サガン鳥栖の観戦記。戦術を分析して分かりやすく説明できるように心がけています。

2009年05月27日

第1クール総括

今年のシーズンが始まったばかりだと思っていましたが、いつの間にか第1クールが終わってしまいました。第1クールが終わってしまったということは、今シーズンの1/3が終了してしまったという事になります。1/3が終わった状態で3位との勝ち点差が15に開いてしまいました。この15という勝ち点差を埋めるためには生半可な上昇気流では追いつかない事は明白ですが、はたしてどのような形でチームを立て直していくのでしょうか。

鳥栖の第1クールの戦いですが、ここまでのサガン鳥栖で一番分かった"のは"分からない"という点です。

これはどういうことかと言うと、ここ数年のサガン鳥栖には経営規模的な理由というのもありますが、エース候補になりそうな選手、ゲームメーカーになりそうな選手と言うのがチームに少なく、チームの柱が誰かというのが自ずと明確にならざるを得ませんでした。ところが、今年は技術的に優れている選手が、特に攻撃に特化した選手が多く入ってきておりますので、逆にチームの柱というのが明確になっていない気がします。

エース候補が多数いても、ドリブラー、パサー、ストライカー、カバーリングと、それぞれの役割が明確で適材適所であれば、スター揃いのチームでもうまく回るのでしょうが、いまのサガン鳥栖は、他人のために自分を犠牲にしてチームを支えるというプレイに徹している選手がどれだけいるかと言われると首をかしげたくなる気がします。山瀬や高地が前を向いてドリブルをするために、スペースを空ける動きを島田や池田がしているかと言われればそうでもないし、島田がいい形でクロスをあげるために、フォワードがクロスを呼び込む動きをして、他の選手が島田の為に囮となって他のディフェンスをひきつけているかと言われればそうでもないし。どちらかというと、みんながボールを欲しがって、みんなが試合を決めるプレイをしたくなっている状態ではないでしょうか。それぞれがいろいろ何でもできるので、逆に器用貧乏な状態になり、全体最適という点で考えると適材適所がなされていないかなと思います。

局面的には献身的な動きは顕在しているのでありまして、たとえば、義希が低い位置でボールを持って前を向いたときに、武岡がサイドからすっと中央に入って、ポスト的にパスコースを作ってボールを呼び込む動きをした際、相手のディフェンスを引き連れてきた事によって空いたサイドのスペースに柳沢(日高)が走り込むというシーンがありました。チーム全体が常にこのように全体のバランスを考えて動いていれば非常にいいチームになるのかもしれませんが、必ずしもそのようになっていないので停滞する場面がよく見られるということなんですよね。

島田や高地がボールを持ってうろうろしているときに、ミドルシュートが打てるようにワイドに開いてディフェンスを引きつける動きとか、島田や武岡がクロスを上げる時にニアとファーで相手のディフェンスを分散させるようなフォワード同士の動きとか、そういうのがなかなか目に見えてこないので選択肢の少ない攻撃になってしまっているように見えるのです。

いまのチームは、とにかくボールを失わずに保持していれば、攻撃力が高まるという観点でサッカーをしているような気がします。確かに、組織力や守備力が弱いチームであれば、そのようなほころびを見せてくれるのかもしれませんが、守備力の高いチームであったら、そんなにはほころびは見せてくれません。そして、綻びを見せてくれたとしても、躊躇したり判断ミスをしたりするとすぐに補正がかかって攻撃ができるチャンスを失ってしまいます。

さて、最初の方に書きましたが、今回の補強は攻撃に特化した補強が多く、守備面での強化というのがあまりなされていません。失点の数もさることながら、今年は非常にミスによるピンチを多く迎えておりまして、失点数の額面通りに受け止めきれない守備面での脆さが見受けられます。

想像するに難くはないのですが、いまのチームにキムユジンがひとり入るだけでどれだけチームに一本筋が通るでしょうか。少なくとも守備面におけるロングボールと1VS1の強さだけでもチーム全体が引き締まりますし、個々の能力の引出しという点においても、役割が分散されることによって、飯尾のカバーリング能力や危機察知能力がより一層生かされるのではないでしょうか。

ディフェンスラインの安心感というのは、チーム全体に多大な影響を及ぼすのでありまして、後ろが気になってしまうと攻撃にかける人数にも影響しますし、最終ラインに対するケアも必要になってきます。極端な例ですが、隆盛を極めていたオランダ代表やフランス代表は何がよかったかと言いますと、センターバックの二人が屈強であったことが一番の強さでありまして、センターバックの2人だけでも十二分に守りきることができるからこそ、攻撃サッカーというのがつら抜けていたのであります。

いまのサガン鳥栖のセンターバックを見返すと、守備面においても1VS1の弱さが顕著ですし、足元の技術ももろいために攻撃に繋がるボールの保持ができておりません。もちろん、守備は組織的に行わなければならないものですから、個々の能力を補いあいながら戦うに越した事はありませんが、相手がドリブルをしかけてきて1VS1の場面というのもありえるのです。その場面になってあっさりかわされたり、クロスボールの競り合いに負けてゴールを決められてしまうなど、組織の力では追いつけない脆さが発生してしまいます。

現在のサガン鳥栖は…

攻撃面においては、個々の選手の能力でなんとかまかなっている。しかしながら、組織として動けていないので、フリーでのシュートという場面を作れずに得点につながらない。

守備面においては、組織的な動きでなんとかまかなっている。しかしながら、個々の能力が弱いので最終局面ではミスが発生して失点につながってしまう。

といった感じでしょうか。

第二クールでは、ハーフナーが合流します。右サイドからは武岡、左サイドからは島田がただひたすらにハーフナーをめがけてクロスを上げるという攻撃でもいいと思うのです。(もちろん、ただ単に放り込むだけではなく、いい形までえぐることが大事ですよ)また、そうすることによって、チームの目標と言うのが定かになりますし、基本があって応用が始まることから、ハーフナーを囮にして池田、廣瀬、トジンがゴールを狙うという形が確立されるかもしれません。シュートを打つのがハーフナーだという事が明確になれば、彼の持ち味は高さですから、いいクロスを上げるという事が明確になりますし、周りの選手はハーフナーのためにディフェンスをおびき出すという事もできますし、サイドバックはクロスを上げる選手のためにオーバーラップしてマークを分散させるという事もできるかもしれません。今のサガン鳥栖の選手たちの技術力があれば、ひとつの軸を作ってあげる事によって、逆にいろいろと広がる可能性があるような気がします。

とにかく、第二クールではチームとしてのターゲットを明確に、そして個々のタスクのゴール(この場合のゴールは、個々の作業の完成基準を言います)を明確にしてほしいですね。最終形を想定して、そこに至るまでのビルドアップをもう一度整理してほしいですね。


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Posted by オオタニ at 18:46 │SAgAN Diary
この記事へのコメント
オオタニさんの分析は正に的確ですね。クロスの数がJ2で一番多いらしいですけど、それを活かせそうな電柱系FWのハーフナーがどれだけそのクロスをゴールに結びつけられるかなぁって感じですけど、第一クールにこれだけ離されれば、ま、冷静にみれば終戦ですね。

少しでも来年に繋がるような地盤ができたら良いけど…

それも監督が変わるんなら無理か…
Posted by ふなつ at 2009年05月27日 20:36
昨日練習見学に行ってきました。
マイク見てきましたよ。
今はただ第2クールからしっかり勝ち点を積み上げて欲しい。
目の前の試合に全力で勝つ!
そんな気持ちのこもった選手の姿を見たいですね。
Posted by kazutaka at 2009年05月28日 07:29
ふなつさん
分析が的確なのかどうかは分からないですが、見ている側の気持ちとしてのみんなの気持ちを代弁しているのかなとは思ってます(笑)

監督が変わるか、選手が変わるか、どこが一番いい道なのかはわかりませんが、何かを変えて、そして来年につながるような試合をせねばならぬですよね。ちょっと勝ち点が話されているので今シーズンは厳しいかもですからねぇ。

kazutakaさん
マイクは既に合流しているんですね!
次の試合で出てくるのでしょうかね~。
おっしゃる通り、とにかく目の前の1戦を大事にして一戦必勝の気持ちで戦ってほしいですよね!
Posted by オオタニオオタニ at 2009年05月28日 13:10