サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2016年09月23日

2016 天皇杯 サガン鳥栖 VS セレッソ大阪

浦和、広島と優勝を争う強豪相手に連敗してしまったサガン鳥栖ですが、中4日で天皇杯の試合を迎えました。多少スタメンを変えてくるかとも思っていましたが、いつも通りの布陣でセレッソ大阪との戦いに挑みました。セレッソもJ1で戦う選手たちと遜色ないメンバーがスタメンに名を連ねていましたが、サガン鳥栖のトップリーグで戦っている経験が物を言い、サガン鳥栖が久しぶりの勝利を上げることができました。

■ スタメン

ツートップの豊田とムスは次節の大宮戦が出場停止であったため、スタメンで使ってくるだろうとは思っていましたが、中盤の鎌田、福田、義希、ミヌも同様に使ってきたのは、セレッソに対する警戒感あってのことでしょう。裏を返せば、彼らの替わりを安心して任せられる選手がいないということにもなりますが。その結果、サガン鳥栖はいつもの鎌田フォーメーションによる通常スタメンで臨むことになりました。

セレッソ大阪は、前の試合から酒本、玉田などを外して天皇杯に臨みました。リーグの方で熾烈な2位争いを行っていますので、少しターンオーバーしてきた感じです。攻撃時は、ワイドの2名のポジション取りが鳥栖に合わせて高かったり低かったりしたことがありましたが、おそらくセットアップとしては、3-4-2-1で、守備時にはワイドの2名が下がってくる形でした。前半は、セレッソとしては守備に比重を置いていた模様で、長いボールを使って前で上手くキープできたならば人数を厚くして攻めるという形でして、主導権を握ろうと前に出てくるというよりは、まずは失点を抑える事を優先し、後半で勝負するという姿勢が見えました。

■ 試合雑感

私は、J1とJ2の違いの中の一つの要素としては、スピードの差(強弱のつけ方)だと考えています。展開(動き)の速さ、判断の速さ、ボールの速さ、そしてそれらのスピードの緩急のつけ方がJ1よりも下のカテゴリの試合を見た時にいつも感じる事です。

サガン鳥栖は、中盤の3人がいつも通り非常に運動量が豊富でして、最終ラインに引いてボールを受けたかと思うと、裏へのスペースを狙って飛び出すなど、セレッソのマーキングミスを誘発するのに貢献していました。中盤の選手や鎌田がポジションを上下させて動いたところに、セレッソのマーカーの受け渡しが遅れており、その空いたスペースにムスと豊田が入り込んでボールを受け、そして中央で捌くという、鳥栖ではあまり見られないような攻撃が見られたのは、非常に楽しかったです。

本来ならば、山口蛍が危険を察知してボールの出所に対して早めにつぶす役目なのでしょうが、思いのほかそこが間に合ってなかったところを見ると、サガン鳥栖メンバーのプレースピードが彼の想像より上回っていたのでしょう。ボールタッチも含め、サガン鳥栖の方がスピード(スピードコントロール)に長けていたため、終始安定した試合運びができました。

鎌田が浦和戦、広島戦に比べると中盤の位置までポジションを下げて中盤のスペースを埋めるのに貢献し、前線の3人が前残りしてトランジションで守備が手薄になってしまうという状況に陥るのを防いでいたため、中盤の3人が安心して裏のスペースに飛び出せたというのも、思い切った攻撃に繋がりました。

また、ムスがこの試合ではよく攻撃の起点となっていましたし(特に、右サイドの裏へ流れる動きはよかった)、また、セレッソに押し込まれているときにボールを奪った時の預けどころとしても機能していました。そこは、個人の力がなせる利点でありまして、チームとして預けどころがあるというのは大きな武器になるのを改めて感じました。相手がJ2であったというのも差し引いても、裏へのパスやドリブルによるチャレンジはじわじわとセレッソのラインを下げるのに効果があったと感じます。

ただ、ボールを保持して中盤にいる時は上手に味方を使うようなパスも出せますし、スペースを狙ったサイドチェンジのボールを蹴れたりも出来るのですが、惜しむらくは、ゴール近くに入った時の選択ミスがあり、得点に絡めなかったことです。ドリブル突破のチャレンジ精神は買いますし、ゴールが欲しいという気持ちもわかりますが、チームとして俯瞰した形で見るともったいないなというシーンも多々ありました。

守備に関してよかったのは、ボールを奪われたり、ミスでロストした時に、すぐに次の準備をして、高い位置で取り返す動きを、チーム全体が意識できていた事です。前半は、セレッソがトランジション時の鳥栖の寄せのスピードについていけなかったところもありまして、鳥栖が高い位置でボールを奪ってからの攻撃を見せていましたが、それだけに、PKの1点だけで終わってしまったのは、いささかもったいないところではありました。

後半に入ると、当初の予定通りだったと思いますが、セレッソが攻撃に力のある杉本、ソウザ、酒本を投入してきます。ソウザは、前線で起点となって、セレッソの押し上げにかなり寄与しており、彼へのマークが集中するので、山口蛍が比較的ボールをさばきやすいポジションを取ることにも貢献しておりました。ただ、動きの中でリカルドサントスと重複するところがあったのは気になったところで、ボールをもらいたがる人間が多く、もっともっと裏へのスペースに飛び出すプレイヤーがいたら得点につながっていたのかもしれません。

また、目についたのは酒本の動きで、前半はなかなかサイドからのクロスが上がらなかったのですが、後半になると、山口蛍が左右に展開する攻撃ができるようになり、上手くサイドに抜け出した酒本がいい状態でボールを受ける形が前半よりもできておりました。

その酒本のクロスボール自体も脅威でありましたが、クロスのセカンドボールをセレッソが拾える回数が増えてきまして、リトリートしている鳥栖の動きを見逃さずに、ミドルレンジからのシュートを放つ回数がかなり増えました(杉本のポストに当たったシュートは完全にやられたと思いました。)

ただ、鳥栖もしっかりと「守るモード」にスイッチを切り替えておりまして、中盤、最終ラインがリトリートして、必死に跳ね返しておりました。抑え込まれる時間帯であっても、早坂、富山の守備への貢献に加えて、ミヌなどのカウンター時の飛び出しもセレッソの攻撃を一度リセットさせることができておりました。チーム全体が守るだけでなくカウンター攻撃と言う意識を忘れておらず、2点目は、義希がフォワードを追い越して起点となって、富山がフリーになる状態を作り出しました。

後半はやや苦労したものの、しっかりと勝利を手に入れたのは、連敗中のチームにまた自信を蘇らせることに繋がるでしょう。中盤の3人の疲労の蓄積が気になるところですが、シーズンも残りあとわずかであり、暑さも和らいでくることですし、何とか運動量を保ったまま、残りの試合を戦って欲しいと思います。


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Posted by オオタニ at 18:32 │Match Impression (2016)