サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2016年08月24日

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

ファーストステージではホームで敗北を喫してしまった磐田との戦い。
リベンジを目論んだ1戦でしたが、終了間際の失点によって、惜しくも引き分けに終わってしまいました。

相手のミスに乗じて1点取ってからは、磐田に押し込まれている時間が長かったのですが、鎌田の前線からのプレスでパパのパスミスを誘ってからシュートを放った豊田の攻撃(58分頃)や、豊田の大井へのプレスから、高い位置を取っていたパパへの展開を早坂が奪った攻撃(66分頃)など、ここで決めきれれば勝ち点3が奪えたかもしれないという惜しい展開でした。

しかしながら、試合全体を通してみると磐田の攻撃に鳥栖が崩されるシーンも多く目立ち、追加点が奪えなかったことは悔やまれますが、アウェーであるということも考慮すると、引き分けで終えることができてよかったという見方もできます。

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特にセカンドステージに入ってからは、前線と中盤の連動および相手チームを圧倒する運動量で非常に堅固な守備組織を構築していた鳥栖ですが、この磐田戦では、被シュートも多くて危ないシーンも多く目立ちました。

鳥栖の守備は、前線の選手が相手のボールの配球先をコントロールし、配球された先に対して中盤の3人(ないしは4人)がプレッシャーを掛けて高い位置でボールを奪おうとする戦術です。
ところが、磐田戦では前線や中盤がプレッシャーをなかなかはめられず、次から次へと出てくる磐田の選手への対処に苦労していました。

要因として、ひとつは、磐田のボール回しのスピードが速く、サイドチェンジを含めた展開が非常にスピーディであったため、なかなかボールを奪いにいくポイントを絞り込むことができなかったこと、もうひとつは、ジェイ、アダイウトン、太田など選手たちの個人スキルが高く、本来は複数の選手で取り囲んでボールが奪える状況にありながら個人技で打開されてしまったり、ロングボールをキープされたりするので、少しずつ中盤が前に出られない状況となってしまったことが挙げられます。

特に後半の途中からは3-1-4-2と中盤から前線の選手の人数を増やしたため、素早いサイドチェンジ(特に左から右)によって中盤のスライドが追い付かずに、サイドバックと1VS1となってしまうシーンを簡単に作られてしまいました。

ゾーンディフェンスでは仕方のないことなのですが、ボールの位置によっては、相手へのアプローチまでにわずかな間ができる事がありますので、ダイレクトプレイやワンタッチプレイを多用されて素早く展開されると、選手間のスペースが空いてしまい、効率的にプレッシャーをかけられなくなります。

また、同様に、マークについている選手が相手の個人技で交わされてしまうと、相手にそのスペースを利用されるので、後からプレッシャーに入るメンバーは、相手の選択肢が多数ある中で対処しなければならなくなります。

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今回は、前半35分に、磐田の素晴らしい崩しのシーンがあったので、そこをピックアップしてみました。

カミンスキーのキックを宮崎がキープしますが、鎌田の圧力を受けて最終ラインまでボールを戻します。豊田は、ボールが最終ラインまで戻るのを察知して大井にプレッシャーをかけます。豊田のプレッシャーに合わせて、全体がプレスの体制に入ります。

大井は豊田の圧力をサイドに交わしてパパにパスを送ります。ここまでは鳥栖も想定通りだったと思うのですが、福田がパパに対してプレッシャーをかけて川田へのパスを狙って義希も前に来たところ、パパは福田を交わして一気に前線のジェイにパスを送ります。
ここがひとつのポイントでして、パパが福田をはがす動きを見せることによって、鳥栖の中盤のプレッシャーをかいくぐって風穴を開けることができ、前線のジェイにボールを送り込んで起点とすることに成功しました。

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

ここでも、ジェイが素晴らしいポストプレイを見せるのですが、鳥栖の1列目、2列目が前にプレッシャーをかけた事により、最終ラインとのギャップができるので、ジェイにボールが入っても、中盤の選手が挟み込むことができませんでした。よって、ジェイは谷口からのプレッシャーを背中に受けますが、上手くボールをキープして上がってきた川辺がトップスピードでボールを推進できる素晴らしいパスを送ることが可能となりました。

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

この一連の素早い展開によって、鳥栖の1列目、2列目のプレスをかいくぐって、最終ラインだけ攻略すればよい状況を作り上げることができました。(しかもその最終ラインには谷口はいません)

そして、川辺は、ドリブルで前進していきながら、今度はキムミンヒョクを誘き出し、ひきつけたところで右サイドの太田に展開します。この段階で、鳥栖のゴール前にはセンターバックが不在の状況ができあがってしまいました。

太田にボールが渡ってからダイレクトでゴール前へクロスをあげられたものの、最終的には、藤田のファインプレイによって失点せずに済みました。ただ、鳥栖の守備としては完全に崩されてしまった磐田の素晴らしい攻撃でした。

私的には、谷口とミンヒョクがプレスに入ってしまっているので、ここはミヌがセンターバックのエリアに戻ってカバーリングするべきだったと考えます。負けている場面でしたら、攻撃に備えるというのも一つの手ですが、勝っている状態でしたし、何よりもセンターバック2人がゴール前に不在というのは、局面的にはかなり「やばい」状態でしたので。

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

2016 2ND 9節: ジュビロ磐田 VS サガン鳥栖

この場面のように、鳥栖のプレッシャーの間を与える暇もないほどに、上下に、左右に素早いボールの展開を見せた磐田に対して、なかなか自分たちの思うような形でボールを奪う事ができなかった鳥栖でしたが、林を中心とした鳥栖の守備陣が、最後のシュート場面で集中した守備を見せていました。
特に、数多くのクロスを浴びていましたが、ポストに助けられたなどの場面はあったものの、磐田の強力な攻撃に対して、流れの中での失点を0に抑えたというのは、今後の自信につながったと思います。

<画像引用元:スカパーオンデマンド>


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Posted by オオタニ at 14:24 │Match Impression (2016)