2018年04月20日
2018 第8節 : ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖
2018年第8節 ジュビロ磐田戦のレビューです。
マッシモ監督のこの試合にかける意気込みとしてはおそらく守備。ここのところ、先に失点して後から追いかけるという展開が続いていたため、まずは前半を無失点で終えて守備でリズムを作ってから後半に勝負をかけるという意図が見えました。
それはシステムにも現れていて、いつもの最終ラインを4枚で構えるスタイルではなく、ジュビロ磐田の3-4-2-1に合わせて同じ3-4-2-1でのセットアップとなりました。鳥栖が3-4-2-1で構えたのは、後ろの枚数(ゴール前の枚数)を増やしたかったというのもあるでしょうが、図のように4-3-1-2で守備をしようとした際には、相手ビルドアップの場面で磐田の3枚に対して2トップがプレスをするという数的不利に陥り、数的同数にするためにトップ下の選手を使おうとするとボランチの位置を空けてしまうというジレンマに陥ります。最初から相手ビルドアップ時の数的不利の解消を考えるよりは、ミラーゲームにしてプレスをしやすい状態を作ってしまおうという意図を感じました。
ちなみに、試合開始前のスタメン発表のタイミングで小林に代わって高橋祐がスタメンという情報が入った時はみなさん様々な想像をした事でしょう。ちなみに、筆者は、4バックスタイルを変えるとは思っておらず、高橋祐が右サイドバックに入ると想定しておりました。まだまだ甘かったです(笑)
マッシモ監督の思惑通り、試合はミラーゲームらしい非常に堅い試合となりました。堅い試合と言えば聞こえが良いのですが、互いに攻撃の糸口を早いプレスでつぶされて、狭い所を通そうとするパスがミスになるという状況で、なかなか攻撃の形ができずにシュートすら打てないというのは両サポーター共にもどかしかったでしょう。
このようなつぶし合いという展開を生んだのは、マッシモさんがセカンドトップに与えたタスクが要因でした。攻撃が得意な小野、河野に対して非常にシビアな要求だったのですが、かなり多くの守備に関するタスクを与えており、守備時のインサイドハーフ化、そしてサイドハーフ化を求めていました。
河野を例に出しますが、磐田に押し込まれた時は、3-4-2-1のウイングバックがリトリートして5-4-1(もしくは5-3-2)の形で守備ブロックを変形して構えており、その際にはバイタルスペースをケアするために河野がリトリートしていました。また、福田が比較的前に出てインターセプトに出てくるケースが多く、その福田が空けた位置のカバーリングにはセンターバックをスライドさせるのではなくて、河野がリトリートしてカバーリングしておりました。小野と河野はかなりの上下動が発生して大変だったでしょう。河野は55分で退きましたが、90分換算でいうと11.37kmのトラッキングです。実際は終盤になると目減りするとはいえ、チームの中でもより多くのランニングで前半の無失点に貢献しておりました。
これによって非常に守備は堅固になったのですが、セカンドトップ2名がカウンターに入るときの初動が遅れるために田川が孤立するケースが多く、裏へのギャンブルロングボールが多くなったり、田川に預けてのファール待ちという状況になったりと、攻撃の形が作りづらかったことは確かです。今の鳥栖の攻撃パターンとしては、1トップに対してボールを納めるタスク(ロングボールのさばき)が与えられているので、田川も役割を果たすのが非常に難しいところでしょうが頑張っていますよね。
それでも、前線に素早くボールを運ぶ展開の中で磐田のファールを誘うケースは多く発生し、ゴール近くでのフリーキックのチャンスを得ることはできていました。このような拮抗した試合では、一発のセットプレイで決まるというのはありがちの展開なのですが、残念ながらこの日は原川が絶不調。風の影響はあったかもしれませんが、蹴った瞬間にノーチャンスとなるようなボールの配球が多く、チャンスをゴールに繋げることはできませんでした。今年の原川はなかなか精度が上がってこないですね。特にコーナーキックは数多く蹴っているのですが、アウェー長崎戦のスンヒョンのゴール以降はゴールに繋がるような形を作れていません。キックの精度の問題なのか味方の動きの問題なのかと言う所はあるのですが、イバルボがいない中、セットプレイのチャンスは確実にシュートに繋げたいところではあります。
もうひとつ、攻撃の所でいうと、この試合も左サイドからの攻撃がポイントとなっていたのですが、吉田が高い位置を取って、吉田から縦へというところを多くチャレンジしていました。吉田がボールを受け、縦に小野が入って、そのリターンを原川が受けるというのは非常に良い流れなのですが、相手のウイングバックを引き付けたスペースに対して、田川が外に出ていくケースが多く見えました。確かにサイドのスペースで基点を作ることも大事なのですが、1トップでそれをしてしまうと、では誰がシュート打つの?という問題がやっぱり発生するわけでありまして、クロスを上げるにしても福田、河野では、磐田の3バックに対して質的に(高さ的に)劣勢に立たされてしまいます。
左サイドの組み立てにおいては、小野のみならず河野もサイドによせて、田川をゴール前に据えておいた方がチャンスはあったかなとは思います。田川ピン止めにしてセンターバックを集中させることによって、2列目からの飛び出しも有効性が増しますしね。前半29分のように右サイドで作って左サイドに大きく展開し、吉田に1対1をしかけさせるようなシーンの方がゴール前に人が残ってシュートチャンスにはなりやすかったです。
さて、互いにチャンスが作れない場面が続きましたが、後半になってから試合が動きます。鳥栖が高橋秀のポジショニングを少し前に動かし、チーム全体が前からボールを奪いに行くようになり、積極的にショートカウンターを狙うようにシフトしてきました。しかしながら、最初のビッグチャンスは磐田に訪れます。コーナーキックからのこぼれ球を繋いで、最後は山本がフリーでシュートを放ちました。非常に危なかったシーンだったのですが、少しずつ鳥栖の選手に疲れと攻撃に転じるが上でのリスクが顕在してきた時間帯でした。
それから程なくして、磐田が先制点を上げる事となります。失点は下の図で表した通りで、磐田のスローインに対して鳥栖がボールを奪いに行ったもののはがされてしまったことがきっかけで、カウンターというよりは擬似カウンターに近いような状態でした。それから右サイドの裏のスペースに展開されてからは、相手選手とボールの動きに選手がひっぱられてしまって後手後手となってしまい、結局は一番大事なゴール前をケアできずに松浦にフリーでシュートを打たれてしまいました。
悔やまれるとしたら、アンヨンウが交代直後で組織の中での守備に入っていけていなかった所ですね。試合途中での交替で攻撃を仕掛けようという場面だったので、河野とは異なり明確に守備の指示がなかったのかもしれません。ただ、この局面を考えるとカウンターでの守備でもあり、ミンヒョクが出てきているのを眼の前で見ているのですから、全速力でリトリートしてゴール前のスペースを埋めて欲しかったです。それは高橋秀にも言えると思っています。当然、画面には映っていませんが、高橋秀が戻ったら小野なり田川なり、近くにいる選手が今度はバイタルを埋めるために戻らなくてはなりません。ミンヒョクがゴール前から出ていく状況を作ってしまったのは仕方ないとして、では、それをチーム全体としてどうカバーするのかと言う所の解決ができずに、ハーフ陣が途中で歩を止めてしまったことでスペースも埋められず、ギレルメも捕まえきれずという状況になってしまったのは痛恨のミスでした。
当然、勝負をかけたいシーンでありますので交替自体は疑問をはさむ余地はないのですが、河野がバランスを取っていた守備ブロックが交代直後ということで崩れてしまったことは確かです。そのバランスの歪みを見逃さずにセンターバックの新里までもが攻撃に参加し、しっかりと得点として仕留めきった磐田は見事というしかありません。
この試合は守備で大きなミスもほとんどなくほぼ完ぺきなシナリオで進行していたのですが、サッカーとは残酷なもので、一瞬の隙を突かれて失点し、結果は負けとなってしまいました。でも、やはり、守備を軸に戦いを立て直すというのは個人的には賛成です。これから広島、川崎と強豪が続きますので是非とも無失点で試合を終え、最低でも勝ち点1を得てほしい所ですね。
<画像引用元:DAZN>
マッシモ監督のこの試合にかける意気込みとしてはおそらく守備。ここのところ、先に失点して後から追いかけるという展開が続いていたため、まずは前半を無失点で終えて守備でリズムを作ってから後半に勝負をかけるという意図が見えました。
それはシステムにも現れていて、いつもの最終ラインを4枚で構えるスタイルではなく、ジュビロ磐田の3-4-2-1に合わせて同じ3-4-2-1でのセットアップとなりました。鳥栖が3-4-2-1で構えたのは、後ろの枚数(ゴール前の枚数)を増やしたかったというのもあるでしょうが、図のように4-3-1-2で守備をしようとした際には、相手ビルドアップの場面で磐田の3枚に対して2トップがプレスをするという数的不利に陥り、数的同数にするためにトップ下の選手を使おうとするとボランチの位置を空けてしまうというジレンマに陥ります。最初から相手ビルドアップ時の数的不利の解消を考えるよりは、ミラーゲームにしてプレスをしやすい状態を作ってしまおうという意図を感じました。
ちなみに、試合開始前のスタメン発表のタイミングで小林に代わって高橋祐がスタメンという情報が入った時はみなさん様々な想像をした事でしょう。ちなみに、筆者は、4バックスタイルを変えるとは思っておらず、高橋祐が右サイドバックに入ると想定しておりました。まだまだ甘かったです(笑)
マッシモ監督の思惑通り、試合はミラーゲームらしい非常に堅い試合となりました。堅い試合と言えば聞こえが良いのですが、互いに攻撃の糸口を早いプレスでつぶされて、狭い所を通そうとするパスがミスになるという状況で、なかなか攻撃の形ができずにシュートすら打てないというのは両サポーター共にもどかしかったでしょう。
このようなつぶし合いという展開を生んだのは、マッシモさんがセカンドトップに与えたタスクが要因でした。攻撃が得意な小野、河野に対して非常にシビアな要求だったのですが、かなり多くの守備に関するタスクを与えており、守備時のインサイドハーフ化、そしてサイドハーフ化を求めていました。
河野を例に出しますが、磐田に押し込まれた時は、3-4-2-1のウイングバックがリトリートして5-4-1(もしくは5-3-2)の形で守備ブロックを変形して構えており、その際にはバイタルスペースをケアするために河野がリトリートしていました。また、福田が比較的前に出てインターセプトに出てくるケースが多く、その福田が空けた位置のカバーリングにはセンターバックをスライドさせるのではなくて、河野がリトリートしてカバーリングしておりました。小野と河野はかなりの上下動が発生して大変だったでしょう。河野は55分で退きましたが、90分換算でいうと11.37kmのトラッキングです。実際は終盤になると目減りするとはいえ、チームの中でもより多くのランニングで前半の無失点に貢献しておりました。
これによって非常に守備は堅固になったのですが、セカンドトップ2名がカウンターに入るときの初動が遅れるために田川が孤立するケースが多く、裏へのギャンブルロングボールが多くなったり、田川に預けてのファール待ちという状況になったりと、攻撃の形が作りづらかったことは確かです。今の鳥栖の攻撃パターンとしては、1トップに対してボールを納めるタスク(ロングボールのさばき)が与えられているので、田川も役割を果たすのが非常に難しいところでしょうが頑張っていますよね。
それでも、前線に素早くボールを運ぶ展開の中で磐田のファールを誘うケースは多く発生し、ゴール近くでのフリーキックのチャンスを得ることはできていました。このような拮抗した試合では、一発のセットプレイで決まるというのはありがちの展開なのですが、残念ながらこの日は原川が絶不調。風の影響はあったかもしれませんが、蹴った瞬間にノーチャンスとなるようなボールの配球が多く、チャンスをゴールに繋げることはできませんでした。今年の原川はなかなか精度が上がってこないですね。特にコーナーキックは数多く蹴っているのですが、アウェー長崎戦のスンヒョンのゴール以降はゴールに繋がるような形を作れていません。キックの精度の問題なのか味方の動きの問題なのかと言う所はあるのですが、イバルボがいない中、セットプレイのチャンスは確実にシュートに繋げたいところではあります。
もうひとつ、攻撃の所でいうと、この試合も左サイドからの攻撃がポイントとなっていたのですが、吉田が高い位置を取って、吉田から縦へというところを多くチャレンジしていました。吉田がボールを受け、縦に小野が入って、そのリターンを原川が受けるというのは非常に良い流れなのですが、相手のウイングバックを引き付けたスペースに対して、田川が外に出ていくケースが多く見えました。確かにサイドのスペースで基点を作ることも大事なのですが、1トップでそれをしてしまうと、では誰がシュート打つの?という問題がやっぱり発生するわけでありまして、クロスを上げるにしても福田、河野では、磐田の3バックに対して質的に(高さ的に)劣勢に立たされてしまいます。
左サイドの組み立てにおいては、小野のみならず河野もサイドによせて、田川をゴール前に据えておいた方がチャンスはあったかなとは思います。田川ピン止めにしてセンターバックを集中させることによって、2列目からの飛び出しも有効性が増しますしね。前半29分のように右サイドで作って左サイドに大きく展開し、吉田に1対1をしかけさせるようなシーンの方がゴール前に人が残ってシュートチャンスにはなりやすかったです。
さて、互いにチャンスが作れない場面が続きましたが、後半になってから試合が動きます。鳥栖が高橋秀のポジショニングを少し前に動かし、チーム全体が前からボールを奪いに行くようになり、積極的にショートカウンターを狙うようにシフトしてきました。しかしながら、最初のビッグチャンスは磐田に訪れます。コーナーキックからのこぼれ球を繋いで、最後は山本がフリーでシュートを放ちました。非常に危なかったシーンだったのですが、少しずつ鳥栖の選手に疲れと攻撃に転じるが上でのリスクが顕在してきた時間帯でした。
それから程なくして、磐田が先制点を上げる事となります。失点は下の図で表した通りで、磐田のスローインに対して鳥栖がボールを奪いに行ったもののはがされてしまったことがきっかけで、カウンターというよりは擬似カウンターに近いような状態でした。それから右サイドの裏のスペースに展開されてからは、相手選手とボールの動きに選手がひっぱられてしまって後手後手となってしまい、結局は一番大事なゴール前をケアできずに松浦にフリーでシュートを打たれてしまいました。
悔やまれるとしたら、アンヨンウが交代直後で組織の中での守備に入っていけていなかった所ですね。試合途中での交替で攻撃を仕掛けようという場面だったので、河野とは異なり明確に守備の指示がなかったのかもしれません。ただ、この局面を考えるとカウンターでの守備でもあり、ミンヒョクが出てきているのを眼の前で見ているのですから、全速力でリトリートしてゴール前のスペースを埋めて欲しかったです。それは高橋秀にも言えると思っています。当然、画面には映っていませんが、高橋秀が戻ったら小野なり田川なり、近くにいる選手が今度はバイタルを埋めるために戻らなくてはなりません。ミンヒョクがゴール前から出ていく状況を作ってしまったのは仕方ないとして、では、それをチーム全体としてどうカバーするのかと言う所の解決ができずに、ハーフ陣が途中で歩を止めてしまったことでスペースも埋められず、ギレルメも捕まえきれずという状況になってしまったのは痛恨のミスでした。
当然、勝負をかけたいシーンでありますので交替自体は疑問をはさむ余地はないのですが、河野がバランスを取っていた守備ブロックが交代直後ということで崩れてしまったことは確かです。そのバランスの歪みを見逃さずにセンターバックの新里までもが攻撃に参加し、しっかりと得点として仕留めきった磐田は見事というしかありません。
この試合は守備で大きなミスもほとんどなくほぼ完ぺきなシナリオで進行していたのですが、サッカーとは残酷なもので、一瞬の隙を突かれて失点し、結果は負けとなってしまいました。でも、やはり、守備を軸に戦いを立て直すというのは個人的には賛成です。これから広島、川崎と強豪が続きますので是非とも無失点で試合を終え、最低でも勝ち点1を得てほしい所ですね。
<画像引用元:DAZN>
2018 第34節 : 鹿島アントラーズ VS サガン鳥栖
2018 第33節 : サガン鳥栖 VS 横浜F・マリノス
2018 第32節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2018 第31節 : サガン鳥栖 VS V・ファーレン長崎
2018 第30節 : ベガルタ仙台 VS サガン鳥栖
2018 第29節 : サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ
2018 第33節 : サガン鳥栖 VS 横浜F・マリノス
2018 第32節 : ヴィッセル神戸 VS サガン鳥栖
2018 第31節 : サガン鳥栖 VS V・ファーレン長崎
2018 第30節 : ベガルタ仙台 VS サガン鳥栖
2018 第29節 : サガン鳥栖 VS 湘南ベルマーレ
Posted by オオタニ at 18:52
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