2018年04月16日
2018 第7節 : サガン鳥栖 VS 柏レイソル
2018年第7節は、ホームで柏レイソルとの対決でしたが残念ながら敗戦。序盤と失点シーンをピックアップして振り返ります。
鳥栖のセットアップは4-3-2-1。セレッソ戦と同じくクリスマスツリー型ですが、後述のように相手のビルドアップの形に合わせて5-3-2や4-3-1-2のような形で対応します。
柏レイソルのスタメン登録上のポジションは4-3-3でしたが、守備ブロックはオーソドックスに4-4-2をベースとして構えていました。特筆すべきは、攻撃のビルドアップで、4バックのスタイルから大きく変形した形で鳥栖のブロックに挑んできました。面白かったのは両サイドバックのポジションの取り方で、右サイドバックの小池は左サイドハーフの亀川と対極となるような高い位置をとり、その高い位置に合わせて、両センターバックと左サイドバックとの3人で最終ライン(ビルドアップの起点)を形成します。
また、右サイドバックの小池の前進に伴って伊東が中央の高い位置にポジションを取り、中川は伊東よりもやや低い位置でセカンドトップのようなポジションを取りました。二人のタスクとしては、伊東は右サイドにボールが展開されたときに小池と縦の関係を築く動きで、サイドからのチャンスメイクのタスクが与えられていました。中川はセカンドボールの奪取、ビルドアップの受け処、ゴール前に侵入してからのフィニッシャーとしてのタスクを与えられていました。鳥栖の最終ラインの4人に対して柏は最大で5人をぶつけてくるという形になり、試合開始早々鳥栖は守備対応として選択を迫られることとなりました。
そして、試合開始序盤から、柏は小池と伊東の機動力を前面に押し出した攻撃を展開し、吉田の裏のスペースにボールを出す攻撃を繰り返し行いました。この攻撃に対する鳥栖の対応は、福田を最終ラインの位置に下げるという選択でした。この福田を下げるという答えによって、最終ラインのスペースを制限するというメリットを生みましたが、その反面アンカーの高橋秀の脇のスペースが空いてしまうというデメリットも生みました。柏の選手の素晴らしい所は、そのスペースをチーム全体が察知していち早く利用してきたところでありまして、脇のスペースを利用するのみならず、一度高い位置にポジションを取った小池が引いてボールを受けることによって福田を引き出してスペースを空けるという、小池についてくる福田の対応を逆手にとってビルドアップで利用したり、裏へのスペースを作り出したりという対処を行っていました。
また、鳥栖がブロックを組んでいてスペースがないとみると、ボールを下げて鳥栖の選手を前に誘き出したところで縦のパスを狙ったところも素晴らしかったです。その時は、小池はポジションを下げて福田を高い位置まで連れてくることによって柏が使えるスペースを作り出していました。鳥栖と柏のシステムがマッチしていないため、誰がどこで捕まえるのかがはっきりとしないままに高い位置からプレスに入ってしまうと、空いたスペースに入ってくる選手(中川)にボールを通される仕組みになってしまっていました。失点のシーンでも中川が起点だったのですが、セカンドトップの位置からボランチの位置まで下がってボール受ける事ができており、柏の攻撃の起点となっていました。
いずれにしても、最終的には、右サイドに深く侵入してディフェンスラインを押し下げた上でマイナスのボールからのクロスという展開を作り出しました。前半開始早々、かなりの本数のクロスを挙げられたのは、福田のポジショニングを柏が逆に有効活用してきたからという理由でした。
試合開始早々は、右サイドからの攻撃が目立ったのですが、鳥栖の守備陣がその攻撃にある程度慣れてきたところで、柏は目先を変えて左サイドからの攻撃をはじめます。左サイドは亀川が大きく幅を取るポジショニングをとっておりまして、小池と同じく隙あればサイドバックの裏を伺おうという動きを見せます。
ここで、鳥栖の守備に再度解決を迫られる出来事がありまして、左サイドから迫る小池対策は福田を下げるという形で解決を図りましたが、右サイドから迫る亀川対策はどのようにするのかという課題が残りました。その課題への解決策は………これが解決しなかったため、残念ながら失点してしまいました。
図で表しますが、今回の失点は、複雑な要素が絡み合っています。その要素を挙げると、
1.中山の攻撃参加に対して、鳥栖のセカンドトップが守備できていない
2.ボランチ(の位置にいる中川)へつけるパスに対して原川が対応している
3.鳥栖の中盤が右サイドにスライドできておらず、キムボギョンを捕まえきれていない。
4.小林が亀川にプレスに入ったスペースを埋めきれていない。
という、状況になっていました。今回の失点は、最終ラインだけの問題ではなく、チーム全体としての問題であることが分かります。下図でもありますように、中山に対して田川がしっかりとつけているときは、チームとしてのほころびを生むことはありませんでした。
さて、その中でも最後の局面をピックアップしますが、左サイドに幅をとる亀川に対して小林がプレスに入ります。素早く大きい展開であったので、原川が亀川にアクションを取ることが間に合わないためです。さて、小林が動くという事は、その位置がスペースとなって空いてしまうのですが、鳥栖としては
① (福田と同じく)原川がディフェンスラインに下がってスペースを埋める。
② 小林のスペースを埋めるために高橋祐がスライドする
と、いずれかの対応が必要となりますが、残念ながら鳥栖はそのスペースを埋める解決ができないまま利用されてしまいました。(前線の守備で問題が発生したことにより)小林が自分のゾーンを捨てて出ていかざるを得なかった事象に対して、鳥栖がチームとしての解決がなされていなかったために、キムボギョンがそのスペースに入り込んでシュートを打つシーンを作られてしまったというわけなのです。
ちなみに、上記の①にしても②にしても動いた選手のスペースは空いてしまうので、チーム全体で危険な位置にスペースを作らない連動した動きが必要となります。ボールの動き(人ではなくボール)に対してスペースをチーム全体でどのように埋めていくのかを決めて全体が連動して動けるというのが組織的な守備という事なのです。
2失点目は、わかりやすいミスだったのですが、セットプレイからのこぼれ球に対して、柏がディフェンスラインの裏にボールを通しますが、バイタルエリアに入ってくる柏の選手に対して、リトリートする鳥栖のインサイドハーフがいません。そのため、バイタルエリアに大きなスペースをぽっかり空けてしまうことによって、柏に利用されて失点してしまいました。
鳥栖がシステムを4-4-2に変えてからは、埋めるべきスペースがはっきりとわかるようになったため、鳥栖に安定をもたらせることができました。特に、福田が小池の動きによって左右されることなく、自らのエリアを守るという形にシフトしたため、柏のビルドアップに対して前から奪いやすい状況を作り出すことができました。
それだけに、2失点目がもったいないところではありましたが、2失点が最後まで響いて、残念ながら敗北という結果に終わりました。
昨年度からも同じようなミスは発生していたのですが、今年は特に鳥栖の選手たちがやるべきことをやれずに少しでも守備のほころびを見せた時には必ずチャンスに繋げられ、そしてゴールを与えているように見えます。
守備組織は、「決まり事(やるべきこと)をしっかりとやる」という当たり前の対応を取るだけで立て直せると思います。連戦で体力的にきついところもあるかもしれませんが、何とかまずは失点0を目指してやるべきことを完遂させてほしいですね。
鳥栖のセットアップは4-3-2-1。セレッソ戦と同じくクリスマスツリー型ですが、後述のように相手のビルドアップの形に合わせて5-3-2や4-3-1-2のような形で対応します。
柏レイソルのスタメン登録上のポジションは4-3-3でしたが、守備ブロックはオーソドックスに4-4-2をベースとして構えていました。特筆すべきは、攻撃のビルドアップで、4バックのスタイルから大きく変形した形で鳥栖のブロックに挑んできました。面白かったのは両サイドバックのポジションの取り方で、右サイドバックの小池は左サイドハーフの亀川と対極となるような高い位置をとり、その高い位置に合わせて、両センターバックと左サイドバックとの3人で最終ライン(ビルドアップの起点)を形成します。
また、右サイドバックの小池の前進に伴って伊東が中央の高い位置にポジションを取り、中川は伊東よりもやや低い位置でセカンドトップのようなポジションを取りました。二人のタスクとしては、伊東は右サイドにボールが展開されたときに小池と縦の関係を築く動きで、サイドからのチャンスメイクのタスクが与えられていました。中川はセカンドボールの奪取、ビルドアップの受け処、ゴール前に侵入してからのフィニッシャーとしてのタスクを与えられていました。鳥栖の最終ラインの4人に対して柏は最大で5人をぶつけてくるという形になり、試合開始早々鳥栖は守備対応として選択を迫られることとなりました。
そして、試合開始序盤から、柏は小池と伊東の機動力を前面に押し出した攻撃を展開し、吉田の裏のスペースにボールを出す攻撃を繰り返し行いました。この攻撃に対する鳥栖の対応は、福田を最終ラインの位置に下げるという選択でした。この福田を下げるという答えによって、最終ラインのスペースを制限するというメリットを生みましたが、その反面アンカーの高橋秀の脇のスペースが空いてしまうというデメリットも生みました。柏の選手の素晴らしい所は、そのスペースをチーム全体が察知していち早く利用してきたところでありまして、脇のスペースを利用するのみならず、一度高い位置にポジションを取った小池が引いてボールを受けることによって福田を引き出してスペースを空けるという、小池についてくる福田の対応を逆手にとってビルドアップで利用したり、裏へのスペースを作り出したりという対処を行っていました。
また、鳥栖がブロックを組んでいてスペースがないとみると、ボールを下げて鳥栖の選手を前に誘き出したところで縦のパスを狙ったところも素晴らしかったです。その時は、小池はポジションを下げて福田を高い位置まで連れてくることによって柏が使えるスペースを作り出していました。鳥栖と柏のシステムがマッチしていないため、誰がどこで捕まえるのかがはっきりとしないままに高い位置からプレスに入ってしまうと、空いたスペースに入ってくる選手(中川)にボールを通される仕組みになってしまっていました。失点のシーンでも中川が起点だったのですが、セカンドトップの位置からボランチの位置まで下がってボール受ける事ができており、柏の攻撃の起点となっていました。
いずれにしても、最終的には、右サイドに深く侵入してディフェンスラインを押し下げた上でマイナスのボールからのクロスという展開を作り出しました。前半開始早々、かなりの本数のクロスを挙げられたのは、福田のポジショニングを柏が逆に有効活用してきたからという理由でした。
試合開始早々は、右サイドからの攻撃が目立ったのですが、鳥栖の守備陣がその攻撃にある程度慣れてきたところで、柏は目先を変えて左サイドからの攻撃をはじめます。左サイドは亀川が大きく幅を取るポジショニングをとっておりまして、小池と同じく隙あればサイドバックの裏を伺おうという動きを見せます。
ここで、鳥栖の守備に再度解決を迫られる出来事がありまして、左サイドから迫る小池対策は福田を下げるという形で解決を図りましたが、右サイドから迫る亀川対策はどのようにするのかという課題が残りました。その課題への解決策は………これが解決しなかったため、残念ながら失点してしまいました。
図で表しますが、今回の失点は、複雑な要素が絡み合っています。その要素を挙げると、
1.中山の攻撃参加に対して、鳥栖のセカンドトップが守備できていない
2.ボランチ(の位置にいる中川)へつけるパスに対して原川が対応している
3.鳥栖の中盤が右サイドにスライドできておらず、キムボギョンを捕まえきれていない。
4.小林が亀川にプレスに入ったスペースを埋めきれていない。
という、状況になっていました。今回の失点は、最終ラインだけの問題ではなく、チーム全体としての問題であることが分かります。下図でもありますように、中山に対して田川がしっかりとつけているときは、チームとしてのほころびを生むことはありませんでした。
さて、その中でも最後の局面をピックアップしますが、左サイドに幅をとる亀川に対して小林がプレスに入ります。素早く大きい展開であったので、原川が亀川にアクションを取ることが間に合わないためです。さて、小林が動くという事は、その位置がスペースとなって空いてしまうのですが、鳥栖としては
① (福田と同じく)原川がディフェンスラインに下がってスペースを埋める。
② 小林のスペースを埋めるために高橋祐がスライドする
と、いずれかの対応が必要となりますが、残念ながら鳥栖はそのスペースを埋める解決ができないまま利用されてしまいました。(前線の守備で問題が発生したことにより)小林が自分のゾーンを捨てて出ていかざるを得なかった事象に対して、鳥栖がチームとしての解決がなされていなかったために、キムボギョンがそのスペースに入り込んでシュートを打つシーンを作られてしまったというわけなのです。
ちなみに、上記の①にしても②にしても動いた選手のスペースは空いてしまうので、チーム全体で危険な位置にスペースを作らない連動した動きが必要となります。ボールの動き(人ではなくボール)に対してスペースをチーム全体でどのように埋めていくのかを決めて全体が連動して動けるというのが組織的な守備という事なのです。
2失点目は、わかりやすいミスだったのですが、セットプレイからのこぼれ球に対して、柏がディフェンスラインの裏にボールを通しますが、バイタルエリアに入ってくる柏の選手に対して、リトリートする鳥栖のインサイドハーフがいません。そのため、バイタルエリアに大きなスペースをぽっかり空けてしまうことによって、柏に利用されて失点してしまいました。
鳥栖がシステムを4-4-2に変えてからは、埋めるべきスペースがはっきりとわかるようになったため、鳥栖に安定をもたらせることができました。特に、福田が小池の動きによって左右されることなく、自らのエリアを守るという形にシフトしたため、柏のビルドアップに対して前から奪いやすい状況を作り出すことができました。
それだけに、2失点目がもったいないところではありましたが、2失点が最後まで響いて、残念ながら敗北という結果に終わりました。
昨年度からも同じようなミスは発生していたのですが、今年は特に鳥栖の選手たちがやるべきことをやれずに少しでも守備のほころびを見せた時には必ずチャンスに繋げられ、そしてゴールを与えているように見えます。
守備組織は、「決まり事(やるべきこと)をしっかりとやる」という当たり前の対応を取るだけで立て直せると思います。連戦で体力的にきついところもあるかもしれませんが、何とかまずは失点0を目指してやるべきことを完遂させてほしいですね。
2018 第34節 : 鹿島アントラーズ VS サガン鳥栖
2018 第33節 : サガン鳥栖 VS 横浜F・マリノス
2018 第32節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2018 第31節 : サガン鳥栖 VS V・ファーレン長崎
2018 第30節 : ベガルタ仙台 VS サガン鳥栖
2018 第29節 : サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ
2018 第33節 : サガン鳥栖 VS 横浜F・マリノス
2018 第32節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2018 第31節 : サガン鳥栖 VS V・ファーレン長崎
2018 第30節 : ベガルタ仙台 VS サガン鳥栖
2018 第29節 : サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ
Posted by オオタニ at 18:15
│Match Impression (2018)