サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2016年05月10日

2016 1ST 11節 サンフレッチェ広島 VS サガン鳥栖

大人数の観客を集めた湘南戦の惜敗を反省する暇もなく、広島に乗り込んでの試合だったのですが、期待と裏腹に惨敗と言ってもいいくらいの出来具合でした。

これまでは、試合内容は良くても勝ち点が取れなかったという試合もありましたが、今回は内容も結果も共に出来具合としては今シーズン最低レベル。

負けを悔いてばかりいても仕方ないので、今回の失点の問題点を認識し、課題を設定して同じ形での失点を繰り返さないことが大事です。

ということで、心に刻むべく、広島戦の1失点目と2失点目のシーンを振り返ります。

■ 3人寄れば文殊の知恵…とはいかず(1失点目)
いとも簡単に失点してしまったかのように見えますが、失点の原因は、ピーターウタカにボールが入った時に、3人の選手がついてしまって、そこで取りきれなかった(もしくはファールで止めることもできなかった)ことに尽きます。

菊地のプレイスタイルとして、アグレッシブに前にでてボールを奪いに行くことが多く、彼のパスカットから多くのチャンスを生み出しているのも確かなのですが、このスタイルは諸刃の剣でして、失点シーンのように、本来自分が守るべきスペースを空けてまで、2列目が守備するエリアまで進出してプレスをかけてしまうと、ゴール前のスペースを作ってしまうというリスクを生み出してしまいます。

百聞は一見に如かずということで、とりあえず画像を。

2016 1ST 11節 サンフレッチェ広島 VS サガン鳥栖

8人がラインを引いてゾーンを守っていると考えると、プレスバックも含めた3人が中央のエリアでプレスに動いた揚句にボールを取れないというのは、完全に死活問題です。

広島が上手くゴール前のスペースを使った結果失点という憂き目にあってしまいましたが、これは、菊地だけの問題でもなく、中央のエリアでボール保持者に3人寄せたのならば、ボールを奪いきるまで詰めきるか最悪ファールででも止めるという形にしないと、広島のような強いチームであれば、ゴール前のスペースを簡単に使われてしまいます。
それにしても塩谷のパスはお見事でした。あのようなディフェンス陣の間を切り裂くようなパスを岡本や義希に欲しいですね。

2016 1ST 11節 サンフレッチェ広島 VS サガン鳥栖

もうひとつのポイントは、菊地が前に出た時に、藤田が中央に寄せてスペースを埋めていれば防げた可能性はあったかなという感じです。ワイドに広島の選手は残っていますが、サイドバックとしては、外は捨ててしまってスライドして菊池が動いた中央のスペースに寄せるという選択肢は、十二分にあったかと思います。

もしかしたら、丹羽だったら菊地の動きのクセを理解していたでしょうから、菊地の動きに連動して中央に絞れていたかもしれません。(丹羽の件は勝手な想像ですが、組織の連動とは味方のプレイスタイル(クセ)を把握することも大事ということです。)

ここまで書いて思い出したのですが、そういえば、今年のナビスコカップの新潟戦でも同じシーンがありました。
三丸君が自分のスペースを空けてまで新潟の選手に食いついてしまい、空けてしまったスペースをレオシルバに使われて失点してしまうというシーンです。
自分の守るべきエリアを捨ててまで積極的に前に出てしまってボールが奪えなかった場合のリスク(および味方のフォロー)を想定しながらプレーしないと、チームとして同じような形での失点を繰り返してしまうのかなと思います。
こういうのをチームとして共有して、同じ失敗を繰り返さないで欲しいですね。

2016 1ST 11節 サンフレッチェ広島 VS サガン鳥栖

■ 失点のリスクは一瞬の隙に潜む(2失点目)
映像というのは残酷なもので、プレーしているときは、その一瞬、一瞬がすぐに過ぎていくのですが、映像というものに残すことによって、何度も何度も同じシーンを見返すことができるわけでして。

ミキッチのクロスの前の菊地の動きを見てみますと、林のパンチングの後に、ポジションを取り直そうとして、バックステップを踏みながら背後にいるウタカを確認しています。
これでは、ミキッチが蹴る瞬間に、菊地はボールの動きが見えていないですよね。
ミキッチは菊地がバックステップで空けたエリアに鋭いクロスを入れ、ウタカもクロスが上がる瞬間に前に飛び出し、ヘディングでゴールを決めました。
菊地がちょっと後ろを振り返った瞬間の出来事で、慌ててボールに合わせて前に出ようとするも気づいた時には手遅れの状態でした。

2016 1ST 11節 サンフレッチェ広島 VS サガン鳥栖

菊地以外の動きはというと、ミキッチのクロスに対して吉田の間合いが大きかったというのもありますが、それ以前の問題として、クロスが上がるシーンで、鳥栖の選手がゾーンを守るのか、人につくのか、その辺りが徹底されていないのを感じます。

クロスが上がる前に、義希とミンヒョクが受け渡しのような事をしていたので、もしかしたらクロスに対しては、マークで守るように指示がでていたかもしれませんが、その前の柏のクロスの時には、義希もディフェンスラインに入って、ゾーンを守っているようにも見えました。

失点というのは100%防げるわけではありません。スーパーなクロス、スーパーなシュートを打たれたら、それはどうしようも防げないこともあります。

ただし、失点を防ぐための準備をチームとして100%行う事は可能です。
鳥栖の場合は、その準備を果たして100%できているのでしょうか。
選手たちの動きを見ていると、「やることやったからしょうがない」と言えるような戦いではなく、「やれていない」という思いが画面越しでも鳥栖スタジアムでも伝わってきます。

■ リスクを恐れていてはゲインを得ることはできない

広島戦の攻めはそれに尽きるかと思います。

センターバックの横のスペースに岡田やペクが入り込み、そこにボールもうまく入って起点を作ったとしても、サイドへ追い返されて結果、バックパスでディフェンスラインまで戻ってしまうというシーンを何度見たでしょうか。

高い位置でボールを奪っても、クロスの精度を欠いてシュートすら打てないシーンも多くありました。

2列目、3列目も前線のいい動きに対して、ボールを失う怖さが先に立っているのか、思い切って縦に通すパスを出したり、裏を狙うパスを出すチャレンジすらできていません。

ただ、義希のプレースタイルとしては、むしろ彼がスペースに飛び出していってボールを受け、局地的な数的有利を作り出すタイプであり、彼がパサーの役割をしているところが適材適所ではないのではという同情の余地はあります。

しかしながら、アンカーとしての役割、ゲームメーカーとしての役割を与えられているので、その役割を果たすべく思い切ったプレイをしてほしいです。

ボールを失う事のリスクを恐れ、サイドバックやセンターバックとのパス交換だけ繰り返していたのでは、得点に繋がるようなスーパーなプレイを生み出すことはできません。

また、中央に3人ペクソンドン、キムミヌ、チェソングンと3人の韓国人選手を並べているのですが、彼ら3人が有機的に連動して崩すというシーンがありません。

彼らはどちらかというとパス交換(彼ら自身がパサーとして)で崩すタイプではなく、キムミヌもペクソンドンもボールを自分が持ちながら突破を試みるタイプですので、ボール保持者を生かすようにサポートとして動いて欲しいなというところもあり、彼らが勝負できるような形に周りがもっていかなければならないというところもあります。

何よりも、豊田、岡田の動きに合わせるパスをだせる鎌田が試合に出ていないのは一番の停滞要因でしょう。

鎌田もおらず、広島にサイドをふたされてしまってるならば、パターンを切り替えて徹底的に裏を狙ったり、長いボールを豊田に当て続け、ミヌとペクはセカンドボールを狙うという事も考えられます。選手たちの質や相手の状況に応じた攻めの工夫が欲しい所でした。

■ 狙ったところにボールを蹴ることができれば点はとれる
広島の守備も盤石ではあったのですが、リスク管理が完璧だったわけでも、すべての攻撃をパスカット、ドリブル阻止していたわけでもありません。
深い所にスペースを作ったり、キーパーからボールをもらったりと、鳥栖にもチャンスはできていたわけです。
ただ、最後のところは、狙ったところにボールを蹴れていないことよってチャンスを失うシーンを何度も見せられました。
広島戦に限らず、クロスが狙ったところに行ったら点数とれたのにというシーンを何度も見ています。
誰もいないところに蹴りだしたり、トラップが大きすぎたり、クロスが直接ゴールラインを割ったり、シュートが明後日の方向に行ったり。
それを解決するのが、組織の動き方の補正なのか、個人技術の練習なのか、メンタルコントロールなのか、いろいろと対処するべきことはあると思いますが、チームとしてひとつひとつ対応して行って欲しいです。

反省は反省で必要なのですが、気持ちを切り替えて、前を向いてファイトすることも大事です。
今週末のFC東京戦まで間がありませんが、気持ちをリフレッシュして試合に臨んで欲しいところです。

<画像引用元:スカパーオンデマンド>


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Posted by オオタニ at 08:42 │Match Impression (2016)