作り、サイドでの数的優位を作った上で、吉田に突破させようとする流れが見えました。(前半20分頃以降はずっとこの形でした。)左サイドは小椋が原川の動きを制しており、原川がボールを持ってから運ぶスペースがなかったため、無理せずにボールキープを務めることになりました。左サイドをこじ開けるキーポイントとしては、あとひとり誰が絡むかというところですが、義希はアンカーの位置からの飛び出しは自重しており、河野は右サイドにも中央にも左サイドにも顔を出す頑張りで縦横無尽にランニングしてボールの引出を狙っていましたが、左サイドのメンバーにとっては縦に入れたいときに河野がいないという状況に陥ってしまい、なかなかいい形で崩すことができませんでした。
右サイドでの狙いとしては、福田をサイドに張らせて相手のウイングバックを引き出し、そのスペースをフォワードが狙うという形でした。前半は、右サイドでこの形を作る事はある程度成功していて、左サイドでキープしてから右サイドに展開しそこから縦パスという形作りを何回も見ることができました。小林の縦パスのタイミングや精度というのがこの攻撃パターンの大きなポイントとなっていまして、彼がサガン鳥栖の攻撃のタクトを握っていました。
ただし、前半は相手も体力があってスライドも早く、寄せも早かったので、非常に狭いエリアを狙うことになり、結果としては、縦パスがずれてしまったり、縦パス入るけど入ったところでうまくキープできなかったり、イバルボがハンドを取られてしまったりなどによって、クロスやシュートという成果にはなかなか繋がりませんでした。ただ、失敗してもこの攻撃を続けることに意義があったと思っていまして、この左右の展開により、甲府の中盤は相当のランニングを強いられていまして、特に田中は鳥栖が左サイドから右サイドに展開する際には、中央から小林の位置までスライドしなければならなくなり、後半は相当疲弊していました。これが、アディショナルタイムでのイバルボの縦への突破に田中がついていけなかったことに繋がったのではないかと。じっくりと我慢強くボールキープして攻撃をする事は、その瞬間でゴールにつながらなくても後から利いてくることがあります。
甲府も、じっくりと我慢して守備を行っていましたが、鳥栖のパスミスや展開ミスによって甲府が囲める状態になると、ボールを奪って素早く前線に送り、トップの個の力を前面に利用したカウンターを繰り広げていました。





ちなみに、これが私の前半のツイートです。(下が一番古い)。ちょっとだけやきもきしているのはたぶん気のせいです(笑)

後半に入ると、鳥栖の攻撃のパターンが変わります。右サイドはワイドに福田を構えさせるのは変わりませんが、小林の位置から縦パスを狙うのではなく、サイドの福田に預けてそこから縦に突破したり、中央にカットインしたりとドリブルによる打開を狙います。前半はどちらかというと福田はひきつける役割でしたが、後半は自分の動きによって、右サイドの攻撃を活性化するアクセントの役割を担いました。この福田の突破が甲府ベンチとしては嫌な動きに映ったのでしょう。福田に対処するため、同じウイングバックでもイエローをもらっていた橋爪ではなく、疲れの見えてきた阿部を替えることとなり、ピッチに残した橋爪が2枚目のイエローをもらうことになったのはこの試合の大きなターニングポイントでした。
左サイドは、後半開始当初から河野が左サイドで張るような場面が多くなり、吉田が引いて原川を前に押す出す形に変えてきます。アンヨンウに変えてからはより狙いが明確になり、前半に右サイドで見せたような攻撃を後半は左サイドで構築するようになり、左サイドにアンヨンウを張らせてそこにウイングバックをひきつけ、そのスペースを原川が狙うというシーンを繰り返すようになりました。後半のこのポジショニングの修正はかなり成果があり、原川、吉田、アンヨンウのトライアングルで深いところまで入り込んでからのクロスという形が徐々に多くなってきました。





一人退場した上に同点に追いつかれてしまった甲府としては、後半から押し込まれている左サイドをどうしても抑え込みたいところ。吉田監督の取った選択は、体力的にスライドが厳しくなった3ボランチの脇を利用され、更に退場によってフォワードのカバーリングも期待できず(人がいない)というところを防ぐために、最終ラインを4枚にして中央を4人に増やすというものでした。実際、中盤を4枚に増やされたことによって、原川がディフェンスライン近くまで上がっていく回数も減り(ビルドアップを手助けしないと前から奪われる危険が出てきた)押し込んでいた鳥栖の攻撃が少し停滞することとなりました。


甲府のシステム変更に対して鳥栖も攻撃の形を変えてきます。原川が中央でのつなぎ役(ボールが右サイドに行ったときは、中央にポジションを取って左サイドへつなぐ役割)となり、また、最終ラインが1枚減ったということで、甲府の豊田・イバルボに対する対処がそれぞれセンターバック1枚ずつになったことにより、イバルボが左サイドにポジショニングを固定して甲府のサイドバックとセンターバックの間のスペースに入り込んでボールの引出を狙います。この原川のポジションとイバルボのポジション変更により、吉田・アンヨンウからイバルボに対する縦パスが入るようになり、再び鳥栖が押し込む展開を作ることができました。




左右にボールを振りながら隙を見つけては縦パスを入れ、前線に起点を作りつつ、外に展開してからのクロスや中央への持ち出しなど、粘り強く形にこだわった攻撃を繰り返し、最終的には打ったシュートは19本を数えました。鳥栖の執拗な攻撃がボディブローのように効いて甲府の足を止め、最後はイバルボの縦への持ち出しを許してキムミンヒョクのゴールを生み出しました。センターバック2名のゴールでの勝利という非常に珍しい展開となりましたが、全員攻撃を繰り返した証ということでしょう。
さて、この試合で一番美しいなと思ったのは、この形です。吉田がアンヨンウにボールを渡したところ、サイドバックがアンヨンウのプレッシャーに入ります。吉田はパス&ゴーでそのスペースを狙い、甲府の中盤の選手を引き連れます。その引き連れたスペースに原川が入り、ボールを受けてから前を向いて走りこむ吉田への絶妙なスルーパス。3人の意思疎通によってなしえた素晴らしい攻撃でした。


この試合では、ボールを押し込める形、前線に起点を作る形を選手全体が理解し、しっかりと再現することができました。まずは、攻撃の形を作って相手エリアに押し込みシュートを打つということが大事であり、その機会を数多くつくることがゴールの確率を上げることになります。押し込む機会(シュートの機会)ができたからこそセットプレイを得ることができ、2つのゴールを決めることができました。前半・後半と試合全体を通じて、試合中の相手の対応に応じて鳥栖の選手を動かすことによって次の攻撃パターンを作ることができ、押し込む形を粘り強く作り続けた戦い方こそ、この試合の最大の成果だと考えます。
苦しい戦いながらもなんとか勝利を得ることができたサガン鳥栖。シーズン終了後の賞金にも関わってくるので、ひとつでも高い順位を目指して残りの試合も頑張ってほしいですね。
<画像引用元:DAZN>
試合はサガン鳥栖のカウンターに対する対応のミスによって早い時間帯に甲府が先制することになり、図らずもお互いの戦いに対する姿勢が明確になりました。
甲府は5-3-2で最終ラインを固めながら基本的には自陣でブロックを構え、ボールを奪うとすぐに鳥栖の裏を狙う早い攻撃を仕掛ける戦術。ドゥドゥ、リンス、田中のスピードには鳥栖のディフェンス陣も苦労しており、チャンスと見るや一気呵成に出てくる甲府の攻撃陣は迫力がありました。一人少ない状況でもフォワード2人で崩し切る攻撃は非常に怖く、シュートがバーに当たるシーンや赤星のファインセーブによって防いだシュートなどもあり、鳥栖サポが冷や汗をかくようなシュートシーンを多く作っていました。
一方、鳥栖は、ブロックを構える甲府に対してじっくりとボールを回しながら綻びがおきるエリアを我慢強く探る展開となり、仙台戦に比べるとマッシモさんは攻撃に対する構築を行ってきたようでして、ある程度再現性のある攻撃を続けることができていました。時折、低い位置からのロングボールを豊田に当ててという攻撃も見せましたが、競り勝つ豊田に対するフォローも少なく、ロングボールは大きな成果を生み出すことはありませんでした。
今回は、鳥栖の攻撃戦術を振り返ります。
まずは前半ですが、左サイドは原川が引いた形でビルドアップに入り吉田を前方に押し出す形を作り、サイドでの数的優位を作った上で、吉田に突破させようとする流れが見えました。(前半20分頃以降はずっとこの形でした。)左サイドは小椋が原川の動きを制しており、原川がボールを持ってから運ぶスペースがなかったため、無理せずにボールキープを務めることになりました。左サイドをこじ開けるキーポイントとしては、あとひとり誰が絡むかというところですが、義希はアンカーの位置からの飛び出しは自重しており、河野は右サイドにも中央にも左サイドにも顔を出す頑張りで縦横無尽にランニングしてボールの引出を狙っていましたが、左サイドのメンバーにとっては縦に入れたいときに河野がいないという状況に陥ってしまい、なかなかいい形で崩すことができませんでした。
右サイドでの狙いとしては、福田をサイドに張らせて相手のウイングバックを引き出し、そのスペースをフォワードが狙うという形でした。前半は、右サイドでこの形を作る事はある程度成功していて、左サイドでキープしてから右サイドに展開しそこから縦パスという形作りを何回も見ることができました。小林の縦パスのタイミングや精度というのがこの攻撃パターンの大きなポイントとなっていまして、彼がサガン鳥栖の攻撃のタクトを握っていました。
ただし、前半は相手も体力があってスライドも早く、寄せも早かったので、非常に狭いエリアを狙うことになり、結果としては、縦パスがずれてしまったり、縦パス入るけど入ったところでうまくキープできなかったり、イバルボがハンドを取られてしまったりなどによって、クロスやシュートという成果にはなかなか繋がりませんでした。ただ、失敗してもこの攻撃を続けることに意義があったと思っていまして、この左右の展開により、甲府の中盤は相当のランニングを強いられていまして、特に田中は鳥栖が左サイドから右サイドに展開する際には、中央から小林の位置までスライドしなければならなくなり、後半は相当疲弊していました。これが、アディショナルタイムでのイバルボの縦への突破に田中がついていけなかったことに繋がったのではないかと。じっくりと我慢強くボールキープして攻撃をする事は、その瞬間でゴールにつながらなくても後から利いてくることがあります。
甲府も、じっくりと我慢して守備を行っていましたが、鳥栖のパスミスや展開ミスによって甲府が囲める状態になると、ボールを奪って素早く前線に送り、トップの個の力を前面に利用したカウンターを繰り広げていました。





ちなみに、これが私の前半のツイートです。(下が一番古い)。ちょっとだけやきもきしているのはたぶん気のせいです(笑)

後半に入ると、鳥栖の攻撃のパターンが変わります。右サイドはワイドに福田を構えさせるのは変わりませんが、小林の位置から縦パスを狙うのではなく、サイドの福田に預けてそこから縦に突破したり、中央にカットインしたりとドリブルによる打開を狙います。前半はどちらかというと福田はひきつける役割でしたが、後半は自分の動きによって、右サイドの攻撃を活性化するアクセントの役割を担いました。この福田の突破が甲府ベンチとしては嫌な動きに映ったのでしょう。福田に対処するため、同じウイングバックでもイエローをもらっていた橋爪ではなく、疲れの見えてきた阿部を替えることとなり、ピッチに残した橋爪が2枚目のイエローをもらうことになったのはこの試合の大きなターニングポイントでした。
左サイドは、後半開始当初から河野が左サイドで張るような場面が多くなり、吉田が引いて原川を前に押す出す形に変えてきます。アンヨンウに変えてからはより狙いが明確になり、前半に右サイドで見せたような攻撃を後半は左サイドで構築するようになり、左サイドにアンヨンウを張らせてそこにウイングバックをひきつけ、そのスペースを原川が狙うというシーンを繰り返すようになりました。後半のこのポジショニングの修正はかなり成果があり、原川、吉田、アンヨンウのトライアングルで深いところまで入り込んでからのクロスという形が徐々に多くなってきました。





一人退場した上に同点に追いつかれてしまった甲府としては、後半から押し込まれている左サイドをどうしても抑え込みたいところ。吉田監督の取った選択は、体力的にスライドが厳しくなった3ボランチの脇を利用され、更に退場によってフォワードのカバーリングも期待できず(人がいない)というところを防ぐために、最終ラインを4枚にして中央を4人に増やすというものでした。実際、中盤を4枚に増やされたことによって、原川がディフェンスライン近くまで上がっていく回数も減り(ビルドアップを手助けしないと前から奪われる危険が出てきた)押し込んでいた鳥栖の攻撃が少し停滞することとなりました。


甲府のシステム変更に対して鳥栖も攻撃の形を変えてきます。原川が中央でのつなぎ役(ボールが右サイドに行ったときは、中央にポジションを取って左サイドへつなぐ役割)となり、また、最終ラインが1枚減ったということで、甲府の豊田・イバルボに対する対処がそれぞれセンターバック1枚ずつになったことにより、イバルボが左サイドにポジショニングを固定して甲府のサイドバックとセンターバックの間のスペースに入り込んでボールの引出を狙います。この原川のポジションとイバルボのポジション変更により、吉田・アンヨンウからイバルボに対する縦パスが入るようになり、再び鳥栖が押し込む展開を作ることができました。




左右にボールを振りながら隙を見つけては縦パスを入れ、前線に起点を作りつつ、外に展開してからのクロスや中央への持ち出しなど、粘り強く形にこだわった攻撃を繰り返し、最終的には打ったシュートは19本を数えました。鳥栖の執拗な攻撃がボディブローのように効いて甲府の足を止め、最後はイバルボの縦への持ち出しを許してキムミンヒョクのゴールを生み出しました。センターバック2名のゴールでの勝利という非常に珍しい展開となりましたが、全員攻撃を繰り返した証ということでしょう。
さて、この試合で一番美しいなと思ったのは、この形です。吉田がアンヨンウにボールを渡したところ、サイドバックがアンヨンウのプレッシャーに入ります。吉田はパス&ゴーでそのスペースを狙い、甲府の中盤の選手を引き連れます。その引き連れたスペースに原川が入り、ボールを受けてから前を向いて走りこむ吉田への絶妙なスルーパス。3人の意思疎通によってなしえた素晴らしい攻撃でした。


この試合では、ボールを押し込める形、前線に起点を作る形を選手全体が理解し、しっかりと再現することができました。まずは、攻撃の形を作って相手エリアに押し込みシュートを打つということが大事であり、その機会を数多くつくることがゴールの確率を上げることになります。押し込む機会(シュートの機会)ができたからこそセットプレイを得ることができ、2つのゴールを決めることができました。前半・後半と試合全体を通じて、試合中の相手の対応に応じて鳥栖の選手を動かすことによって次の攻撃パターンを作ることができ、押し込む形を粘り強く作り続けた戦い方こそ、この試合の最大の成果だと考えます。
苦しい戦いながらもなんとか勝利を得ることができたサガン鳥栖。シーズン終了後の賞金にも関わってくるので、ひとつでも高い順位を目指して残りの試合も頑張ってほしいですね。
<画像引用元:DAZN>
2017 第34節 : コンサドーレ札幌 VS サガン鳥栖
2017 第33節 : サガン鳥栖 VS ジュビロ磐田
2017 第31節 : アルビレックス新潟 VS サガン鳥栖
2017 第30節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2017 第29節 : サガン鳥栖 VS セレッソ大阪
2017 第28節 : サガン鳥栖 VS 鹿島アントラーズ
2017 第33節 : サガン鳥栖 VS ジュビロ磐田
2017 第31節 : アルビレックス新潟 VS サガン鳥栖
2017 第30節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2017 第29節 : サガン鳥栖 VS セレッソ大阪
2017 第28節 : サガン鳥栖 VS 鹿島アントラーズ
Posted by オオタニ at 09:40
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